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Twitter連載小説『君がみた世界のはなし』

皆様は「ドナドナ」という童謡を御存知でしょうか? 市場へ子牛が売られていくとゆう、あの曲です。今回の物語はそのドナドナが「市場へ向かわなかったらどうなっていたか?」とゆうifのおはなしです。 Twitterに存在する虚構の飲み屋「赤ランプ」(@aka_lamp)の常連、寿見屋氏のTwitter小説をまとめました。
小説
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figment @aka_lamp
それではどうぞ。『君がみた世界のはなし』
figment @aka_lamp
市場へ向かう道すがら、荷馬車から転がり落ちたドナドナは、今やすっかりじゆうの身。
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なにをしようと、どこへ行こうと、ドナドナを叱って叩いたりする人は誰もいません。しかしドナドナは、なにをしたらいいのかわからず、途方にくれておりました。
figment @aka_lamp
実際問題、転がり落ちた為に足をけがしていましたし、市場へ売られるというのはつまりそういうことでしたから、思いもかけずじゆうになっても、ぽかんとするばかりだったのです。
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もといたところにかえりたいなぁ、とは思うものの、もうそこにはかえれないことを、幼い頭でも、ドナドナはよく知っていました。
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ドナドナが転がり落ちたのは崖の下でした。結構な高さから落ちたものの、たまたま下にあった池に落っこちたので、けがをすることもなく、無事だったというわけです。
figment @aka_lamp
荷馬車が溝にはまって脱輪し、それがまた古い荷馬車でしたから……全体に大きな衝撃とひどい音が走ってドナドナは投げ出され、ゴロンゴロンと転がってなすすべもないまま崖から落ちた、はずなのです。
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けれどそうしたことを思い出し順序立てて考えているうちに、たまたま池に落っこちたのではなくて、池に向かって自分が飛び込んだのではなかったかしら、という考えが浮んで、青くなりました。
figment @aka_lamp
荷馬車の中で、ドナドナはずっとぼっちゃんのことを考えていました。主は少しくこわい方でしたけれど、その息子であるぼっちゃんはドナドナのことをとてもとても可愛がってくれました。ぼっちゃんはいつも、君が生まれた時から、ぼくは君のことを見ているんだよ、と言いました。
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「だって、君が生まれるところをぼくはずっと見ていたんだからね。それどころか、おかあさんのおなかからひっぱるのだって手伝った。うしろあしにロープを結びつけてね、それを父さんや母さんや、みんなと一緒にひっぱったんだ。あのときはすばらしかったなぁ、
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最初は母さんに『お前には無理だ』って言われたんだ。出産は深夜から明け方近くなるし、それまで起きていられやしないって、でもぼくは『今日は牛小屋から動かない!』って、そう言ってやったんだ。
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そうしたら母さんもわかってくれたみたいでさ、牛小屋の中に簡単な寝床を作ってくれて、寒くないように毛布までくれた。それにくるまって、ぼくは君が生まれてくるのを、ずっと待っていたんだよ……」
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ぼっちゃんはそんなふうにいつもドナドナに話しかけて、ドナドナをなでたり一緒に走りまわったり、食べものをくれたりしました。ふたりはいつも一緒でしたし、ドナドナはぼっちゃんのことが大好きでした。
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そんなわけですから、ドナドナがよそへ売られることを知ったぼっちゃんは大変悲しみ、最後まで納得しない様子でした。主がそんなことではやっていけないんだと叱りつけようとなだめすかそうと、決して首をたてに振ろうとはしませんでした。
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しかし今朝、いよいよ市場へ行くという段になり、それを察したドナドナが荷馬車に乗るのを嫌がって少々暴れた時、真っ先に「だめじゃないか!」とドナドナを叱ったのはぼっちゃんでした。
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ドナドナはぼっちゃんのその態度にただ驚いて、抵抗するのをやめ、立ち尽くしました。するとぼっちゃんは顔全体が歪むほど今にも目からこぼれおちそうな涙をこらえて、「だめじゃないか、だめなんだよ、乗るんだよ、ほら」今度はそっとささやくような声でそう言って、ドナドナの体をなでるのでした。
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そして思い出したように「言うことを聞いてくれるならいいものをあげる」とクローバーの葉で編んだ首飾りを取りだして、ドナドナの鼻先で振ってみせてからそら、と荷馬車の中に向かって放り投げ、首飾りは少し渇いた音を立てて落ちました。
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ドナドナはこの時すでに途方にくれていたのかもしれません。
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からっぽの気持ちで、その首飾りが落ちた先へゆっくりと駆け出したのです。つづく。
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それでは「君がみた世界のはなし」第2話、はじまりはじまり。
figment @aka_lamp
クローバーの首飾りは、荷馬車の中できれいに食べてしまいました。そのことを少し後悔した頃、突然、背後から「こら!」と怒鳴り声がして、ドナドナは驚いて腰を抜かしてしまいました。
figment @aka_lamp
池の中からぬぅーっと、ほとんど黒に近い灰色の巨大な鯰が顔を出してドナドナを見ながら「君はなんだ、ここで何をしている」と不機嫌そうに言いました。 「ご、ごめんなさい、ぼく、ドナドナって言います」
figment @aka_lamp
「ふむ、ドナドナや、君はどこからやってきた」 「はい、ぼくはあの…上から、落っこちてきました」 「落っこちてきただって?」 面白くて笑っているのか、水面がばしゃばしゃと波立ちます。
figment @aka_lamp
「ふむふむ、すると先ほどこの池の中に起こった大きな振動も君の仕業か。てっきり夢か地震だと思ったが、念の為様子を伺いに来てみれば、なるほどなるほど」
figment @aka_lamp
そんなことをひとりでブツブツつぶやいていましたが、つと顔を上げ、舐め回すようにドナドナを見て「上から落っこちてきたと言ったね? この上にある道は確か市場に続いているはず。売られるのが、嫌になったか」 「どういう意味です?」
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コメント

umbrella_process @umbrellaprocess 2011年2月1日
『君が見た世界のはなし( @aka_lamp )』続きを追加しました。
umbrella_process @umbrellaprocess 2011年2月1日
どうしたら読みやすくなるかな。
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