ニュートリノ振動に関するFAQ

ニュートリノに関する基礎知識と、その背景にある素粒子物理の基礎知識をまとめました。
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シータ @Perfect_Insider

ノーベル賞シーズンなので、ニュートリノに関するFAQをやります。

2015-12-07 23:08:11
シータ @Perfect_Insider

Q:ニュートリノは非常に珍しい粒子なの? A:いいえ。ニュートリノは太陽から常に飛んできていますし、宇宙線(宇宙空間を飛び回る放射線)によって大気中でもニュートリノは常に作られ続けています。

2015-12-07 23:09:17
シータ @Perfect_Insider

Q:じゃあニュートリノを見つけるのはどうして難しいの? A:ニュートリノは他の物質とほとんど相互作用をしないからです。光と相互作用しなければそこに粒子がいても見えませんし、手を触ろうとしても手の原子と相互作用しなければ素通りしてしまいます。なので特殊な実験施設が必要なのです。

2015-12-07 23:10:04
シータ @Perfect_Insider

Q:ニュートリノを初めて観測したのが小柴さんなんですよね? A:いいえ。ニュートリノは1956年にライネスとカワンという人が原子炉を用いた実験で初めて観測しました。(正確には電荷がプラスである反ニュートリノを観測しました)

2015-12-07 23:11:07

他の方から指摘を受けましたが、「電荷が逆」というのは正しくないです。一般に「電荷などの正負のある量が逆になった粒子」を「反粒子」と呼び、ニュートリノの反粒子が反ニュートリノなのですが、ニュートリノにはそもそも電荷がないので電荷はひっくりかえらないです。

シータ @Perfect_Insider

Q:じゃあ小柴さんは何をしたの? A:小柴さんは「自然に発生したニュートリノ」を初めて観測した人です。ライネスとカワンの実験は原子炉という人工的施設で作ったニュートリノでしたが、小柴さんは超新星爆発で生まれたニュートリノを1987年に観測しました。

2015-12-07 23:13:09

コメントでも指摘されましたが、ホームステイク実験で太陽ニュートリノを観測する方がカミオカンデの実験よりも明らかに先なので、「自然に発生したニュートリノの最初の観測」はカミオカンデではないです。「超新星ニュートリノの最初の観測」ならば正しいです。

シータ @Perfect_Insider

Q:カミオカンデはニュートリノを観測するために作られたんですよね? A:いいえ。もともとは「陽子崩壊」という現象を観測するために作られました。陽子崩壊は「大統一理論」という理論によって予言される現象で、この現象の存在を調べるために作られたのです。

2015-12-07 23:13:20
シータ @Perfect_Insider

Q:ニュートリノ振動を提唱したのが戸塚さんや梶田さんですよね? A:いいえ。ニュートリノ振動というアイデアはまずポンテコルボが1957年に提案、現在の枠組(フレーバー振動)は牧、中川、坂田が1962年に提案したものです。

2015-12-07 23:14:05
シータ @Perfect_Insider

Q:でも戸塚さんや梶田さんの観測までは誰も信じなかった? A:というわけではないです。太陽からくる(電子)ニュートリノが理論予測より大幅に少ないことが、デイビスのホームステイク実験によって1968年に報告されており、その解決策としてのニュートリノ振動は以前から提案されていました。

2015-12-07 23:15:05
シータ @Perfect_Insider

Q:じゃあ戸塚さんや梶田さんは何をしたの? A:ニュートリノ振動していれば、飛行距離(振動時間)に応じてどのぐらいの比率で見てるニュートリノが減るかが分かります。彼らは大気ニュートリノを真上からと地球の裏側からくるもの(飛行距離が違う)とで比較して、理論とあうことを示しました。

2015-12-07 23:16:15
シータ @Perfect_Insider

Q:なぜニュートリノの質量はゼロとされてたの? A:いろいろありますが、過去の実験では質量はあっても非常に小さいことが分かっており、質量がある方が理論が複雑になってしまうから、ニュートリノは左巻きしか観測されてないがこれが質量ゼロだと説明がつくから、等が挙げられるでしょう。

