#お好み焼き屋浜風　磯風とポッキーゲーム編【艦これSS】

紅吏珠名 @chrishna_c2

「今日はポッキーの日だと聞いて、ポッキーとやらを見よう見まねで自作してみたぞ」 「磯風は帰って、どうぞ」 #お好み焼き屋浜風

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「……聞くだけ野暮だと分かってはいるのですが。あえて後学のために、この物体の製法をお尋ねしてもよろしいでしょうか」 「おぉそうか。この姉から料理の極意を学びたいというのだな。感心感心」 「いえ、そんな気は毛頭ありませんが」 #お好み焼き屋浜風

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「ここに、百円ショップとやらで特売だったので買ってきたパスタがある」 百円ショップで特売……？ 「これを鉄板の上にパラパラと並べて、ヘラを上手に使って、炒る」 パスタを、炒る……？ #お好み焼き屋浜風

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「これにゴマ油を引いてサッと焼きあげ、綺麗な焦げ目がついたところで、まな板にあげて包丁で丁度いい長さに切りそろえて……」 もう結構です。あえて訊ねてみた私がどうかしていました。 #お好み焼き屋浜風

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「食べ物にモザイク処理がかかっているなんて。発禁扱いにでもするつもりですか？」 「むしろ名誉なことじゃないか。常に新たな可能性に挑戦し続けることこそ料理人としての本懐、真骨頂だと思うぞ私は。うむうむ」 さっきから何を言ってるんでしょうね。この磯風は。 #お好み焼き屋浜風

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「安心しろ。食品衛生法的には適法だ。大丈夫だ問題ない」 「それが問題なんです。そんなブラック食品ですと言いたげな物言いを。あと、ちゃんと私の目を見て」 「いや、あの、そのな。お前のジト目が眩しすぎて、照れる」 「じーっ」 「う……」 じーっ。 「ううううう」 #お好み焼き屋浜風

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「料理の基本もろくにできてないのに、いきなり創作料理に挑戦しようなんて無謀にもほどがあります」 「ふ……谷風にできて、この磯風にできないことなどありはしない」 「あの子は特別なんです。適当に材料いれて適当に調理したらなぜか美味しいものができあがるという」 #お好み焼き屋浜風

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「普通は年月をかけて蓄積した経験と知識をもとに、自分の料理を構築するわけですが、あの子は何故かそういった過程を１からすっ飛ばしてしまえるんです」 「ふむ……この磯風にも谷風ほどの料理の才能が備わっていればな」 「あれは才能じゃなくて、よくわからない何かです」 #お好み焼き屋浜風

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「それはそうと、私とポッキーゲームしよう。安心しろ。サンプルとして、そこのゆ〇タウンで買ってきた代物だ。巷でそういうのが流行っているそうじゃないか。我々もその流れに乗らなければ損だ」 「やれやれ仕方ないですね。もう」 #お好み焼き屋浜風

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むぐ、むぐ。 途中で折ってしまわないように丁寧に、磯風と少しづつ距離を詰めながら、お菓子を口に含んでいきます。 これがポッキーゲーム……。 なんでしょう。なんだか変な気持ちになってしまいます。 間近に感じる磯風の吐息と体温が、そうさせるのでしょうか。 #お好み焼き屋浜風

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……。あ、なんだか、癖になる、かも？ #お好み焼き屋浜風

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「ぷはー。なかなかいい味わいだったぞ浜風。こんなに素晴らしい妹をもてて幸せ者だ」 お粗末さまでした。市販品はやっぱり安定感のある作り方をしていますね。コクがあってほどよいチョコレートの甘みと全粒粉のフレーバーが口の中に溶けあうように広がって。 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

「だが肝心のキスの直前でおあずけはないだろう。あんまりだ」 チキンレースの要領です。相手が折れそうなギリギリを見て取って、舵を切る。単純にそのタイミングの見極め方の問題です。 「もう一度ポッキーゲームだ。今度こそキスしようそうしよう」 「い、や、で、す」 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

「いいじゃないか浜風。ふふ、上の口はこんなに正直じゃないか」 「はいはい磯風。口元から垂れたよだれはちゃんと拭きましょうね」 「この磯風を子供扱いしてもらっては困るな。まったく」 #お好み焼き屋浜風

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「頼モウ」 そんなこんなで。磯風がぶーたれながら私に無理矢理キスをせがんでいるその時でした。 空母ヲ級さんが、まるで道場破りにやってきたかのような口ぶりでお店にやってきたのです。 #お好み焼き屋浜風

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「今日ノ警備網ハ　中々骨ガ折レタ　そアノ夜戦女ガ　手ゴワカッタ」 ああ。さっきから鎮守府の警報アラートが鳴りやまなかったのはそのせいだったんですね。 #お好み焼き屋浜風

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「おい浜風。奴は深海棲艦だぞ。武器をとって応戦しなくていいのか」 「大丈夫です。この方はうちのお客さんです」 …………。磯風に事情を説明している間に。ヲ級さんはカウンター前の席を陣取り、お冷をぐいぐい飲み始めていました。 #お好み焼き屋浜風

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「デハ今日ハ　コレヲ　イタダク」 「それは姉の試作品で、とても食べられるような代物では……」 「構ワナイ」 言って彼女が指さしたのは、さきほど磯風が作ってきた名状しがたい物体。よく見ると、ほんのり光を発しているように見えるのは気のせいでしょうか。 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

「ハムハムモグモグ……」 私の静止を難なく振りきり、帽子から伸びた触手を器用に使って食事をするヲ級さん、でした。 「？」 そのまま360度くるりターンを決めて。 びたーん！ 「ヲ級さん――――！？」 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

≪空母ヲ級は入渠しました≫ #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

「ヲ？　私ハ　イッタイ　何ヲ」 「よかった。気がついたんですね。ご無事でなによりです」 「ダガ　食ベタ物ノ味ハ覚エタ　アトハ　泊地二戻ッテ　同ジモノヲ試シニ作ッテミル」 「そんなことをすれば泊地が全滅しますよ」 「大丈夫ダ」 何がどう、大丈夫なのでしょうね。 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

ヲ級さんは代金代わりのサンゴの欠片をテーブルに置いて席を立つと。両手持ちした杖を突き、よろよろと身体をふらつかせながら帰っていきました。 これは、救急車を呼んでおいた方がよかったのでしょうか。 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

「磯風。あれに何を入れたんですか」 「ん、ああ。隠し味のことを言い忘れていたな。サプライズのつもりで黙っていたのだが」 磯風が料理を作ることの方が、私にとってはサプライズです。 「輸送ワ級から抽出したあの緑色の光るやつ」 なんでそんなものを――――！！？ #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

「それはそうと、さっき陽姉様とぬい姉様がここにやってきてな」 あ、いま露骨に話を逸らしましたね。 あら、お二人がいらしてたんですか。ろくにおもてなしもできずに。すぐにお茶を用意しないと。 #お好み焼き屋浜風