『劇場霊』感想（ネタバレあり）

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『劇場霊』の物語。売れない女優だが演技志望の沙羅は、エリザベス・バートリを題材にした演劇のオーディションに募集し、同じ事務所のトップ・葵や、伸び悩む香織と共に合格する。しかし稽古が始まって間もなく、小道具担当の女性が死蝋化した死体で発見されるなど、怪異が続く。

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舞台稽古でも、自分の実力不足を沙羅にぶつける葵、そして主演女優に関係を要求する舞台監督の錦野等に悩まされる中、道具担当の青年・和泉と心を通わせて行く。そんな中、葵が意識不明の重体となる転落事故が発生するが、現場にいた沙羅は劇場の屋上に舞台で使う人形が立っていたのを目撃する。

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台詞を全て記憶していた沙羅は主役に抜擢されるが、錦野からの関係の要求を拒絶し、また人形の脅威を声高に主張し、降板させられる。新たな主役に志願したのは、親友と思っていた香織だった。失意の中、沙羅は和泉から人形にまつわる因縁と、その為に長野県諏訪で事件が二十年前に発生した事を知る。

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二人は人形師・児島のもとを訪れる。二十年前、児島には三人の娘がいたが、長女が山崩れで事故死。その無残な死体の代わりに小島は葬儀用の人形を作ったが、その人形は次女と三女を殺害。それを知った児島は人形を解体し焼こうとした直前に逮捕され、殺人罪で不起訴となったものの、長く隠遁していた。

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二人は慌てて劇場に駆け付けるが、人形が動き出し、扉が封鎖された劇場内に閉じ込められた舞台関係者と警察の人間達が次々と生気を吸われて殺害され、沙羅と和泉の二人に迫って来るのだった。

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監督は中田秀夫……という事で、前田敦子主演の『クロユリ団地』同様、秋元康製作。今回はヒロインがAKBに加えて、ヒーローの和泉がEXILEと、よりアイドル映画色が濃厚に。だから主要な所に大根な人が……というのは我慢。途中でチョイ役で出て来た柳ユーレイが巧いから目立っただけ。きっと。

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しかしちぐはぐな作品で、冒頭の児島家の惨劇シーン、あまりに舞台臭いので劇中劇だと思っていたら、それは本編。その後沙羅が河原の死体役で登場するシーンが劇中劇だったのだが、別の意味で衝撃だった。ミスリードでなく、何故あんなに本編から浮いたコントみたいな画面になったのか、理解に苦しむ。

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コントと言えば、クライマックス。人形自体は（元の女優の顔に合わせたせいか）ややバタ臭いながらも良くできている。でも歩いているシーンは、脚のアップとの切り分けも含めて、急に安っぽくなる。しかも殺害シーン、人形が被害者にキスをして光線移動で死蝋化……って、『スペースバンパイア』かよ！

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そういう訳で、肝心の人形の恐怖も『デビルズ・ゾーン』や『マジック』等の先達には遠く及ばず。前半の正統怪談的な抑えた雰囲気から一気に大殺戮になるのは、あの大失敗作『貞子3D』に匹敵するぶっ壊しぶりである。まあ、中田監督自身、ホラーはあまり撮りたくないとか言ってたような記憶が。

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おまけに地味だけど真面目で努力家で誠実と、あまりにステレオ臭いヒロインとか、香織が死に際に突然今までの全ての沙羅に対する心境を独白して死ぬとか、ドラマ部分でもやっつけ的な本編の展開が目立ち、人形譚という怖くなりそうな物語を全く怖くないモンスターホラーにしてしまったのは無残過ぎる。

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このままだと『女優霊』『リング』はフロックだったんじゃないの？と言われてもおかしくない状況に中田監督は差し掛かっていると思うのだが。色々と制約があるとは思うが、次回ホラーを撮るのなら、名誉挽回と汚名返上をした内容になる事を祈ってますわ。