黄昏町(九板)三十六日目

作者が疲れているとこういうのになる。 初日/一日目→http://togetter.com/li/883761 前日/三十五日目→http://togetter.com/li/907288 翌日/三十七日目→http://togetter.com/li/909551
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@hiiragi_r_t_d

【三十六日目】 【魂9/力11/探索2】 【喪失】名前(後ろ半分)、感情「楽」 【異形】三ツ目(力+1、探索+2)、牙(力+2)、鱗(水耐性、力+1)、角(力+2)、竜尾(力+5) #hollytk

2015-12-04 23:25:16
@hiiragi_r_t_d

「……はぁー」 ツイてない事と言うのは続くもので、そういう時はじっとしていても動いていても災難に遭うものだ。少なくともわたしの十数年の経験上はそうだった。そしてそれは、この町においても不変のものらしい。 「……はぁー」 01 #hollytk

2015-12-04 23:26:44
@hiiragi_r_t_d

わたしが身をよじると、縄がギシギシと音を立てた。一昨日と同じ柱が、背中に冷たい。 「なんなんでしょうねぇ……」 本当にツイてない。縄が擦れて手首は真っ赤だし、正直ウンザリだ。 「早く、誰か来ないですかね」 さっさと脱出したいが、わたし一人では難しいだろう。 02 #hollytk

2015-12-04 23:28:17
@hiiragi_r_t_d

それからわたしは夕焼け空を見たり、ポケットの中のパナマ帽の感触を確かめたりしながら時間を潰していた。 しばらくすると広場には活気が溢れ、仕事を終えた人間達が集まってきた。 わたしの縛られているコンクリートの柱の下に木材が積まれ、灯油がかけられる。 03 #hollytk

2015-12-04 23:30:21
@hiiragi_r_t_d

なるほど、火炙り。 林間学校でよくやるキャンプファイヤーのごとく、井桁に組まれた木材を上から眺めるのはなかなかない体験かもしれない。これから燃やされることを考えると、一生体験したくなかった。 「速く歩け!」「嫌だよぉ。おいちゃん死にたくないもん」 04 #hollytk

2015-12-04 23:32:14
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男達に銃を突きつけられ、渋々歩いてきたのは、一昨日と同じ男だ。 「あれっ、嬢ちゃんも捕まっちゃったの?お互い、つくづくツイてないねぇ」 「ええ、まあ」 しかしここの連中は何も考えていないのだろうか?一昨日脱走した二人をまた一緒にしておくなんて。 05 #hollytk

2015-12-04 23:34:23
@hiiragi_r_t_d

「だからこそ、じゃないかねぇ。あいつらにもメンツってやつがあるのさぁ」 「考えを読まないでください」 「ひっ、ひっ、ひっ。おいちゃん、伊達に年食っちゃいねえよぉ」 にやにやと笑う男は、彼を柱に縛り付けていた男達が去っていくのを待ってわたしに目配せした。 06 #hollytk

2015-12-04 23:36:14
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「なあ嬢ちゃん、君がやるなら、手伝うよぉ」 「はぁー……」 警備の配置は一昨日とさして変わらない。やれるだろう。でもその前に。 「名前を聞かせてください」 「おいちゃん?おいちゃんはねぇ、笠見ってんだ。笠地蔵の笠に、遠見櫓の見ね。遠見櫓って分かるかなぁ」 07 #hollytk

2015-12-04 23:38:19
@hiiragi_r_t_d

「笠見さんですね。じゃあ行きましょう」 「気軽におじちゃんでいいんだけど……」 笠見さんがいつの間にか拘束を脱した右手の鉤爪で縄を切るのを横目に、わたしも尾を縄から引き抜く。尾が霞み、すべての縄が切断される。 二匹のバケモノは、人混みの中へ飛び込んだ。 08 #hollytk

2015-12-04 23:40:06
@hiiragi_r_t_d

「こっちに来るぞ!」「安全じゃなかったのかよ!」「殺される!」「聞いてないぞ!」「ここからじゃよく見えない!」 「ああもう、邪魔ですねっ!」 喧しい人混みを掻き分けて走る。わたしの姿を見た人間は逃げようとするが、後ろの人間が邪魔で下がる事ができない。 09 #hollytk

