2015年11月19日

黄昏町(九板)三十一日目

懐かしい顔。 初日/一日目→http://togetter.com/li/883761 参考/十七日目→http://togetter.com/li/891544 前日/三十日目→http://togetter.com/li/899722 翌日/三十二日目→http://togetter.com/li/904401
@hiiragi_r_t_d

【三十一日目】 【魂8/力11/探索2】 【喪失】名前(後ろ半分)、感情「楽」 【異形】三ツ目(力+1、探索+2)、牙(力+2)、鱗(水耐性、力+1)、角(力+2)、竜尾(力+5) #hollytk

2015-11-18 21:27:00
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「あ」「あ」 わたしの目の前にいたのは、黒髪の少女。黒いタートルネックの上に右袖の破れた黒いブレザーを羽織り、膝で破れた黒いスラックスの下からはダチョウのような三本指の脚が伸びている。 「お久しぶりですね」「おお、久しぶりだな」 01 #hollytk

2015-11-18 21:29:32
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ここは以前にも訪れた廃工場。以前見つけた壁の隙間から中に入ったわたしを出迎えたのは、変わらない花畑と懐かしい顔だった。 「元気にしてたか?ちょっと雰囲気変わったな」「緋上も、少しはさまになってきましたね」「ハッ、偉そうに!」 02 #hollytk

2015-11-18 21:31:12
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わたしと彼女……緋上は花畑の中で軽くハイタッチを交わす。 緋上の右腕。以前会った時には鱗に覆われているだけだったそれは、丸太のように肥大化し、鱗も鋭く変化している。 「その腕は?」「ああ、病院でな」 緋上は腕を軽く振る。ごう、と風が巻き、花びらが舞い散る。 03 #hollytk

2015-11-18 21:33:11
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病院。鬼を殺したのだろう。少し、悔しい。 「テメエこそ、そのシッポはどうしたんだ?ていうか、名前教えろ名前」 「九板です。前に言いませんでしたっけ?」 「いや、聞いてねえぞ」 しまった。名乗っておけば、忘れた名前を教えてもらえたかもしれないのに。 04 #hollytk

2015-11-18 21:35:20
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わたしは尾を頭の横で揺らしながら、もう一つの質問に答える。 「この尾は学校で。多分、竜の尾です」 今度は緋上が、少しだけ悔しそうな顔をした。 「便利ですよ?」 わたしはこれ見よがしに尾を閃かせ、宙を舞う花弁を切り刻んで見せた。 緋上の額に青筋が浮かぶ。 05 #hollytk

2015-11-18 21:37:16
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「なあ、九板」 「ええ、緋上」 「手合わせしようぜ」「手合わせしましょうか」 数歩下がり距離を置く。竜尾の間合いだ。緋上が距離を詰める。 暗黙の了解は一つだけ。花畑を、血で汚さないこと。 「その腕を戦いに使うのは」「初めてだ。テメエもだろ?」「ええ、まあ」 06 #hollytk

2015-11-18 21:39:16
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尾が霞む。パシリ、と軽い音がして、緋上がわたしの尾、首を狙った一撃を払いのけた。 「なるほど、確かに速えな。けど狙いが分かれば軌道が見え見えだぜ?」 「ふむ……そうですか」 わたしは腕を組み、顎に手を当てて考え込む。尾に意識を集中させる。 07 #hollytk

2015-11-18 21:41:20
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「本体がガラ空きだぜっ」 三本の指が土を蹴り、緋上が間合いを詰める。 「お、っとと」 わたしは後ろに飛び退くが、緋上の足運びは予想以上に速い。 わたしは尾を木の枝に巻き付け、自らの体を持ち上げる。わたしのすぐ下で、巨大な拳が唸りを上げた。 08 #hollytk

2015-11-18 21:43:33
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空振りの勢いのまま二、三歩進んだ緋上は振り向き、枝に逆さに立つわたしを見て唖然とする。 「忍者かよ……あとパンツ見えてる」 「見ましたね?千円です」 「高え!持ってねえよ!」 わたしはひらりと枝から飛び降りる。巻きついていた尾が離れ、枝がゆらゆらと揺れた。 09 #hollytk

