ツイッター連載小説「厳冬舎ピカレスクロマン編集者マサトが愛した関西人」

高井研さんによる新書「生命はなぜ生まれたのか―地球生物の起源の謎に迫る」の誕生秘話。略称「厳冬ピカロママサト」 「生命はなぜ生まれたのか―地球生物の起源の謎に迫る」 http://www.amazon.co.jp/gp/product/4344981987
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高井研 @1031kentakai

ツイッター連続小説「厳冬舎ピカレスクロマン編集者マサトが愛した関西人」を連載します。理由は「書きたいから」。「マサトに書けるもんなら書いてみろ!」と言われたから。6ヶ月ほど前に。なお、登場する人物はすべて架空の人物であり、現実には存在しないと思います。また、かなりデフォルメ度高し

2010-12-25 01:34:52
高井研 @1031kentakai

厳冬ピカロママサト(略)(1)厳冬舎、それは某巨大出版社丸川文庫と袂を分かったアウトローハードボイルド編集者、 Kenjoが創始した男汁フェロモン満載の出版社だ。とにかく出す本は売るぜ。アクターガワ賞もナオミ賞も頂くぜ。そんなハードな出版社だ。とかいいつつ、結構柔らか本も多いぜ。

2010-12-25 01:42:44
高井研 @1031kentakai

厳冬ピカロママサト(略)(2)2009年5月のことじゃったかいのー。いつものようにメールをチェックをすると、見慣れぬ差出人と件名が。厳冬舎積み木くずしマサト...。知らんな。カチッ。フムフム、ぬな、本を書きませんかだと。これは最近はやりのワンクリック詐欺?カケカケ詐欺か。

2010-12-25 01:48:58
高井研 @1031kentakai

ワシは論文を書くのに忙しいんじゃ。まだまだ世界を支配するには、クゥオリティーの高い科学論文をかかんといかんのじゃー。一般向けの本なんか書いてられるかー。これまでも断ってきたんじゃー。天下のロックウェーブですら断ってきたんじゃー...。でも、厳冬舎と言えば、ピカレスクお笑い系だな。

2010-12-25 01:52:15
高井研 @1031kentakai

厳冬ピカロママサト(略)(4)ふむ、ワシのエッセーなら書いてやってもよいわ。「ホームレス中学生」でも売れる時代じゃ。「ホームレス研究者」でも書くかの。それにワシの好きな桜井亜美も厳冬舎だったな。もしかしてイノセントラブできるかもしれん。サインだけもらって断ろう。

2010-12-25 01:56:28
高井研 @1031kentakai

厳冬ピカロママサト(略)そしてマサトは横須賀JAMにやってきた。マサト「いやー1031さんの研究はおもしろいですねー。ボクの感じた感動はもっと広く一般に感じてもらうべきですよ。絶対本を書くべきです。文系のボクでも共感できましたし、ぜひ。ぜひ。ところでどんな研究でしたっけ?」

2010-12-25 02:02:05
高井研 @1031kentakai

厳冬ピカロママサト(略)(6)マサトは口からでまかせを言うタイプだった。しかし、なにか熱いものを感じさせるピカレスクロマンも持っていたのだった。「まままま、まずは軽ーい気持ちで書いてみましょうよ。とりあえず24万字ね。すぐですよ。すぐ。えっ、シーナマコト風で書きたい?なめとんか」

2010-12-25 02:05:55
高井研 @1031kentakai

厳冬ピカロママサト(略)(7)基本的には物腰穏やかだが、ときおり修羅のごとき表情をみせるこの男にチビったのも事実だ。なんかしらんが、インド洋航海が終わって12月までに、24万字の大層な話を書くはめになってしまった。まあ口約束だしね。いざとなれば、「ごめん、無理!」でごまかせばよい

2010-12-25 02:10:30
高井研 @1031kentakai

厳冬ピカロママサト(略)(8)そう思って、私はインド洋航海にでかけたのだった。そして「スケーリーフットや!しろいですよ〜。あふ〜。い〜よ。い〜よ。すごくいいよぉ〜。」などとこの世の春を満喫していたのだった。まさかその後地獄が待っているともしらずに....。(第1章完)。

2010-12-25 02:13:47
高井研 @1031kentakai

厳冬ピカロママサト(略)(9)インド洋航海を終え、常夏の楽園モーリシャス、カノウ姉妹がグットルッキングガイをナンパするというビーチでヨーロピアンな休息に浸った私は、完全にトロピカルな人間となって日本に帰ってきた。マサトとの約束などスイングバイで太陽系の彼方へと消え去っていた。

2010-12-28 00:45:32
高井研 @1031kentakai

厳冬ピカロママサト(略)(10)そんな2009年師走、私のビジネスメールに、「オイワレ、年末までに払う言うとったやろ。どうなっとんじゃい。シャーコラ。厳冬舎なめとっとたら、奥歯ガタガタいわすぞ」という亀父のような迫力満点のマサトからの催促が矢のように入ってきた。「消される!」。

2010-12-28 00:51:25
高井研 @1031kentakai

厳冬ピカロママサト(略)(11)もはや、「今日、耳、日曜」などとギャグでは済まないと確信した私は、2010年1月末には、なんとかしますから、と逃げた。マサトは「人間ちゅうのは自分に追い込みかけられるのは耐えれるもんよ。そらそうよ。やり方はいろいろあるでな〜」とトドメをさしていった

