タワー・オブ・シーヴズ 完結編

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(あらすじ:市民を拉致し、己のジツの血肉として消費する恐るべきニンジャ占い師、サウザンドマイル。彼の居城たる高層ビルに挑むは、三人のニンジャ……ニンジャスレイヤー、蛮人のウォーペイント、変身能力のフェイタルだ。ビルから締め出された彼らは壁を上って最上階に侵入した。カラテの時だ!)

2015-12-21 22:44:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはスリケンを投擲した。左右それぞれの手でコンマ数秒の時間差を作り、避けられぬ呼吸で投げたのだ。だがサウザンドマイルは高笑いし、これを避けも守りもしない!「ハハハハハ!何度やろうが同じ事だ!」スリケンが背後の「神秘体験」のショドーに突き刺さった! 1

2015-12-21 22:48:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「やはりか!」「ゴウオオオン!」フェイタルが再度の変身を行う。輝くような美女は一瞬にして白い毛皮で覆われ4つの目と鋭い牙を持つ鬼めいた姿に変わった。鋭利な爪が振り下ろされ、サウザンドマイルの身体を引き裂く。ナムサン!無傷!「イヤーッ!」ウォーペイントがツルギで斬りつける!無傷!2

2015-12-21 22:51:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「バカな。幽鬼か!」ウォーペイントの声には抑えきれぬ迷信的恐怖が滲んでいた。サウザンドマイルは哄笑でこたえた。「ハハハハハ!幽鬼などではない……我は神の代弁者なり!」「神だと!嘘をつくな!魔術師め!」「魔術師だと?よかろう、要は神の代弁者よ!」「ウオオーッ!」ツルギを振り回す!3

2015-12-21 22:55:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ウォーペイントがしゃにむに振り回すツルギはホールの調度を次々に砕き、破壊した。水盆の水が跳ね散り、観葉オーガニック植物が切り裂かれて落下した。「イヤーッ!イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはスリケンを投げた。それらは天井の監視カメラ類やスプリンクラーを破壊した。水が降り注ぐ。 4

2015-12-21 22:57:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハハハハ!いじましい努力!」サウザンドマイルが笑う。その顔をフェイタルの爪が切り裂いた。「ハハハハ!」サウザンドマイルは笑い続ける。「コシャク!これでは確かにいたずらに私達が消耗するばかりだぞ」「考えるのだ」ニンジャスレイヤーは言った。「真に無敵ならばヤクザに守らせはしない」5

2015-12-21 22:59:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」ウォーペイントが「神秘体験」のショドーを破壊!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは考えるニンジャ像を踵落としで破壊!「成る程……さてはホロ送信機の類を疑っておる」サウザンドマイルは余裕ある口振りで指摘した。「無駄な努力だ。神の力を知れ!イヤーッ!」「グワーッ!」6

2015-12-21 23:04:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

サウザンドマイルがキアイを込めると、三人は割れるような頭の痛みに襲われ、うずくまった。脳が不可視の爪で掻き回されるかのような苦痛である。「グワーッ!」「あああああ!」「堪えろ……この手のジツに経験が無いわけではない……屈すれば……ヌウーッ!」「よい眺めだ!はっきり見えるぞ!」7

2015-12-21 23:09:31
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーは血走った目を見開き、ふらつきながら起き上がった。まっすぐ立てない。彼はよろめき、壁に頭を打ち付けた。「ヌウーッ!」「邪教め!グワーッ!」ウォーペイントは己の頭を殴りつけた。「俺の頭から出てゆけ!」ツルギをパルテノン神殿風の調度柱に叩きつける! 8

2015-12-21 23:13:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「お前ら……正気を保て……」フェイタルがぜいぜいと荒い息を吐いた。「くそっ……AAAARRRGH!」サウザンドマイルに体当たりをかける!すり抜ける!KRAAAASH!壁に衝突!「グワーッ!」「ハハハハハ!」サウザンドマイルが嘲笑う!「どこを狙っておる!私はここだぞ!」 9

2015-12-21 23:16:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーはその様子を苦しげに見ていた。「ヌウウーッ!」己を強いてサウザンドマイルに向き直り、突進からの飛び蹴りを繰り出す!「イヤーッ!」「無駄だ!」すり抜ける!KRAASH!壁に衝突!「グワーッ!」ウォーペイントはそのさまを見て息を呑む。「イヤーッ!」KRAASH!10

2015-12-21 23:18:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

今やウォーペイントもツルギを捨てて素手!三人はてんてばらばらの方向へカラテを繰り出し、壁を殴り、蹴り、頭突きを食らわせる。なんたる無惨な光景か!サウザンドマイルは哄笑する!「ハハハハハ!我がジツを前に気でも触れたと見える。だが緩めてはやらぬ!イヤーッ!」「「「グワーッ!」」」11

