雑考#3:アニメ「フラクタル」が描こうとしていること。

山本寛監督の最新作「フラクタル」について少し考えてみました。 同じ冒険活劇ものである「天空の城ラピュタ」や「ふしぎの海のナディア」と比較して「フラクタル」が現代に何を描こうとしてるのかを思いつくがままに。 結果としてはヤマカン、超本気なんだなと。 続きを読む
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テリー・ライス @terry_rice88

フラクタル2話視聴。あれだなあ、実感を伴わないコミュニケーションや経験じゃなくて、体感をもって経験するって言うごく当たり前のことを書いているように思える。でも、世界観的に二度三度捻ってる印象があるかなあ。

2011-01-21 08:32:32
テリー・ライス @terry_rice88

クレインはパズーじゃないし、ジャンでもない、ましてやシンジじゃない。いや、シンジ的要素を持ったキャラではあるんでしょうし、古い機械好き、というのも前述の二人からの影響は見て取れるんですが。重要なのは彼がデジタル世代でアナログな経験が一切ない人間と言うことなんだと思います。

2011-01-21 08:36:04
テリー・ライス @terry_rice88

「最近の若いアニメーターは絶対的に実体験が少ない、火がどう揺らめくのかと言う表現一つ取ってみても、火を起こすことから始めないといけないし、温度による揺らぎなど、複雑に事象が絡まっているから、何事も経験が大事である」、というような事を宮崎駿が新聞かなにかで言っていた記憶があります。

2011-01-21 08:42:23
テリー・ライス @terry_rice88

この発言がフラクタル全体の世界観に掛かってきそうな気がします。ネットワークが完全整備されてしまって、「情報」と言う形でしか「経験」や「体験」を得られない状況になった世界。ようは知識ばかりの頭でっかちな人間が大半を占める世界。

2011-01-21 08:46:29
テリー・ライス @terry_rice88

つまりラピュタに見られる工場で働く光景と言うのは絶対にフラクタルではあり得ない光景。産業で言えば第二次産業(工業など)中心世界がラピュタで第四次産業(情報通信業など)が中心世界がフラクタル。簡単に言ってしまえばデジタルとアナログ。

2011-01-21 08:51:29
テリー・ライス @terry_rice88

もっと言ってしまうと情報弱者の世界と情報強者の世界の違いではないでしょうか。パズーはラピュタと言うあるかどうかも分からない空中都市にロマンと夢を感じてるわけですがクレインはそういうのがあるかどうか調べられちゃう世界の中で生きていて、実際ないって事を知っちゃって冷めてる感じ。

2011-01-21 08:55:35
テリー・ライス @terry_rice88

ジャンはこの二人の中間にいる感じ。ロマンと夢と希望があるけど、実際はこうなんだよね、分かってたんだ。けど、知りたくなかった、分かりたくなかった。でも昔の自分には戻れない。知ってしまったから。と言う印象。

2011-01-21 08:59:16
テリー・ライス @terry_rice88

ジャンのこういった煮え切らなさが、絶望と言う形で現れたのがシンジなんじゃないのかなあという解釈をしてます。決断しなくちゃいけないのは自分のはずなのに。

2011-01-21 09:09:00
テリー・ライス @terry_rice88

対してクレインはそもそも知識として世界の情勢と言うのを知っているから、パズーのような夢とロマンはないし、ジャンのような煮え切らなさは存在しない。ここが非常に現代風。あえて言葉を使うなら「ゆとり世代」なんだろうと言う気がします。

2011-01-21 09:12:34
テリー・ライス @terry_rice88

けど三人共に共通してる点もある。それがヒロインに一目惚れするところ。パズーはシータを「守りたい」、ジャンはナディアと共に「歩みたい」、クレインはフリュネにもう一度「会いたい」。それぞれ女性の捉え方も興味深いかなあと。クレインの時点になると、性別云々かんぬんと言うより他者って感じが

2011-01-21 09:17:27
テリー・ライス @terry_rice88

とはいえ、フラクタルの中でネッサがどんな存在なのかがまだ明らかになってないのでヒロイン関係についてはなんともいえないところはあります。ありますが女性=他者のラインは崩さない気がします。ネッサに関してはクレインとフリュネの子供みたいな印象なんですが果たして。

