#初期西村京太郎を読んでみた

浅木原忍@紅楼夢か-20,21 @asagihara_s

70年安保の時代を感じさせる、若者の冒険とプロテストを描いた海洋冒険サスペンス。ディテールや謀略の駆け引きよりもプロットの捻りで勝負するタイプで、中盤に発生するミステリー部分は凝ったものではないが、終盤の捻り技が綺麗に決まった海洋ものの秀作。 #初期西村京太郎を読んでみた

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08【名探偵なんか怖くない】（71年／講談社文庫） クイーン、ポワロ、メグレ、明智が推理を競い合うパロディ本格。すみません元ネタに未読が多いため未読です。 amazon.co.jp/dp/4062754592/ #初期西村京太郎を読んでみた

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09【脱出】（71年／講談社文庫）★★★★ ブラジルへの渡航直前、誤って人を殺してしまった混血の青年・サチオに、４人の若者が手を差し伸べる。彼らの目的は？　そしてサチオは無事にブラジルへ脱出できるのか？ amazon.co.jp/dp/4061361945/ #初期西村京太郎を読んでみた

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日本人の優しさで糊塗された差別意識の生む息苦しさと、『ある朝 海に』と同じく若者のプロテストを描いたタイムリミットサスペンス。二転三転する展開にあれよあれよと読まされる。現代にも通じる問題意識とサービス満点のプロットが冴える、初期の埋もれた傑作。 #初期西村京太郎を読んでみた

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10【悪への招待】（71年／講談社文庫・徳間文庫）★★ 自殺した父は実は殺されたのだと告げる謎の手紙が届き、真相を確かめるため郷里の徳島へ向かった沢木は、謎の女に導かれ、政財界の闇に迫っていく。 amazon.co.jp/dp/419891916X/ #初期西村京太郎を読んでみた

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文庫600ページ以上ある長編だが、展開はやたらと早くサクサクと読める。しかしどこを切ってもどこかで見たような要素ばかりの話なので、２時間の暇潰し以上の価値は見出しにくい。主人公を導く謎の女の、終盤での扱いというか退場の仕方はちょっと笑える。 #初期西村京太郎を読んでみた

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11【汚染海域】（71年／徳間文庫・広済堂文庫）★★☆ 伊豆で自殺した少女からの手紙を受け取った弁護士・中原は、コンビナートによる公害の実態を追及しようとするが……。公害問題を扱った社会派ミステリー。 amazon.co.jp/dp/4198926050/ #初期西村京太郎を読んでみた

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社会派ものとしてはディテールがスカスカで、ミステリー部分も単なるオマケ。しかし公害を追及する主人公たちを一番に妨害するのが風評被害を怖れる地元の漁民で、人間を動かすのは正義よりも経済的エゴイズムである、というシニカルな視点は今読んでも光るものがある。 #初期西村京太郎を読んでみた

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12【殺しの双曲線】（71年／講談社文庫）★★★★☆ 東京で連続する双子による強盗事件と、雪の山荘で巻き起こる連続殺人。『そして誰もいなくなった』本歌取りに双子トリックを明言して読者に挑む本格ミステリ。 amazon.co.jp/dp/4062773384/ #初期西村京太郎を読んでみた

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言わずと知れた初期西村京太郎の代表作。双子トリックを冒頭で明言しながら飄々と読者を煙に巻く、ふてぶてしい仕掛けと凝り凝りのプロットの妙技が冴え渡る。作り物であるが故に古びない、本格ミステリを読む楽しみに満ちた傑作。初期西村を読むならこれからどうぞ。 #初期西村京太郎を読んでみた

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個人的な話ですが千街晶之『国内ミステリーマストリード100』でこれが紹介されていたことが、初期西村京太郎を読むことになるきっかけでした。実際めっちゃ面白いのである。 #初期西村京太郎を読んでみた

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13【マンション殺人】（71年／徳間文庫）★☆ 品川の高級マンションで詐欺師が、北多摩の団地で公団の用地係が、浴室で撲殺された。被害者を繋ぐ一枚の偽名刺。これは連続殺人か？　そして事件の背後には何が？ amazon.co.jp/dp/4198922020 #初期西村京太郎を読んでみた

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初期西村のキングオブ地味作品。一応ミッシングリンクものではあるが、ミステリ的にも社会派としてもさして見所はなく、地味な捜査が淡々と続く。凶器の謎は警察が気付かないのもそんなに上手くいくのもおかしい。清張以後に量産された社会派ミステリーってこういうの？ #初期西村京太郎を読んでみた

