《友達の恋》つづき

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《友達の恋》side-A 155 めっちゃ最低やけど、それは自分でも重々承知やけど。 出した瞬間に後悔した。 何してんねん、俺。 それまで扇情的に思えた赤い下着は、急にビラビラした安っぽいもんに思えたし、甘く色っぽく聞こえた喘ぎ声はAVのそれと大差ないような気がしてきた。

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《友達の恋》side-A 156 勝手なもんで。 「もぉ...すっごい...」 下にいた女に首持ってかれて、キスされる。 百貨店の一階みたいな甘ったるい匂いが鼻をついて、咳き込みそうになんのをこらえた。 「声枯れちゃった...」

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《友達の恋》side-A 157 キスされながら、まだ酔いの残る頭を必死で回転させる。 なんでこんなんなったんやっけぇ...。 そうや。 確か今日は...あ、もう昨日か。 夏にオンエアされる特番の収録があって、かなり盛り上がってん。 自分で言うのもあれやけど。

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《友達の恋》side-A 158 で、打ち上げでも、スタッフさんみんな、レギュラー化しましょう！って言ってくれて、同い年のディレクターと固い握手をして...かなり、いい酒やった。 そんで...？ この子は...。 そう、何人かいたうちのパネラーのひとり。

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《友達の恋》side-A 159 最近よくバラエティ出てるアイドルの...。 思い出してきたぞ。 率直に、かなりできる子やってん。 バラエティ慣れしてない俳優さんの要領得ない話に的確に突っ込んで一笑い足してやったり、自虐ボケかましたり、ふったらちゃんと返してくれて。

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《友達の恋》side-A 160 当意即妙というか打てば響くというか、若いのにすごい子やなぁって感心したんや、確か。 打ち上げで隣んなって...。 なかなかかわいいし、話もおもろいし...。 身体は細いのに太ももだけむちむちしてんのがエロいなぁって。

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《友達の恋》side-A 161 で...？ 向こうもなんやさりげなくボディタッチしてきたりして、ちょっとええなぁって...。 んで、結果こうなってしまったということか...。 うわぁ...。

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《友達の恋》side-A 162 「もー、なに考えてるんですかぁ？」 眉間をくいってつっつかれた。 「...シャワー、借りてええか？」 「どぉぞー」 女をベッドに残して、バスルームのドアを開けた。 はぁ...。 なんやこの虚無感は。

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《友達の恋》side-A 163 家に着いたのはもう明け方やった。 あいつはまだ寝てんのか、寝室のドアはぴったり閉まってて、シンとしてる。 つま先立ちでそっと歩いて脱衣所行って、着てた服を全部洗濯機に入れて、もう一度シャワー浴びた。

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《友達の恋》side-A 164 シャンプーの匂いでバレるとか言うやん。 証拠隠滅。 ......最低やけど。 入念に鏡見て、いろんなとこに跡がないかチェックする。 いや、今回は完全なる俺のミス。 ちょっと...仕事がうまくいって、かなり浮かれてた。

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《友達の恋》side-A 165 深い意味なんてないし、ほんま事故みたいなもんやし、向こうもそれは一緒やと思うし。 墓場まで持ってこ...。 バレへんかったらなかったのと一緒...って言うやん。 シャワー出てからリビング行くと、魚の焼けるええ匂いがした。

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《友達の恋》side-A 166 「おかえり。打ち上げ？お疲れさま」 「おぉ...早いな、仕事？」 元々打ち上げとか打ち合わせとか、ラジオの後メシ行ったりとか、帰りが朝方になることなんて日常茶飯事やし。 「あれ、言わなかったっけ？今日からグアムー」

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《友達の恋》side-A 167 彼女は鼻歌交じりで言うと、グリルから焼いたシャケを取り出して、皿に乗せた。 そういや、売り出し中のアイドルグループのファースト写真集の撮影...って前に聞いたような気も...する。 「最近どこもお金ないからさー、久しぶり、海外」

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《友達の恋》side-A 168 すっかり旅行気分で納豆の蓋開けた。 「...珍しいな、和食」 「だって、しばらく食べらんないじゃん？」 こいつは謙遜してんのか、“ただの定食屋”って言うけど、同棲するとき挨拶しに行った実家は、浅草で三代続く、ちゃんとした老舗の洋食屋で。

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《友達の恋》side-A 169 そのせいか、下手に外食するより作ってもらった方がよっぽど美味いもん食える。 「あ...食べる？」 「や...ええわ、うん」 まあ、世話好き通り越しておせっかいなとこあるし、俺には躊躇も遠慮もなくポンポン物言うし、頑固なとこあるし...。

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《友達の恋》side-A 170 でもまあ、よー働いてよー食べてよー飲んでよー喋る、ええ女やねんなぁ...。 時代劇とかでようあるやん。 気立てが良くて働きもん。 「なあに、なんか変？」 気づけばじーっと凝視してたらしい。

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《友達の恋》side-A 171 「変なの。ね、後でお味噌汁だけでも飲みなよ」 あいつはもぐもぐしながらテキパキ食器重ねて立ち上がる。 しじみ汁だよ、肝臓にいいよー。 そんな、へんてこな歌詞の自作の歌を歌いながら皿洗って。

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《友達の恋》side-A 172 ............。 猛烈な自己嫌悪が襲ってくる。 俺ほんま何してんねん。

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《友達の恋》side-A 173 [先日はお疲れさまでした！ いっぱいお話できて嬉しかったです♡ 明後日も収録一緒ですよね？ またいろいろ相談乗ってくださーい♡］ 後日そんなメッセージが来たけど...。 これどーすんの、俺...。

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《友達の恋》side-A 174 ただの営業メールのような気もするし...。 めっちゃその気のような気もするぞ...。 いや、でも、これは逃げたらあかんよな。 自分のケツは自分でも拭かな。 なかったことに...はできんけど、水に流してもらうために。

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《友達の恋》side-A 175 ［明後日よろしくお願いします。 終わってから少し話できますか？］ できるだけビジネスライクな文章を心がけて、メッセージを送った。 仕事は仕事やし。 お互いに何もなかったかのように収録終えてから、ちゃんと謝った。

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《友達の恋》side-A 176 あの日のいろいろ。 完全に酒の勢いで、そう、なってしまったこと。 一緒に暮らしてる彼女がいること。 今後は共演者として、よろしくお願いします。 そんなようなことを、できるだけ丁重に、話した。

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《友達の恋》side-A 177 相手の子も「なんか逆にすいません」なんて、めっちゃ恐縮してて...少しホッとした。 やっぱり賢い子ぉやったんやな。 なんて、これまた最低なことを思って...。

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《友達の恋》side-A 178 一件落着。 そう思った。 今、この時の俺をぶん殴りたい。 お前どこまでアホやねんって。

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《友達の恋》side-B 125 グアムの撮影はスケジュールも余裕で、主役のアイドルちゃんたちもみんないい子で、他のスタッフさんもコーディネーターさんもいい人たちで、ほんと旅行のついでで仕事してるみたいな...。 こんなこと言ったらアレだけど、すごくリフレッシュして帰国した。