2015-12-04 23:42:07
@hiiragi_r_t_d

屋根の上で何かが夕陽を反射し、わたしは反射的に尾を振るった。上からわたしを狙っていた狙撃手の頭がスコープごと真っ二つになり、降り注ぐ血を浴びた人間が更に混乱を深める。 わたしは人混みに紛れ、わたしに気付いた人間が悲鳴を上げる前に額の眼で殺しながら前進する。 10 #hollytk

2015-12-04 23:44:26
@hiiragi_r_t_d

わたし達が火炙りにされ、疲れた人間達を楽しませるはずだった広場は阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。我先にと逃げ出す人間達が押し合い、あちこちからバケモノとは関係の無い悲鳴と怒声が聞こえる。 「はぁー……」 繰り広げられる醜態を前に、暗い感情が溢れる。 11 #hollytk

2015-12-04 23:46:28
@hiiragi_r_t_d

「少し、遊んで行きましょう」 わたしは尾を振るって離れた場所、広場の出口付近の人間を斬った。出ていこうとする人の流れが止まり、逆流して揉み合いになる。 「通せ!」「押すな!」「安全って聞いてたのに!」「警備の奴らは何やってんだ!銃は飾りかよ!」 12 #hollytk

2015-12-04 23:48:35
@hiiragi_r_t_d

建物の陰、壁にもたれながらわたしは呟く。 「……貴方達に当たるから、撃てないんですよ」 本当に、なんて愚かしい。 わたしは非常階段を上る。屋上に出ると、夕焼け空が出迎えてくれた。 頭を真っ二つにされた狙撃手の死体を踏みつけ、広場の混乱を見下ろす。 13 #hollytk

2015-12-04 23:50:08
@hiiragi_r_t_d

額の眼でバケモノを探すが、見つからない。笠見さんはもう逃げ出したようだ。 今広場にいるのは人間だけ。それでも怒声と悲鳴は消えない。 「同じですね」 外の人間と、何ら変わらない。他人を傷付けることに何の躊躇も持たない癖に、自分が少しでも傷付く事は許せない。 14 #hollytk

2015-12-04 23:52:35
@hiiragi_r_t_d

「貴方達がそんなだから兄さんは」 兄さんは■■だんだ。 「あれ……?」 思い出せない。気持ち悪い。理由が分からないまま、目の前の人間達への憎悪だけが募る。 「う……あ……あぁあああああぁあぁぁあぁぁああっ!」 わたしは吼えた。 15 #hollytk

2015-12-04 23:54:17
@hiiragi_r_t_d

広場が静まり返る。視線が集まる。無数の目が、わたしを見上げる。わたしの額の眼が、無数の目を捉える。 16 #hollytk

2015-12-04 23:56:31
@hiiragi_r_t_d

わたしは一人、広場の真ん中に立っていた。わたし以外に、生きている者はいない。 「ア、ッハ」 わたしは笑った。虚しかった。 「理由なく、殺しちゃいましたね」 食べる為でも、守る為でもなく。 「いいですよね。わたしは、バケモノなんですから」 18 #hollytk

2015-12-05 00:00:16
@hiiragi_r_t_d

わたしは一人、広場を後にした。誰も追ってはこなかった。 19 #hollytk

2015-12-05 00:02:45
@hiiragi_r_t_d

──────── 【三十六日目】 【生存】 【魂-1】 【魂8/力11/探索2】 【喪失】名前(後ろ半分)、感情「楽」 【異形】三ツ目(力+1、探索+2)、牙(力+2)、鱗(水耐性、力+1)、角(力+2)、竜尾(力+5) 20 #hollytk

2015-12-05 00:04:08
@hiiragi_r_t_d

[町]「君がやるなら、手伝うよ」君と同じく住人に引っ立てられた異形姿の男が、目配せをする。《男と協力し住人を戮すなら【魂-1】大人しく処刑されるなら焼死【魂-2/『火玉(火耐性、探索+1)』入手】》 #黄昏町の怪物 shindanmaker.com/541547 #hollytk

2015-12-05 00:04:39