2015-12-21 23:21:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ひときわ強烈な精神攻撃を受けた彼らは頭を押さえて床をのたうった。だが、一人また一人、屈せずに起き上がり……再び壁を殴り始めたのである!ナムアミダブツ!「ハッハハハハ!ハッハハハハ!我が神の力を前になすすべなし!ドゲザして許しを乞えニンジャスレイヤー君!しもべの者達もだ!」 12

2015-12-21 23:23:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」KRAASH!「イヤーッ!」KRAASH!「イヤーッ!」KRAASH!「ハッハハハハ!何を馬鹿な真似を!」「イヤーッ!」KRAASH!「ここ……ここだ!」フェイタルが壁にめり込んだ血塗れの拳を引き抜いた。亀裂と壁の歪みが他の箇所よりも明らかに大きい! 13

2015-12-21 23:27:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

たちまちニンジャスレイヤーとウォーペイントはフェイタルのもとへ走った。「何をしておる!無駄だぞ!」サウザンドマイルが叫んだ。「無駄だと思うならば黙って見物を続けるがいい!」ニンジャスレイヤー。「どのみち遅いがな!イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」KRAAASH!14

2015-12-21 23:34:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

三人のニンジャの渾身の打撃を受けて、壁の妙な個所はたちまち砕け散った。薄暗い通路がその先に続いている!「ハアーッ……よくぞ私の打開策を見て取った」ニンジャスレイヤーは意識を保とうと努めながら、ほかの二人を見た。ウォーペイントは頷いた。「俺は文明人の失った以心伝心に長けるのだ」15

2015-12-21 23:38:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「人聞きの悪い!私は文明人をこれっぽっちも捨てていないぞ」フェイタルが言った。三人はふらつきながら通路を進み始めた。ニンジャスレイヤーはサウザンドマイルの「見えている」という言葉を聞き逃しはしなかった。彼が実際にあの不死身存在そのものならば、見えているなどと言う必要はない。16

2015-12-21 23:44:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

恐らくこのホールとは別の場所……それも、相当近くにサウザンドマイルの本体がある。最上階に本体が無いのであれば、塔の下階を守らせ、上がってこようとするニンジャスレイヤー達を遠ざける必要もないからだ。不死身のサウザンドマイルはカラテ攻撃を一度も行わなかった。つまり実体ではない。17

2015-12-21 23:48:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーはまず調度類を破壊し、手がかりを得ようと努めた。そのうえで、彼が更なる打開策のインスピレーションを得たのは、フェイタルの偶然の壁への衝突だ。あの時壁に亀裂が生じたさまを見て、ニンジャスレイヤーは壁へ攻撃して隠し通路の類いを発見する事を考えた。 18

2015-12-21 23:53:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

建物の外観から、ホールがあれだけ広ければ、完全に隔離された開かずの別室などは持ちようがないことがわかっていた。一つ下の階の構造を、ニンジャスレイヤーは把握している。彼が大窓から一度落される前に、まず塔の内部を上って行ったという事を忘れてはならない。 19

2015-12-21 23:56:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

隠し通路の発見をほかの二人にあからさまに指示することははばかられた。サウザンドマイルの力の全貌が完全にはわからぬ以上、はっきりと説明すれば警戒され、何らかの妨害を受ける可能性がある。そうなれば手詰まりだ。だがウォーペイントとフェイタルは行動を察し、無言のままに彼に従った。 20

2015-12-22 00:00:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

かくして彼らはサウザンドマイルの隠蔽を破り、今、秘密通路を突き進む!「ヤメロ!やめるのだ!」サウザンドマイルの狼狽した声が反響した。「イヤーッ!」「「「グワーッ!」」」再びの精神攻撃だ!だが今や目指すべき場所ははっきりと示されている。耐え抜き、前へ進むのみだ! 21

2015-12-22 00:04:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「「「グワーッ!」」」彼らはよろめき、壁に手を突き、しかし着実に進んだ。やがて目の前に鉄製カンノン扉が現れた。「イヤーッ!」ウォーペイントはツルギを差し込み、テコの原理でこじ開ける!「イイイイヤアアーッ!」ズズウウウム……彼らは秘密の部屋にエントリーした! 22

2015-12-22 00:06:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そこはごく狭い、四角い部屋だった。しかし左右の壁沿いの棚にあるのは、身の毛もよだつ品物だった。ガラスシリンダーは薄茶の液体で満たされ、そこには……ナムアミダブツ……摘出されたむき出しの脳髄が一つずつ納められているのだ。フェイタルは顔をしかめた。だがサウザンドマイルの姿は無い。23

2015-12-22 00:10:10