掌小説語り~自作つぃのべる集25~

自作つぃのべるのまとめです。 2014年7月分
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リュカ @ryuka511

灼熱の光が世界を包む。それはある賢者が作った破壊の魔法陣。とんでもない物を作ってしまった、これは葬らなくては。だが魔法陣は役目を果たすべく自ら発動する。施術者である彼はその影響を受けない。焼き尽くされた世界で残光の元に跪き彼は許しを請うた。それを聞く者はいない。 #twnovel

2014-07-02 00:01:54
リュカ @ryuka511

「月へ帰るんだよ。」廃虚と化した遊園地で、メリーゴーランドの白馬に跨り彼は微笑む。どれ程の悲劇が彼を穏やかな廃人へと変えたのか知る術はない。彼は柔和な笑みを浮かべた。「さぁ、行こう。」月光を浴びた白馬は、彼にしか聞こえない嗎きを上げ、動かぬはずの脚で空へ駆ける。 #twnovel

2014-07-02 23:17:06
リュカ @ryuka511

惚れた人魚の少女に会う為に、スパンコールの鱗を纏って海に潜った。彼女を見つける事は出来たが、警戒心の強い人魚達はすぐに隠れてしまう。彼女と話がしたい、ただそれだけなのに。偽物の鱗ではやはり駄目なのか。想いが本物でも、種族の壁は越えられない。 #twnovel

2014-07-04 00:59:22
リュカ @ryuka511

7月7日、人々はこの日の雨を嘆く。これでは天の川が氾濫し、愛する二人は会えないと。だが地上の人々は知らない。雨雲が地上の光を覆い隠し、天の川をくっきりと浮かび上がらせるのだ。普段より明るく輝く天の川の星々は、一夜の逢瀬を静かに見守る。 #七夕一夢 #twnovel

2014-07-07 22:42:25
リュカ @ryuka511

織姫は泣いていた。地上の光が眩し過ぎて天の川の岸が見えないと。これでは足を踏み外し川に落ちてしまう。父たる天帝は大事な娘の為に考えた。地上を闇で覆ってしまえと。かくして地上は闇に包まれ、織姫達の逢瀬は滞りなく果たされたという #世界もう滅ぼしたい協会 #七夕一夢 #twnovel

2014-07-08 23:27:30
リュカ @ryuka511

大事なものを頂くと怪盗からの予告状に伯爵家は厳戒態勢が敷かれたが、怪盗は伯爵の婚約者の屋敷にいた。「私が欲しいのは貴女です。伯爵は貴女を大事なものとは認識していないようですよ。」揺れる彼女の瞳。怪盗が彼女の手を取る。触れた指先盗んだ小指、搦めた指輪が地に落ちる。 #twnovel

2014-07-09 23:21:49
リュカ @ryuka511

私は旅の戦士で、彼は国を背負う王子。酒場で意気投合した彼の使命を知って、彼の旅に加わった。魔王討伐の旅が終わったら、別々の道を生きる。だけど彼の背中を任され守れるのは私だけ。背中あわせでしか生きられない私達だけど、この旅が終わるまでの間は、彼の背中を守り切る。 #twnovel

2014-07-11 00:38:16
リュカ @ryuka511

青い鳥殺害現場は凄惨さを極めていた。幸福を独占しようとした愚か者によって殺された、哀れな青い鳥。血の臭いと部屋中に飛び散った肉片に、立ち入った誰もが顔を顰める。現場は密室、一体誰がこんな事を? 血に染まった部屋の中、青い鳥の亡骸だけが清らかな青い色を放っていた。 #twnovel

2014-07-11 23:26:09
リュカ @ryuka511

少年は姉が作った木の女神像を大切にしていた。本物の女神を拝める程自分達は純粋ではないと知っていたから。ある日、少年が持つ女神像に街の富豪が目を付け、彼から無理矢理奪って行った。「ごめんね、取られちゃったよ。」力無い自分が情けなくて苦笑する。「許してくれる?」 #twnovel

2014-07-12 23:25:30
リュカ @ryuka511

「私が玉座でのうのうとしていたとでも思ったか?」謀反を企てた部下を斬り捨て王は笑った。「責め立てないだけマシだと思うべきだろう? 最も、お前にはその価値すら無いがな。」駆け付けた側近に連行するよう命じる。「私を妬むなら取って替われるだけの力を身に付ける事だな。」 #twnovel

2014-07-13 23:15:00
リュカ @ryuka511

「勝負あったな。」魔王の放つ火球が勇者を包む。末路を見届ける事無く魔王は居室に戻り祝杯をあげた。だが数時間後、側近が血相を変え勇者の襲撃を告げる。「お前生きていたのか!」勇者は悲しげに首を振った。「僕はお前を倒すまで死ぬ事を許されないんだ。」 #twnovel #twnvday

2014-07-14 23:46:10
リュカ @ryuka511

「お前生きてたのか!」真っ青な顔で震える仇敵に青年は笑う。「10年は長かったぞ。遥か彼方の流刑地からお前に復讐する為に戻ってきた。」「仕方無かったんだ、許してくれ!」情けなく震える仇敵の姿に青年は10年の時を思い落胆する。復讐したいのはこんな腑抜けではないのに。 #twnovel

2014-07-16 00:09:10
リュカ @ryuka511

ケンカして飛び出して行った君を追いかけもせず朝のニュースを眺めていた。いつも冷静なキャスターが「今日世界が滅びます」と慌てふためいている。馬鹿らしいと珈琲を啜っていると、救急車がサイレンを響かせた。君が帰って来なくなったその日は僕にとって世界で最後の朝となった。 #twnovel

