タワー・オブ・シーヴズ 前編

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは稲妻めいた速度で両手のスリケンを投げた。コンマ2秒の時間差で、二枚の死の星は敵ニンジャのもとへ到達する。ニンジャスレイヤーは既に床を蹴り、スリケンを弾き返す敵に真打ちの一撃を繰り出すつもりだった。だが彼は己を強いて急停止し、横に跳んだ。 1
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「ハハハハハハ!」ニンジャは哄笑した。彼の法衣は超自然めいて揺らぎ、名状しがたい色彩を放った。二枚のスリケンは背後の壁にかかった「神秘体験」のショドーの額に突き刺さっていた。二枚とも彼の身体をかすめすらしなかったのだ。まさか!ニンジャスレイヤーが投擲ミスなどと? 2
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは側転し油断なく着地。カラテを構え直す。彼は瞬時にスリケン無効を見て取り、追撃を取りやめたのだ。あのまま攻撃に出れば、何らかの致命的反撃をまともに受けていたやもしれぬ。背後の巨大ガラス窓の向こう、スモッグ越しに巨大な月が「インガオホー」と唱えた。3
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「いかなるワザで楽しませてくれるかと思いきや、スリケンとは」敵ニンジャ、サウザンドマイルの勝ち誇った声が最上階ホールに響き渡った。「今のザマでよく理解できたろう。貴様のカラテが私を傷つける事はない。だが私の攻撃は……ヌウーン!」「グワーッ!」ニンジャスレイヤーは頭を押さえ苦悶!4
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「ハッハハハハ!これが神の力だ。我が目は千里を見通す。現代社会における神とは情報の速度だよニンジャスレイヤー君。このまま狂死し、その脳髄を……」「グワーッ!」ニンジャスレイヤーは震えながら膝をつく。それでも諦めない。「ニンジャ……ニンジャ殺すべし」「イヤーッ!」「グワーッ!」5
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
ニンジャスレイヤーはよろめいた。「なぜ……攻撃が……当たらない……」「私が神の力を代弁しているからだよニンジャスレイヤー君!」「何らかの……打開策が……」「イヤーッ!」「グワーッ!」不可視の衝撃波が再びニンジャスレイヤーを襲った。ニンジャスレイヤーは吹き飛ばされ、ガラスを破砕!6
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
ニンジャスレイヤーは真っ逆さまに落下する。かろうじて上を見た彼は、割れ窓の縁に立って見下ろすサウザンドマイルの侮蔑的眼差しをニューロンに焼き付ける。敵の声が降ってくる。「ハハハハハ!楽園放逐だニンジャスレイヤー君!生きていれば、また会おう!尤も二度目は今回の百倍は難しかろう!」7
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
落ちる……落ちる!ネオサイタマの夜を!無限の光彩を淀ませる巨大な堕落の都に包まれ、落下する……この塔を……ウビナ区の低層建築物群の中、唯一つ屹立する摩天楼を!「スウーッ……ハアーッ!」ニンジャスレイヤーは落ちながら呼吸を深め、やがて手甲を打ち振った。そしてフックロープを投擲! 8
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「イヤーッ!」ガキイン!ガリガリガリガリ……フックロープは金属コーティングされた特殊な壁面に爪跡を刻む。強靭なワイヤーが伸び、落下に抗う……ニンジャスレイヤーは目を見開いた。壁面の窓のひとつが不意に開き、超震動ダガーを握ったクローンヤクザが身を乗り出し、ワイヤーを切断した! 9
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
一瞬落下をとどまったニンジャスレイヤーは再び落下を始めた。ナムサン!しかし彼は覚悟を決めた。今のブレーキめいた行動は貴重だ。これでおそらくウケミは可能だ!「イイイイヤアアーッ!」ニンジャスレイヤーは全身にカラテを漲らせる。中庭の地面が近づいた!KRAAAASH! 10
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
……「ハアーッ……ハアーッ……」やがて闇の中、ニンジャスレイヤーは指先をピクリと動かした。そして腕を。それから全身を。「イヤーッ!」彼は跳ね起きた。小クレーターめいて砕かれた地面の亀裂の中央に、彼は倒れていた。偉大なるウケミのワザが、彼を落下衝撃による爆発四散から守ったのだ。11
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彼は中庭の闇を見渡した。高垣に囲まれ、外界から斬り離された邪悪な占星術師の塔の庭を。カドマツやバンブー・ブッシュ、枯山水が築かれ、体長60センチ程度の庭師蟹ドロイドが奥ゆかしく行きかう。だがこの庭に居るのは無害な蟹だけではない。ニンジャスレイヤーはバンブーの陰に走り込んだ。 12
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