2011-01-21 09:20:12
テリー・ライス @terry_rice88

あとジャンとパズーには家族と言う存在が希薄なのに対して、クレインは家族が存在すると言うのも興味深い。ただ存在するけど、家族と言う関係性においてはかなり希薄かなとは思います。ドッペルが擬似人格で本人は別の場所に存在してる、と言う関係性はいないのとほぼ同然だと思います。

2011-01-21 09:24:42
テリー・ライス @terry_rice88

パズーもジャンも両親とは死別してるけど、夢とロマンを受け継いでる。クレインは両親いるけど、夢とロマンが与えられてないし、そういう触れ合いがあったかどうかも疑わしい。あの世界観では家族すらも人間関係が希薄であると言うことの一端であるのかなあと。

2011-01-21 09:27:07
テリー・ライス @terry_rice88

となるとクレインは自分で夢とロマンを捜さなければならないって事にもなるんじゃないのかなと。その上で、家族を作るんじゃないかなあと言う想像が浮かびます。まだどうなるかわからないですけど。

2011-01-21 09:28:56
テリー・ライス @terry_rice88

で、ここからが重要。今まで話してきたことを踏まえて、推察するに現実でアナログからデジタルに移行する段階で失われたものはアニメの表現の中でも失われてるんじゃないか。という考えがあって、フラクタルが描かれているようにも見えるんですよね。

2011-01-21 09:33:02
テリー・ライス @terry_rice88

ラピュタのようなアクション活劇もナディアのような海洋活劇も、今のアニメ界では表現が不可能だ。京アニなどが近年、注力してきた日常系表現に寄るばかりで身近な経験しかもう描けなくなっちゃってるんじゃなかろうか。

2011-01-21 09:36:33
テリー・ライス @terry_rice88

ヤマカンが感じてる危機感ってそういうことなのじゃないかなあと。京アニでハルヒの演出やらきすたの5話まで、京アニ離脱してからかんなぎを監督したからこそかなりの危機感を抱いて、フラクタルに立ち向かっていそう。

2011-01-21 09:39:44
テリー・ライス @terry_rice88

でも、自分もそういうことに注力してきた張本人でありいわば共犯者であるから、「ここがスタートだ」って気概を背負ってるんじゃないのかなあと。フラクタルの序盤が比較的穏やかで静かなのも、彼の手がけてきた日常系演出を切り口としてるからなんではないのかなと。

2011-01-21 09:42:18
テリー・ライス @terry_rice88

RPG的に言えば、クレインもヤマカンもLv.5辺りで装備が「ひのきのぼう、かわのふく、かわのぼうし」で呪文が少し使えるくらいの普通の人間から始まっているような感じ。ラピュタのステータスが戦士あるいは武道家で、ナディアが魔法使いや賢者だとするとマイナスからのスタートなのかもしれない

2011-01-21 09:45:33
テリー・ライス @terry_rice88

それでもやらなきゃいけないって感じなんでしょうね。もうそこまでレベルが落ちていると思っちゃうと、ここで踏ん張らないと滅んでしまう。というのが件の引退宣言にまで至ってるんではないのかなあと。

2011-01-21 09:47:48
テリー・ライス @terry_rice88

まあ、ヤマカン的には超が十個付くくらい本気なんだろうなと。まだ始まったばかりだけど、全部終わって全11話を通して見れば、一本の話で面白いって事に成ってればいいんですけども。今のところ長い映画の序盤しか見てない感じがします。ただ期待はしてるんですけどねえ。

2011-01-21 09:52:11
テリー・ライス @terry_rice88

個人的には判断を下すのはまだ早いかなあと。ただ情報の流れが10年、20年前、いや、5年前、あるいは2、3年前と比べても異様に早くなってるので、それにフラクタルが耐えられうる作品なのかと言われるとやっぱり不安だなあと

2011-01-21 09:55:12
テリー・ライス @terry_rice88

おそらくは作品の中でもテーマにしてるように、フラクタルの敵もヤマカンの敵も「情報と知識」なのではないかと。アニメや漫画が「教養」になりうるのかと言う問題を多分に含んだ作品ではなかろうかと。と考えると原作に東浩紀がいるのも頷けるかなあと。

2011-01-21 10:05:13
テリー・ライス @terry_rice88

結果がどうなるかはまだ先のことですが、面白くなることを期待しつつ、本稿を締めようと思います。では、お疲れ様でした。

2011-01-21 10:12:20