2015-11-18 21:45:57
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「高校生なのに、野口さんくらい持ってないんですか?」 「ここに来る時に失くしちまったみてえだ。つーか持ってたとして、なんでテメエの地味な下着にそれを払わなきゃいけねえんだよ!見ただけで!」 「えー、いいじゃないですか千円くらい。友達ですよね?わたし達」 10 #hollytk

2015-11-18 21:47:28
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「ったく、テメエなあ……まあいい、続けようぜ」 「ええ、そうですね。続けましょう」 わたしは尾をゆらゆらと揺らす。そして今度は、喉元に向けて突きを放った。空を裂く尾を、鬼の腕が辛くも掴み取る。尾の先端は、緋上の喉まで数センチの距離に迫っていた。 11 #hollytk

2015-11-18 21:49:07
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「あ……っぶねえ……テメエ殺す気か!」 「いやー危なかったですねー。わたしもまさかあんなに速いとは思いませんでした」 実のところ、最高速に達した尾の動きはわたし自身にも捉えきれていない。全力で打ったパンチを途中で引き戻せないのと似ている。 12 #hollytk

2015-11-18 21:51:40
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「でもこれで一つ勉強になりましたね。突きの方が速い」 「あのなあ……」 太い指で眉間を揉みながら呆れる緋上を見て、わたしは腹の底から何かが湧き上がるような感覚を覚えた。 「アッハ、ハハ」 「うわ、どうしたいきなり」 突然の声に、緋上が顔を引きつらせる。 13 #hollytk

2015-11-18 21:53:08
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「いえ……少しだけ、そういう気分だったのですが」 意識を向けた途端、それはするりと指先をくぐって消えてしまった。 「ふぅーん……さっきアタシ、テメエ雰囲気変わったって言ったよな?」 「ええ、言っていましたね」 焦げ、血に染まった服。パナマ帽に輝くブローチ。 14 #hollytk

2015-11-18 21:56:13
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「わたしはてっきり、服装の事だと思っていましたが」 「うん、アタシも最初は服のせいだと思ってた。でも違うんだ。アンタさあ」 緋上はわたしの目を見る。 「アンタ、目が笑ってねえんだよな。前に会った時は、もう少し笑うヤツだったと思うんだけどさ」 15 #hollytk

2015-11-18 21:58:59
@hiiragi_r_t_d

緋上に言われ、わたしはここ数日の記憶を省みる。 「はぁー……そういえば、笑った覚えがないですね」 「気付いてなかったのか……どうした?頭でも打ったか?」 「うーん……」 いや、まあ、頭を打つどころか、吹き飛ばされたり電撃を食らわされたりしましたけれど。 16 #hollytk

2015-11-18 22:00:32
@hiiragi_r_t_d

「そのせいではないような……?」 まあ、とりあえずは困ってないし。 「別にいいでしょう。分からないので後で考えます」 「すげえあっさり……結構重大な問題じゃねえか、これ……」 「そんな事より手合わせを続けましょう。それが今一番やるべき事だと思いませんか?」 17 #hollytk

2015-11-18 22:02:44
@hiiragi_r_t_d

それから、わたしと緋上は互いに疲れ切って倒れるまで手合わせを続けた。 軽口を叩き合い、一緒に体を動かす時間はとても良いものだった。と、思う。 笑うことは、なかったけれど。 18 #hollytk

2015-11-18 22:04:21
@hiiragi_r_t_d

──────── 【三十一日目】 【生存】 【魂+2】 【魂10/力11/探索2】 【喪失】名前(後ろ半分)、感情「楽」 【異形】三ツ目(力+1、探索+2)、牙(力+2)、鱗(水耐性、力+1)、角(力+2)、竜尾(力+5) 19 #hollytk

2015-11-18 22:05:11

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