2015-12-07 23:17:27
シータ @Perfect_Insider

Q:なぜ質量があるとニュートリノ振動が起きるの?(詳しい人向け) A:一言で言えば、フレーバー固有状態(三種のニュートリノの区別)が質量固有状態と異なるためです。エネルギーは質量と結びつくので、シュレディンガー方程式の解でエネルギー差の分だけ位相がずれて振動が起きます。

2015-12-07 23:18:07
シータ @Perfect_Insider

Q:じゃあ重要なのは質量「の差」があることなの? A:はい、そうです。ニュートリノの質量がすべて同じだったら、質量が有限でもニュートリノ振動は起きません。ただ、「有限の質量で、かつすべて同じ値」というのは非常にありえなそうな一方、「すべて質量ゼロ」なら自明に質量は同じになります。

2015-12-07 23:19:06
シータ @Perfect_Insider

続きはまた明日以降にします(もう少しベーシックなところから書こうかな・・・)

2015-12-07 23:20:20
シータ @Perfect_Insider

昨日の続きをやります。

2015-12-08 23:01:16
シータ @Perfect_Insider

Q:そもそも物質って電子、陽子、中性子で出来ているんじゃないの? A:陽子と中性子については、それらが基本的構成要素ではなく、より小さい「クォーク」が複数集まってできているのだと分かりました。例えば陽子はアップクォーク2個とダウンクォーク1個からなります。

2015-12-08 23:02:22
シータ @Perfect_Insider

Q:よく聞く「四つの力」って何? A:電磁気力(磁石の力や、静電気で下敷きに髪の毛がくっつくあの力)、重力、強い力、弱い力、の4つのことです。後ろの二つは原子核の中でしか実質効かないので、身近な力は前の二つだけです。物質の間に働く力はこの4つしかないとされています。

2015-12-08 23:03:05
シータ @Perfect_Insider

Q:「強い力」って、その力が強いってこと? A:いいえ、「強い力」というのが「重力」と同様、力の名前なのです。例えば「歌うたいのバラッド」は「歌を歌う人が作ったバラッド」という一般名称とも読めますが、同時に斉藤和義が作ったあのバラッドを指す固有名詞でもあります。これと同じです。

2015-12-08 23:04:14
シータ @Perfect_Insider

Q:じゃあ指で本を押したら動く、あの力は何? A:日常的には「指で押した力」などといいますが、これはもとをただせば指の原子と本の原子の間に働く電磁気力によるものです。指の原子と本の原子が互いに反発しあうので、指を押す(本に近づける)と本は動く(指から遠ざかる向きに動く)のです。

2015-12-08 23:05:14
シータ @Perfect_Insider

Q:「標準模型」って何? A:物質の構成要素となる粒子と、その間に働く力のうち重力以外の三つ(電磁気力、強い力、弱い力)を組み込んだ、素粒子理論の標準的な理解となっているモデルです。小林・益川が予言した6種のクォークやヒッグス粒子はここに含まれています。

2015-12-08 23:06:11
シータ @Perfect_Insider

Q:「大統一理論」って何? A:標準模型では電磁気力と弱い力は統一的に理解できたのですが、強い力は個別に扱う必要があり、また理論では決まらない(実験で決める必要のある)パラメータが多い、など不満な点が標準模型にはあるので、これら問題を解消しようとする理論です。

2015-12-08 23:07:13
シータ @Perfect_Insider

Q:「超ひも理論」というのも聞いたことがあるのですが? A:「超ひも理論」は「大統一理論」よりもさらに先に進めて、重力まで統合してしまおうという理論です。実験で調べるのは、大統一理論をも上回るので現状では非常に難しいと言っていいでしょう。

2015-12-08 23:08:12
シータ @Perfect_Insider

Q:「力を媒介する粒子」というのをよく聞くけどどういうこと? A:電磁気力で説明します。静電気力や磁力の場が振動しているものを「電磁波」といいます。実はこれは光と同じものです。一方、「波としての光」は「粒子としての光子」でもあります。これを「電磁気力は光子が媒介する」といいます。

2015-12-08 23:09:14
シータ @Perfect_Insider

Q:粒子の「色」とか「香り(フレーバー)」って何? A:静電気に関しては二種類のものがあり「同種だと反発しあうけど異種だと引き合う」といった状況が見れ、これをプラスとマイナスと呼びます。ところが素粒子では種類が三つあるタイプの相互作用があるので、便宜的に色や香りで区別しています。

2015-12-08 23:10:06