◇ニンジャ二次創作◇【デッドブックス・イン・ザ・デッドライブラリ】◇初挑戦◇

初挑戦。オリニンしか出ないので注意な。
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@hiiragi_r_t_d

【ニンジャ】【17:30~】【 #hollytk 】【実況歓迎な】

2015-12-07 16:28:56
@hiiragi_r_t_d

【デッドブックス・イン・ザ・デッドライブラリ】 ◇ #hollytk

2015-12-07 17:30:12
@hiiragi_r_t_d

ネオサイタマの外れ。古びたアパートメントが立ち並び、亀裂の入ったハイウェイが走る一角に、灰色の建物がある。 鉄筋コンクリートの四階建てを耐酸性雨タイルで覆ったその建物に、訪れるものはない。 01 #hollytk

2015-12-07 17:32:22
@hiiragi_r_t_d

電子戦争以前からの時代の流れ、人々の変化がこの建物に収められた物を不要と断じたのだ。 しかしこの時代遅れの施設を管理し続ける老夫婦がいた。 彼らは日が昇る前に建物の前を掃き清め、心ないヨタモノ達の捨てたゴミを拾う。その様はまるで敬虔なボンズのようだった。 02 #hollytk

2015-12-07 17:34:18
@hiiragi_r_t_d

彼らは毎日、ゴミを拾った。有害な重金属酸性雨が降り注ぐ日も、光化学スモッグが陽光を遮る曇りの日も、皆が仕事を放り出して貴重な陽光を存分に浴びる晴れの日でさえ、彼らはゴミを拾った。 そしてある雨の日、彼らは一人の赤子を拾った。 03 #hollytk

2015-12-07 17:36:19
@hiiragi_r_t_d

無学な女が、古びたミンチョ体をテンプルと間違えたのだろうか?ある朝、建物の前に捨てられていたのは産まれたばかりの赤子であった。あと一歩遅ければ、有害な重金属酸性雨を全身に浴びて赤子はその場で命を落としていた事であろう。しかし赤子は運良く老夫婦に拾われた。 04 #hollytk

2015-12-07 17:38:37
@hiiragi_r_t_d

愚かで迷信深かった老夫婦はこの赤子を天からの授かりものだと思い、大切に育てた。彼はすくすくと育ったが、建物の外の世界を知らなかった。老夫婦がそう育てたのだ。 彼は建物の中にあった数多の本を読み、育ての親である老夫婦よりも賢く成長した。 05 #hollytk

2015-12-07 17:40:23
@hiiragi_r_t_d

電子戦争以前に「カルイノベル」と呼ばれ親しまれたジュブナイル。ナオキ・アワードやアクタリバー・アワードを冠した名著。禍々しいチャントめいた哲学書。彼はどのような本でも分け隔てなく読んだ。そして多くの事を知った。ミヤモト・マサシ。平安とエド。IRC。 06 #hollytk

2015-12-07 17:42:26
@hiiragi_r_t_d

彼の生活は平穏であった。朝目覚め、老夫婦の用意した朝食を食べる。あとは一日中、地下の倉庫に篭り本を読む。日が沈み、老夫婦が呼びに来れば彼は地上に上がり夕食を食べ、そして眠った。 アンタイセイもアンタイブディストも、地味な建物に危害を加えようとはしなかった。 07 #hollytk

2015-12-07 17:44:32
@hiiragi_r_t_d

若者達はここがネオサイタマ市の運営する施設とは知らぬ。否、市政に関わるものでさえ知らぬだろう。高度に自動化されたシステムによって割り振られる予算は施設の規模に見合って実際少なく、汚職や横領によって膨れ上がった他施設の予算に埋没し誰からも顧みられる事はない。 08 #hollytk

