元関脇 竹乃節によるACECOMBAT04論 その7

シリーズの各作品において、グラフィックや表現から来るリアルさと、劇中で行われている物語や挙動のカジュアルさをどうバランスしているかについて取り上げます。
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グラフィックなどからくるリアリティと、フライトシューティングであるがゆえのカジュアルさの乖離

元関脇 竹乃節 @take_no_fushi

エースコンバットは今更説明するまでもなく、フライトシミュレーションではなくフライトシューティングである。現代戦ではそう発生しないドッグファイトが平然と起きる。 そのことも含め、ゲーム的な取捨選択に関して、シリーズの各作品ではそれぞれの方法で違和感を減らすための努力がなされてきた。

2015-12-19 14:32:21

黎明期の解決法 〜マグナムセイバーにのせて〜

元関脇 竹乃節 @take_no_fushi

まず初代エースコンバットでは、当時の目から見ても「リアル」とは言いがたいグラフィックであるが故に、現実の戦争を舞台に物語を展開するには当初から無理があった。 そのことに対する回答は、「すべてをカジュアルにしてしまうこと」である。

2015-12-19 14:32:28
元関脇 竹乃節 @take_no_fushi

初代は、世界観は架空の大陸、国家間の戦争から距離感をおいた「クーデター」という設定、音楽も基本的にノリノリのロック、そしてなにより、「マグナムセイバー(ミニ四駆)」とも揶揄されるド派手なカラーを用いることで、このゲームがフライトシムではないことを強調していた。

2015-12-19 14:32:39
元関脇 竹乃節 @take_no_fushi

参照:エースコンバット初代のカラーとマグナムセイバー pic.twitter.com/xoaMfqUIYD

2015-12-19 15:46:55
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元関脇 竹乃節 @take_no_fushi

ただし、このゲームがナムコにとって初のコンシューマ向けフライトシューティングであるが故、(エアーコンバットでの経験はあるものの)試行錯誤の段階にあったのは間違いない。

2015-12-19 14:32:47
元関脇 竹乃節 @take_no_fushi

「自機が撃墜されると残機が減り、0になるとゲームオーバー」という設定は2Dシューティングを彷彿とさせるものの、ゲーム的にはセーブ・ロードを挟むことで回避できるため、実質的には単に面倒になるだけのペナルティだった。そのため残機制は2以降では削除されている。

2015-12-19 14:32:58
元関脇 竹乃節 @take_no_fushi

2になって、グラフィックが多少リアルになったものの、まだ「劇的にリアル」というレベルには至っていなかったため、初代から2へ移行する際には「架空の大陸、クーデターという設定、ノリノリなロック」という要素は継承された。

2015-12-19 14:33:11
元関脇 竹乃節 @take_no_fushi

ただし、多少リアルになったグラフィックと、そのままでは「フラシューというよりむしろ2Dシュー的」ですらあるミニ四駆色は改められ、「スカーフェイス」を模したタトゥーのようなデザインという「ほどほどな嘘くささ」に置き換えられた。

2015-12-19 14:33:17

3の陣営別カラーのトーンが違う理由

元関脇 竹乃節 @take_no_fushi

一方3では、PS初代では最高とも言えるグラフィックを手に入れ、これまでと若干違うアプローチがなされた。 依然として国家間戦争の表現は見送られが、レトロフューチャーSF的な世界観と「企業間紛争」というスタイルが持ち込まれ、「地に足のついた嘘くささ」という絶妙な距離感を獲得している。

2015-12-19 14:33:26
元関脇 竹乃節 @take_no_fushi

加えて重要なのは、エースコンバットに物語性と人格を持った登場人物、そして明確なイデオロギーを持った組織同士の対立が持ち込まれたことである。そしてこのことこそが、機体のカラーリング決定に大きく関わっている。

2015-12-19 14:33:35
元関脇 竹乃節 @take_no_fushi

旧時代の生き残りの「法の番人(ただし張り子の虎)」たるUPEOは、ほとんどの機体で統一された制服のようなカラーリング、保守的な体制のゼネラルは実在機に寄り添ったカラーリング、科学の申し子のようなニューコムはまるでデザインコンセプトから抜け出したような個性的なカラーリングだ。

2015-12-19 14:33:41
元関脇 竹乃節 @take_no_fushi

そして世界を変革しようとする集団であるウロボロスは、自分の色に世界を染め上げようとするかのごとき黒を身に纏っている。陣営が持っている思想を機体のビジュアルで表現しようとする試みは、エースコンバットでは3がその頂点に至っている。

2015-12-19 14:33:51
元関脇 竹乃節 @take_no_fushi

そのことを考えると、UPEOの最終機であるSu-43がほぼ黒ずくめなのは、もはやパークの私兵となったことを示しているのか、それとも実機の黒さを踏襲したのか、非常に興味深いところではある。

2015-12-19 14:33:58

04での国家間戦争への移行

元関脇 竹乃節 @take_no_fushi

そしてついにエースコンバットシリーズはPS2という新たなステージを手に入れた。当時としては最高峰を誇るグラフィックで描かれた新たな作品は、トレイラーに「これはひょっとして実写ではないのか」とわたくしに思わせる部分があるほどの力を見せた。

2015-12-19 14:34:15
元関脇 竹乃節 @take_no_fushi

こうなると問題になるのは、グラフィックの面ではもう嘘をつくのが困難だと言う点である。この問題に際して、ついにエースコンバットは抜本的な変革に取り組んだ。ついに「国家間戦争」を題材にしたのである。逆に言うと、エースコンバットは「クーデターと言う便利な嘘の題材」から追い出された。

2015-12-19 14:34:23
元関脇 竹乃節 @take_no_fushi

そしてそれに合わせ、ビジュアルコンセプトにおいても、戦闘機のカラーリングは基本的に実機に則したものがメインに置き換わった。 であるにも関わらず、エースコンバットがフライトシューティングであるが故に、やはりゲームの主軸はドッグファイトであり続けた。

2015-12-19 14:34:30
元関脇 竹乃節 @take_no_fushi

このことはグラフィックとビジュアルコンセプトに対し、ゲーム性(実際にやっていること)が大きく乖離する原因になっている。 その問題に対し、エースコンバット04では複数のアプローチでその温度差を解消、ないしは活用しようとしている。

2015-12-19 14:34:38

04の方法論 〜ゲーム性側からの吸引力〜

元関脇 竹乃節 @take_no_fushi

まず娯楽としてのゲーム側からのアプローチである。徹底的に挙動を煮詰め、ドッグファイトが楽しくなる、特にガンキルが楽しくなるよう機動性のバランスを調整し、ゲームとしてドッグファイトが必要不可欠となるよう調整している。(ただしこの辺はプレイヤーの技量によって感じ方が異なる)

2015-12-19 14:34:44
元関脇 竹乃節 @take_no_fushi

また、フライトシューティングでありながら、初代や2よりも挙動を重めで慣性の残ったものに調整することで、「リアルなグラフィックの飛行機がやたらカジュアルに動く」ことによって発生する、「シリアスな笑い」を避けている。

2015-12-19 14:34:56
元関脇 竹乃節 @take_no_fushi

ちなみに、3の挙動は04よりも更にリアルよりに調整されているのだが、それにはきちんと理由が存在する。ストーリー後半のネタバレにつながるので言明は避けるが、「まだ3の人類は『現実』と『虚構』でいうと『現実』の側にいる」ということの肉付けのためである。

2015-12-19 14:35:19