高岳は頸が廻らない

匠高岳 @takumikogaku

今日も休み、眠りのなかでノートに小説を書き付けている。噴出させたいものがあるのはわかるが、草稿bができるまで我慢してくれと思う。起きたら強烈な右肩痛、寝違えたらしい。以来、ずっと姿勢正して正座している。が、直らない。

匠高岳 @takumikogaku

首、右肩乃痛ミ激烈也。寝返リヲウツト脳天ニ響ク。ソノ度目覚メン。地獄ジャ、インフェルノジャ。

匠高岳 @takumikogaku

寝返りをうつ度に激痛で眼が覚めこの時間。うつらうつらの中で夢が展開され、寝室の壁面の向こう側では整形外科があり、稲穂二束と引き換えに診察してもらう。クビヘルニア、と、稲穂を生けつつイシは告げ、いつの間にか浸かっていた浴槽の中で地味な顔をした女の子にゴゴカラダッテサ、コワイネ、と。

匠高岳 @takumikogaku

【高丘は頸が廻らない①】眼が覚めても首と右肩の痛みはなくなっておらず、相変わらず浴槽に浸かったままの地味な顔の女の子がエイ総合病院に行くなら潜水服を着けないとというので、太古の巨大生物の骨を組み合わせて作ったようなごつい潜水服を不自由な体に纏うのだが、これが「黄色い潜水服」→

匠高岳 @takumikogaku

【高丘は頸が廻らない②】だったらこの話をサボタージュしてやるところだったと思う。道すがらに地下へと続く階段があって降りていくと、ある地点より入水していくことになる。その水溜まりがあまりに暗いので、エイ総合病院は如何と危ぶむものの、病院は近代的で明るく、職員も患者も潜水服→

匠高岳 @takumikogaku

【高丘は頸が廻らない③】なぞつけずに活発に泳いでいるか、漂っているか、砂地に張り付いているかしている。潜水服を着けずに大丈夫なのかしらんと思うものの、気がつけば僕自身の古典的な潜水服も地上から供給されるホースとは繋がっていない。なら不便と思うのは当然であるが、あいにく首も肩も→

匠高岳 @takumikogaku

【高丘は頸が廻らない④】動かないので脱ぐこと叶わず重たい体を引きずり引きずり諸手続きを済ます。診察を待つ間、頭上のモニターには「肛門のスペシャリスト、Dr.座伊東」と顔写真付きで表示されるので、僕の小説は肛門を酷使するから何かあったら座伊東先生だなとメモをする。→

匠高岳 @takumikogaku

【高丘は頸が廻らない⑤】診察を済ませ、レントゲン写真を撮影することになる。長い廊下を挟んで一方には撮影室が、一方には採尿室が無数に並んでいる。僕は名が呼ばれるまで撮影室側の長椅子に座っていたのだが、対面する採尿側の人々は、皆それぞれにひっそりと性器を露出させて尿を排出している。

匠高岳 @takumikogaku

【高丘は頸が廻らない⑥】レントゲン写真を撮影する前に、次のような文句の書かれた札を掲げるよう言われる。"Be conscious of violence under your words."これなにか意味あるのですかと尋ねるも、技師は骨を写すだけだから当然意味はないと言う。

匠高岳 @takumikogaku

【高丘は頸が廻らない⑦】反抗する意欲も沸かないのでそのまま撮影。再び診察室の前で長い待機となるわけだが、昨日眠っていないのでいつの間にか眠ってしまっており、夢の妻より着信があるのだが、院内なのでとるわけにもいかず、脳間通信に切り替える。「前に冬用スーツを新調した直後に→

匠高岳 @takumikogaku

【高丘は頸が廻らない⑧】精神的な危機に見舞われたわけだけど、今回はコートを新調した直後にこうなった。冬に仕事着を購入するのは鬼門だね」と伝える。やがて名が呼ばれ診察室へ、骨や関節には異常がないとのこと。「首や肩のギックリ腰といったところですか？」、「まあそうですね」

匠高岳 @takumikogaku

【高丘は頸が廻らない⑨】すべてを終えて、妻に迎えに来てもらう。「浴槽の子はどうなった？」、「ああ、あなたの性の目覚めと共に現れてその導き手となった、と、あなたがいつも酔った時に口にする子。今日は素面でそんなこと言って、やはり昨晩寝てないせいだね。まあ想像はどうあれ、

匠高岳 @takumikogaku

【高丘は頸が廻らない⑩】そんなものはいないよ」、「いなかったか」、「ロキソニン飲んで早く寝なさいな」。 こうしていくらかの痛みを引きずりつつ、それでも眠りについた僕は、その中でこの文章を書き付けているのです。