2015-12-07 17:46:06
@hiiragi_r_t_d

故に毎年、去年と同じ金額が支給される。……老夫婦がサンズリバーを渡って数年が経過した現在でも、それは変わらない。 09 #hollytk

2015-12-07 17:48:18
@hiiragi_r_t_d

ジジジジジジ!ジジジジジジ! 「アー……マッタ」 ジジジジジジ!ジジジジジジ! 「アー……分かってる。分かってる」 ジジジジジジ!ジジジガチャン! 「アー……ダイジョブ。ダイジョブダッテ」 乱暴に目覚まし時計を止めた男は、気だるげにベッドから身を起こした。 11 #hollytk

2015-12-07 17:52:11
@hiiragi_r_t_d

男はぼんやりとした意識のまま、夢遊病者めいておぼつかない足取りで地下室へ下る階段を降りてゆく。 リノリウムの床を冷えた足が叩く音だけが、誰もいない建物に響く。 「閉架」とミンチョ体で書かれたドアを開けると、背の高い本棚と埃の匂いが彼を出迎えた。 12 #hollytk

2015-12-07 17:54:17
@hiiragi_r_t_d

彼はオジギソウめいて体を丸め、部屋の中央に置かれた小さな椅子に収まると周囲に積まれた本の中から一冊を手に取った。 薄暗い部屋に、ページをめくる音だけが響く。ネオサイタマの喧騒とはかけ離れたその静寂は、まるでここだけがマッポーの世の訪れを回避したかのようだ。 13 #hollytk

2015-12-07 17:56:16
@hiiragi_r_t_d

開いた本の終盤、あと数ページの位置には、一枚の栞が挟まっている。 しかし彼は無造作にその栞を引き抜き、投げ捨てた。 「アー……最近、多いな」 然り。彼が手に取った本に栞が挟まっているのは、さほど珍しい事ではない。 この建物には彼しかいないにも関わらず、だ。 14 #hollytk

2015-12-07 17:58:15
@hiiragi_r_t_d

「オバケかな?いるなら出てこいよな」 彼はぼそぼそと独り言を呟き、また文字を追い始めた。 階段の上からは、外の雨音がうっすらと漏れ聞こえていた。 15 #hollytk

2015-12-07 18:00:29
@hiiragi_r_t_d

「アー……」 微動だにせず小さな椅子に収まっていた彼はビクリと震え、ゆっくりと目を開けた。 壁に設置された時計の針は、二本とも天を指していた。 「アー……寝るか」 彼はのっそりと立ち上がった。冷たい床を、冷たい足が叩く。 17 #hollytk

2015-12-07 18:04:37
@hiiragi_r_t_d

彼は階段に足をかけ、上を見たまま固まった。 眠っているのではない。驚きと恐怖によって身体が硬直したのだ。 タイコめいた雷鳴に照らされたそれが、階段の下に長い影を落とす。 「ドーモ、アンクーです」 階段の上に立っていた人影は、両手を合わせ丁寧にオジギをした。 18 #hollytk

2015-12-07 18:07:16
@hiiragi_r_t_d

オジギ姿勢のまま、ボロ布めいたクロークの奥から冷たく光る双眸が彼を見据える。 (アー……ニンジャ?ニンジャ……ナンデ) 彼はゆっくりと理解する。 (今、自分の前に立っているのは明らかにニンジャだ。ワカル。ニンジャは実在しない。ワカル。) 19 #hollytk

2015-12-07 18:09:13
@hiiragi_r_t_d

しかし階段の上に立ち、冷たい眼差しを彼に向けているのは紛れもなくニンジャだ。 「アー……アー」 彼は混乱の只中にあった。しかし本能が……彼に宿ったニンジャソウルの本能が、辛うじてアイサツを行わせた。 「アバー……ドーモ、アンクー=サン……ブックマン、です」 20 #hollytk

2015-12-07 18:11:15
@hiiragi_r_t_d

彼の……ブックマンのぎこちないアイサツを見て、アンクーはボソボソと二言三言呟いた後に彼に問いかけた。 「ブックマン=サン、貴殿はニンジャになって日が浅い。そうですね?」 「アバー……アバー」 しかしブックマンは質問に答えず、ゆっくりと階段を登る。 21 #hollytk

2015-12-07 21:10:33