塔は強固な防衛システムで守られている。この庭もしかりだ。上空から直接、塔の屋上部に侵入することは不可能である。偏執的な対空砲システムと漢字サーチライトの運用は崩せぬ。ニンジャスレイヤーはこの夜、高垣を乗り越えて敷地に潜入、塔内部をしめやかにステルス移動して最上階に到達した。13
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
サウザンドマイルはネオサイタマの神秘社会において確たる地位を短期間のうちに築き上げた占い師だ。この「美しい啓示の塔」は彼の法人の自社ビルである。彼の占いは驚くほどに正確であり、訪れるカネモチは後を絶たず、彼自身も占いの啓示をもとにした投機行為で経済を荒らし、巨万の富を得た。14
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だがサウザンドマイルはニンジャであり、占いの力には不可思議かつおぞましいからくりがあった。彼は信者や債務者達を最上階付近の秘密の牢獄に幽閉、その命を邪悪なる儀式の糧とする事で、己の占いの力を得ているのだ!ニンジャスレイヤーは既にそれら証拠を集め、侵入手段も得ていた。だが……!15
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(すべてがうまくいった……だが、うまく行き過ぎていたか?)ニンジャスレイヤーは省みた。まさにサウザンドマイルの居室に侵入せんとしたその時、警報が鳴り響き、アンブッシュは失敗した。サウザンドマイルのジツは彼のカラテを寄せ付けず……今再び振り出しに戻されたのである。 16
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
彼は手段を吟味する。生きていればまた会おうだと?望むところだ。次は必ずカラテを叩き込む。しかしサウザンドマイルの増上慢には根拠がある。もはや塔が侵入者を受け入れる事はない。防衛システムの全てがアクティベートされたからには……。その時だ。闇を割り、一人の影が間合いに踏み込んだ。17
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
アンブッシュは成立しなかった。彼らは同時に互いの存在に気づいた。二者は睨みあい……アイサツした。「ドーモ。ニンジャスレイヤーです」ニンジャスレイヤーが先手を打ってオジギすると、相手の偉丈夫は怯まずオジギを返した。「ドーモ。ウォーペイントです」 18
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
ニンジャである。ニンジャスレイヤーは油断なくこの者の様子を窺う。香油を塗った長い乱れ髪、鋼のメンポ、上半身には革のベルト以外の何も身に着けておらず、鞘には大業物と一目でわかるツルギが収まっている。顔や屈強な肩、胸板にはケルト戦士めいた入れ墨とイクサのペイントが施されている。19
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「……貴様、この塔の者ではないな」ウォーペイントが低く言った。今にも斬りかからんとする殺気で満ちている。「ニオイでわかる。だが根本は所詮同じだ。貴様も文明人なのだからな」「……」「貴様もさては、盗みに入ったクチか」「盗みだと?」「しらばっくれるな。俺を陥れようとしても無駄だ」20
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
二者がカラテ緊張を解く事はない。ウォーペイントの肩には血管が浮き上がり、その手はツルギの柄に触れている。「黙っておれば俺を騙せるつもりでいるか?犬め。くだらん駆け引きが俺を出し抜く事はない。俺の宝のおこぼれにはあずかれんぞ!」「オヌシは……なにか考え違いをしているようだな」21
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
ニンジャスレイヤーはこの者が少なくともサウザンドマイルの関係者ではなく、なおかつアマクダリ・セクトの手の者でもないと判断した。この者には奇妙なアトモスフィアがある。焼けるような野生の熱と、氷のような殺戮者の身のこなし。そしてその風貌。ゴスやパンク、ブラックメタリストとも違う。22
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「文明とはどういう意味だ?」「貴様らが信奉する、素子や、企業、広告、そうしたものだ!この街に風の音はしない。俺の故郷のように、神は近くに無い。堕落している」男の目は厳しかった。だが正気のようだった。それが奇妙である。「オヌシは文明の外から来たというのか」「そうだ」 23
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
ニンジャスレイヤーはひとまず彼の主張は踏まえる事にした。「この塔に盗みに入ったというのか」「貴様もだろう!宝に誘蛾灯めいてつられ、」「だが、ではオヌシもその一人という事になるぞ。その誘蛾灯の何とやらの」「……それは、そうだ。だが惰弱な文明人とは違う」「私は塔の主を殺しに来た」24
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