作法の異なる3つの科学
- ShinShinohara
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科学には大きく3種類、作法の異なる科学がある。理論科学、実験科学、考古・地質学である。しかしこの3つの区別を科学者でさえきちんと整理できていないことが多い。STAP細胞事件は、科学者と呼ばれる人たちでさえ、分野が違うと作法が違うことが分かっていないということを如実に示した。
2015-12-08 00:09:07地学・考古学は、「観察科学」と呼ぶとよいかもしれない。すなわち、理論科学、実験科学、観察科学の三つ。
理論科学では、論文が掲載された時点で論文の内容がオーソライズ(正しいと見なされる)される。これは他の二つの科学(実験科学、考古学・地質学)と大きく違うところ。理論科学では、頭で理論を追って正しいかどうかを検証できる。複数の査読者が正しいと見なせば、その論文は正しいと見なせる。
2015-12-08 00:12:47しかし実験科学や考古学・地質学では、論文が掲載された時点では、真の意味ではオーソライズされていない。その論文を裏付けるような別の論文が続報として出ない限り、オーソライズされたことにならないのだ。そして、この二つは作法が異なる。
2015-12-08 00:17:55まず実験科学では、「再現実験するに足る情報が記述されているか」をチェックし、十分だと思われれば、とりあえず論文化される。論文を読んで興味をもった研究者が追試をすることを促す。そして再現に成功したという論文が続出したら、論文が初めてオーソライズされたと見なせる。
2015-12-08 00:20:43考古学・地質学は実験科学と違って、実験できないことが多い。恐竜は生き返らないし、鉱物を何万年もかけて作るわけにもいかない。実験せずに化石一つ、石ころ一つから壮大な物語を紡ぐしかない。爪の化石一つでティラノサウルスを語る大胆さは、理論科学や実験科学にはないある種の蛮勇。
2015-12-08 00:25:02では考古学・地質学はどういう作法をとるのか?「仮説の生き残り競争」なのだ。ある地層の石ころを一つ採って、そこから大胆に物語を紡ぎ出すのだ。サンゴの化石が採れたら「ここは昔暖かい海だったのだ」と。石一つでずいぶんと大胆な物語をするものではないか。
2015-12-08 00:34:13しかし考古学・地質学はそれでいいのだ。別の石ころから紡いだ物語が、先程のサンゴの化石で紡いだ物語(仮説)と矛盾しないか、矛盾する場合はどちらの仮説が生き残るか、別の石ころから物語を紡ぐ。そうして物語同士を戦わせて、最もうまく説明できる仮説だけが生き残る、という手法をとるのだ。
2015-12-08 00:36:29理論科学は頭で理屈に間違いがないかを検証する。実験科学は複数の研究者に再現実験をしてもらうことで検証する。考古学・地質学は仮説同士を戦わせて、それでも生き残れる仮説だけを信憑性が高いものとして受け止める。かように、科学の作法は分野によって全然異なる。
2015-12-08 00:39:49「科学的検証」と言っても、理論科学なのか、実験科学なのか、考古学・地質学なのかで検証方法がまるで違う。このことを、科学者でも十分区別できていないことが結構ある。ぜひとも「科学と言っても検証の仕方が分野によって全然違う」ことは多くの方々に知っておいて頂きたい。
2015-12-08 00:41:52