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14【殺意の設計】（72年／角川文庫・廣済堂文庫）★★☆ 夫の浮気を知った麻里子は、離婚すべきか男友達の井関に相談する。だが三人での話し合いの最中、麻里子は夫とともに毒死した。これは無理心中か、他殺か？ amazon.co.jp/dp/4331604403 #初期西村京太郎を読んでみた

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殺人だとすれば容疑者はひとり、だがどうしても犯行動機が判らず殺人と立証できない――というホワイダニットもの。ネタ自体は決して悪くなく、書き方次第では面白くなったはずなのだが、それを上手く活かせず地味な話に終わってしまった感がある。惜しい。 #初期西村京太郎を読んでみた

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15【ハイビスカス殺人事件】（72年／講談社文庫・徳間文庫）★☆ 学者の若杉は、教え子の父に娘を連れ戻すよう頼まれ与論島へ向かうが、何者かに金と腕時計を奪われる。翌日、東京の殺人現場に若杉の腕時計が…。 amazon.co.jp/dp/4195675367/ #初期西村京太郎を読んでみた

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後に傑作『殺人者はオーロラを見た』で再登場する民族学者・若杉の初登場作。琉球民族問題を扱った社会派ものだが、地味なアリバイ崩しが大半を占め、肝心の民族問題が全く伝わってこない出涸らしのような失敗作。これが1作目なのは謎としか言いようがない。 #初期西村京太郎を読んでみた

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16【名探偵が多すぎる】（72年／講談社文庫） 名探偵シリーズ第２巻。これも同様の理由で未読。 amazon.co.jp/dp/4061361619/ #初期西村京太郎を読んでみた

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17【伊豆七島殺人事件】（72年／光文社文庫）★★ 海洋開発で２社がしのぎを削る神津島。新日本重工の海底基地で、蝶に埋もれた刺殺死体が発見された。現場は水深40メートルの海底密室！　海洋本格ミステリ。 amazon.co.jp/dp/4334701094/ #初期西村京太郎を読んでみた

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海底密室の蝶に埋もれた死体という魅力的な謎に、海洋開発を巡る社会派の要素と、島の土着信仰が絡んでくるものの、それらが上手く噛み合わずどれも中途半端になり、結局地味なハウダニットの謎解きに終始してしまう竜頭蛇尾な凡作。初期西村はこういうのが結構多い。 #初期西村京太郎を読んでみた

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18【鬼女面殺人事件】（73年／徳間・廣済堂・青樹社・飛天文庫）★★ 新幹線内で毒殺された男の遺言とアカベの花を頼りに、恩根島を訪れた弁護士の中原。そこは300年の因習が支配する孤島だった……。 amazon.co.jp/dp/4198933359/ #初期西村京太郎を読んでみた

浅木原忍@紅楼夢か-20,21 @asagihara_s

都会の論理と閉鎖された共同体の論理が交錯する、初期西村が好んで書いた〝孤島の論理〟ものの代表的な作品だが、中盤が冗長なわりに島の怪奇性の書き込みが足らず、連続殺人を巡る異なる論理の対決は食い足り無さばかりが残る。実に6度文庫化されているが凡作の部類。 #初期西村京太郎を読んでみた

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19【殺人者はオーロラを見た】（73年／講談社文庫・徳間文庫）★★★★☆ 自称沖縄出身の歌手が殺され、捜査本部にユーカラの一節が届く。アイヌの血を引く若杉は、事件にアイヌが絡んでいるのではと疑うが…。 amazon.co.jp/dp/4198924864/ #初期西村京太郎を読んでみた

浅木原忍@紅楼夢か-20,21 @asagihara_s

アイヌ民族問題にアイヌ先住民説の歴史ネタを絡めた、西村社会派ミステリーの埋もれた傑作。邪馬台国の謎まで切り込む中盤の歴史ネタを初め、西村作品とは思えない濃密なディテールが社会派テーマと絡み合う。初期社会派路線の代表作とされるべきベスト級の力作だ。 #初期西村京太郎を読んでみた

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20【赤い帆船】（73年／光文社文庫・角川文庫）★★★ 単独無寄港世界一周達成で時の人となっていたヨットマンが殺された。壮大かつ鉄壁のアリバイトリックに十津川警部が挑む、十津川警部の記念すべき初登場作。 amazon.co.jp/dp/4334765521/ #初期西村京太郎を読んでみた