2010-12-28 00:59:59
高井研 @1031kentakai

厳冬ピカロママサト(略)(12)2010年はそのような苦難のスタートだった。一日1万字をノルマに、地球に生命が誕生する瞬間を「見てたんかいオマエ!」と突っ込まれるのを覚悟して、ねつ造していった。文章が進まず苦しくなると、美味しんぼの山岡さんや海原雄山、富井副部長を登場させ、

2010-12-28 01:03:48
高井研 @1031kentakai

厳冬ピカロママサト(略)(13)のだめ・ぐみを引用し、安西先生や桜木花道も登場させた。元阪神タイガース岡田監督も一体何度登場したことか。気がつくと1月末には30万字近い超スペクタクル大作が出来上がっていた。私は自分の才能に驚愕した。「やはり天才?やはり」そうつぶやくしかなかった。

2010-12-28 01:08:03
高井研 @1031kentakai

厳冬ピカロママサト(略)(14)意気揚々と、原稿をマサトに送りつけた。「どの世界に1ヶ月で30万字の大作を仕上げる素人がいるでしょうか。いやいない(反語)」と添え書きとともに。家族には「4月には発刊されるやろ。直木賞ねらいまっせ!」と鼻を膨らませて自慢したのだった。

2010-12-28 01:11:32
高井研 @1031kentakai

厳冬ピカロママサト(略)(15)厳冬舎、それは某巨大出版社丸川文庫と袂を分かったアウトローハードボイルド編集者、 Kenjoが創始した男汁フェロモン満載の出版社だ。本は売るぜ。本は売れてなんぼよ。そんなハードな出版社だ。厳冬舎の真の姿を知るのに、時間はかからなかった。(第2章完)

2010-12-28 01:15:14
高井研 @1031kentakai

厳冬ピカロママサト(略)(16)それは原稿を送りつけてから既に一ヶ月も経とうとする頃だった。マサトが「いやーまいりました。これは名作ですよ。こんなピカレクスギャグ満載の新書なんてかつてあっただろうか、いやない(反語)」というメールがいつ来るか来るかと待ちわびていた私に、マサトから

2011-01-12 00:57:21
高井研 @1031kentakai

厳冬ピカロママサト(略)(17)のメールが届いた。「いやーずいぶん勝手なことしてくれたなあ〜。それはまずいでキミィー。怒るで、しかしー」という冗談にしか読めないメールだった。「ちょっと打ち合わせしよか。明日行くわ」とこっちの都合も聞かず、話を進める。一体何が彼の気に障ったのか?

2011-01-12 01:01:45
高井研 @1031kentakai

厳冬ピカロママサト(略)(18)翌日開口一番、マサトは「ええか, 1031!ワシはな、泣く子も黙る厳冬舎の編集や!いわばプロや。ワシは一読しただけでそれが売れるかどうか判断できるんや。オマエのこの30万字ウザイんや。なにが、「水だし昆布」や「コンブのDNA」や「気になる木」や。

2011-01-12 01:05:22
高井研 @1031kentakai

厳冬ピカロママサト(略)(19)「地球生命誕生の物語やろ?えーオラ。ほとんど本文と関係ないこと満載や。「やはり天才?!キラーン」とかええんや。シーシェパードとRNAワールドの関係とか関係ないやろ?あと漫画ネタ使い過ぎ!ワシは全部わかったけどな...」ってオマエ全部分かったんかい。

2011-01-12 01:10:25
高井研 @1031kentakai

厳冬ピカロママサト(略)(20)私が「でもマサトさんは、読者は中高生って言ったじゃないすか?しかも好きなように書いたらいいって。基本的にはシーナマコトの「さらば国分寺のおババ」風に書くって言ったでしょ」と言うと。「えっ、アレ本気で言ってたの?しんじらんな〜い。超ウケる〜この人」

2011-01-12 01:13:53
高井研 @1031kentakai

厳冬ピカロママサト(略)(21)どうやら、決定的にダメだしを食らったようであった。マサトは「美味しんぼ」が嫌いなタイプなインテリだった。その割には、元阪神岡田監督の「そらあれよ。そらそうよ」だけは削除しなかったのには驚いた。マサトは電子ファイルではなく全部印刷して真っ赤にした原稿

2011-01-12 01:18:23
高井研 @1031kentakai

厳冬ピカロママサト(略)(22)を叩き付けて帰っていった。あーあ。折角のしんかい6500の臨場感溢れる航海日記風の第1章は、8万字減。地球に最初に現れた生命の痕跡についての解説は「ワシそれよくわからんから、削除ね」と4万字減。私の研究の核心部分も「メタン菌?なにそれおいしいの?」

2011-01-12 01:22:27
高井研 @1031kentakai

厳冬ピカロママサト(略)(23)このように当初あった30万字は、みるみる内に15万字ほどになってしまった。悔し紛れに「もういや。こんなに私を辱めて何が楽しいの?もうこんな関係まっぴらよ」と私が言うと、その時だけマサトは「何言ってるんや。オレにはオマエだけや。ちょっとの我慢や。」

2011-01-12 01:26:11
高井研 @1031kentakai

厳冬ピカロママサト(略)(24)「オマエはサイコーのクリエーターや。ワシの目には狂いはないんや。ワシが見込んだんやから、ぜったい面白いもんが書ける」とやさしい言葉をかけるのだった。その割には、2ヶ月ぐらい音信不通になることが度々だった。当初2010年4月発刊の予定は、7月、11月

2011-01-12 01:29:31