一次防にみる「財政的規律」と政治

政治評論家見習い水島良宏氏がまとめた、一次防の作成過程
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笑っちゃうぜ!! @24mizushima

さて、今から12回(!)にわたって「岸内閣時の『国防の基本方針』と『一次防』」についてのツイートをします。まあ、大学のレポートのようなものですね。提出先がないので、ここに「提出」します。結構史学科的に真面目にやったつもりですが、各所に甘さがありますねえ。

2011-01-18 17:31:31
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(1)1957年(昭和32年)5月20日、岸信介内閣は「国防の基本方針」を閣議決定した。この「方針」は現在でも防衛白書に掲げられている。そして6月14日に「第1次防衛力整備3カ年計画」(一次防、1958年から60年まで)を決定した。直後岸首相は訪米し、安保改定を目指すこととなる。

2011-01-18 17:32:17
笑っちゃうぜ!! @24mizushima

(2)「国防の基本方針」「一次防」は、「安保改定=日米対等条約」をの締結のためアメリカ側が要求した「日本が自主防衛能力を持つこと」という条件を満たすことを証明するために作られた。一次防の内容は、3年間で陸18万人、海12万4000トン、空1300機。予算は合計4614億円である。

2011-01-18 17:32:55
笑っちゃうぜ!! @24mizushima

(3)「国防の基本方針」「一次防」は、岸信介の「逆コース」政策の一部として捉える向きもあるし、私もそう思っていた。しかし、この時期の日本は「高度経済成長期」を経験する前で、「一敗戦国」としての国家予算しか持ち合わせていなかった。「一次防」の財政的裏づけはどうなっていたのだろうか。

2011-01-18 17:33:49
笑っちゃうぜ!! @24mizushima

(4)駐留米軍が日本を占領するための費用は、日本が負担していた。それは1946年度予算では190億円を計上し、全予算の33.9%に達した。日本にとって、その費用を減らすためにもまず駐留米軍を撤退させる必要があった。そのために「駐留米軍の代替としての自主防衛軍」が必要だった。

2011-01-18 17:34:27
笑っちゃうぜ!! @24mizushima

(5)この「自主防衛軍」の「かたち」を巡って議論が行われる。その構図は、防衛庁の「制服組」と改進党(その中に旧軍人も含まれる)対大蔵省と自由党。防衛庁「背広組」はその板挟みに遭うが、防衛庁内局(背広組)の元内務官僚の海原治氏が、「制服組」を向こうに回して議論の主導権を握る。

2011-01-18 17:35:13
笑っちゃうぜ!! @24mizushima

(6)海原氏は、「制服組」が陸海空で分裂して統一した防衛計画案が作れないことを知った上で、「財政に配慮した」防衛庁内局案を作り、これが「一次防」のベースとなった。岸首相は就任直後、訪米直前のために、「国防の基本方針」「一次防」には「ほとんど関与しなかった」というのが通説である。

2011-01-18 17:35:49
笑っちゃうぜ!! @24mizushima

(7)「制服組」と改進党とが考えていたのは「海軍力の充実」。これは太平洋戦争の敗戦を教訓としたものであり、ただの「戦争ボケ」ではない。しかしいかんせん。海軍(と空軍)の充実には経費がかかる。海原氏(や大蔵省)の案は、比較的経費のかからない「陸軍力の充実」に主眼をおかれていた。

2011-01-18 17:36:53
笑っちゃうぜ!! @24mizushima

(8)また、「陸軍力の充実」は、「駐留米軍の代替としての自主防衛軍」として必要な要素であった。駐留米軍の費用を減らし、逆にアメリカから無償兵器援助を受けるために、「経費のかからない、駐留米軍の代わりに日本国土を守る陸軍」を中心とする日本防衛計画をアメリカに提示する必要があった。

2011-01-18 17:37:31
笑っちゃうぜ!! @24mizushima

(9)「一次防」は、日本の防衛に「財政的規律」をはめたものになった。以降、駐留米軍は順次撤退してその費用は減るが、防衛関係費が大幅に上昇することはなかった。そもそも「国防の基本方針」に「国力、国情に応じ自衛のため必要な限度において…」と、既に「財政的規律」がはめられていた。

2011-01-18 17:38:01
笑っちゃうぜ!! @24mizushima

(10)岸信介首相は、「安保改定に必要な条件の一つ」としてしか日本の防衛力強化を考慮しておらず、「日本再軍備」に情熱を燃やすタカ派政治家というイメージでは「なかった」。むしろこの頃から「予算の利権化」が進み、岸をはじめ自民党内では利権にならない「防衛」は関心が薄れつつあった。

2011-01-18 17:38:28
笑っちゃうぜ!! @24mizushima

(11)参考文献1 中島信吾『戦後日本の防衛政策―「吉田路線」をめぐる政治・外交・軍事』慶応義塾大学出版会、2006 佐藤明広『戦後日本の防衛と政治』吉川弘文館、2003 納富一郎他『戦後財政史』税務経理協会、1988 植村秀樹『自衛隊は誰のものか』講談社現代新書、2002

2011-01-18 17:38:58
笑っちゃうぜ!! @24mizushima

(12終)大嶽秀夫「鳩山・岸時代の防衛政策」(三宅正樹編集代表『昭和期の軍部と政治5 戦後日本と日本再軍備』、第一法規出版 1983所収) 北岡伸一『自民党』読売新聞社、1995 原彬久『岸信介』岩波新書、1995 Wikipedia http://bit.ly/i0yag8

2011-01-18 17:40:51