2014-07-16 23:57:43
リュカ @ryuka511

城内にある王族専用の教会で務めを果たす事は、多くの聖職者の憧れだった。だが、王族の懺悔を聞くべく告解室で待機する神官長は溜息を吐く。彼らの懺悔は城下を騒がす醜聞であり、それを漏らさぬ為、神官達城下へは帰れない。いずれ重い王族の秘密に耐えかねる者が出るだろう。 #twnovel

2014-07-17 23:54:59
リュカ @ryuka511

世界中の秘宝を集めた探検家はメイド・イン・ヘブンの林檎を求め旅をしていた。食べてしまうのは勿体無い。上手く行けば大儲けが出来るぞ。まだ見ぬ極上の林檎と商売を夢想すると足元への注意が逸れ崖を真っ逆さまに落下した。ヘブンで彼はメイド・イン・ヘブンの林檎を手に入れた。 #twnovel

2014-07-19 00:36:31
リュカ @ryuka511

流浪する旅人は世界の終焉を望んだ。世界を巡り幾つもの文明や王朝の滅びを見たが、世界そのものに終わりは無いと知る。それでも旅人はいつまでもいつまでも終焉に焦がれ、砂漠の砂へと変わってしまった。旅人の希求を飲み込み砂漠は静かに広がっていく。 #世界もう滅ぼしたい協会 #twnovel

2014-07-20 00:04:54
リュカ @ryuka511

電車で本を読む少女は停車した駅名に慌てて電車を降りた。階段を上がる途中、目つきの鋭い青年に呼ばれ飛び上がる。「この財布あんたのだろ? 」礼を言う間も無く電車の去ったホームへ戻る青年に深々と頭を下げながら、一瞬和らいだ青年の目にどぎまぎしていた。 #駅中ロマンチカ #twnovel

2014-07-20 22:40:40
リュカ @ryuka511

私を死の眠りから呼び起こすのは誰だ。欲にまみれて我が力を欲するのは誰だ。私を蘇らせるなど許さぬ。甘き我が死を返しておくれ。永遠の如く永き生を終え、ようやく先に逝ってしまった愛しい人の元へ逝けたのだ。我らの、真に永遠の愛を邪魔するというのなら、容赦せぬ。 #twnovel

2014-07-21 22:51:53
リュカ @ryuka511

「ごめんなさい。」別れを切り出し彼女は涙を零す。資産家の息子と婚約した君。僕じゃ君の望む幸福は得られないのは事実だ。君の不幸を願う事に意味は無いだろう。僕の思う幸福と君のそれは違うのだから。せめて「お幸せに」と嘘八百。「ありがとう。」と笑う君に僕の胸は痛まない。 #twnovel

2014-07-22 22:58:34
リュカ @ryuka511

救いたいんだ、すべてを。魔王の闇に絶望する人々を、魔物に怯える人々を、救おうとした。だが旅先で見たのは下級の魔物から金品を強奪し、闇さえ利用して悪どく生きる人間の姿。救いたかったのはこれじゃない。勇者になろうとした少年は、後に魔王の右腕として世界に名を轟かせる。 #twnovel

2014-07-23 23:52:49
リュカ @ryuka511

商人が城へ納めた武具を確認しながら老武官は溜息を吐く。即位したばかりの若き王は軍の強化に力を注ぎ、武器商人専用の商館まで用意した。「勢力を増しつつある蛮族に備える為」と言う王の言葉は本当なのか。「国を守るには武力しか無いのですか?」彼の問いは夕闇に消えた。 #twnovel

2014-07-24 23:24:28
リュカ @ryuka511

政略結婚を阻止すべく令嬢は恋人に狂言誘拐を持ちかける。ドラマチックな誘拐劇の果てに彼は令嬢の命の恩人として屋敷に迎えられるはずだった。だが約束の場所に彼は来ない。怖気付いたか、本気ではなかったか。失意のまま彼女は縁談を受け入れ、それなりに幸せに暮らしたという。 #twnovel

2014-07-26 08:54:00
リュカ @ryuka511

球場を埋めた観客の中から、君の眼差しを確かに感じる。この試合に勝ったら告白するんだと秘かに決めていた。炎天下から声援をくれる君を、裏切る訳にはいかない。最後の夏、9回裏。球場中の視線が集まる。白いアルプススタンドへ吸い込まれるボールを見送る。僕は、#夏色デイズ #twnovel

2014-07-26 23:16:25
リュカ @ryuka511

君を欲し無理矢理に吸血した。神に仕える君の血が私の血と戦っているのだろうか。仲間に引き入れれば容易いと思ったのに、そんなにも私を拒むのか。眠る君の赤い頬が生きていると伝える夜。だが生きているなら、その美しい瞳に睨まれきっぱり拒絶されていた時の方がまだましだった。 #twnovel

2014-07-28 07:22:45
リュカ @ryuka511

涙しない悪魔の眼球は干からびるかって? 面白い事を聞く。なら眼球が干からびた悪魔を見た事あるかい? 無いだろう? どうやって俺達が眼球の潤いを保ってるかって? 簡単な事さ、ほら。悪魔だって涙を流す事くらい出来るのさ。嘘泣きじゃないかって? 人間の得意技だろうが。 #twnovel

2014-07-28 23:00:25