オカルト探偵あきつ丸 -わだつみの血-

竹村京さん(@kyou_takemura)の書いてくださった、落ちぬい二次のオカルト探偵あきつ丸シリーズです。 今回はあきつ丸こと岡野さんの恋話? ダークオリエンタルファンタジーな世界観を是非ご堪能くださいませ! 続きを読む
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はじめに

竹村京 @kyou_takemura

#落ちぬい二次 、はじまります。本作は #不知火に落ち度はない 及び #人造人間あきつ丸 の二次創作であり、オフィシャルではありません。意見、指摘などは #落ちぬい タグでお願いします

2015-12-23 23:24:19

本編

竹村京 @kyou_takemura

オカルト探偵あきつ丸 -わだつみの血- #落ちぬい二次

2015-12-23 23:24:51
竹村京 @kyou_takemura

冬の、肌寒くも清々しく晴れた日の午後。広大な日本庭園には二人の男女がいた。女は黒髪をおかっぱに切り揃えた黒づくめ。男はグレーの薄手のコートを来た快活そうな若者だ。#落ちぬい二次

2015-12-23 23:25:38
竹村京 @kyou_takemura

夏のある日、海水浴をしていて溺れた彼女――岡野瑞穂の姪を助けたのがこの男、ライフセーバーをしていた深井勇次だった。#落ちぬい二次

2015-12-23 23:26:59
竹村京 @kyou_takemura

それをきっかけに岡野と深井は交際を始めた。岡野は深井の逞しさと優しさに惹かれたといい、深井は岡野の日本人形のような美しさと細かなところまで気が付く心遣いに惹かれたという。#落ちぬい二次

2015-12-23 23:28:07
竹村京 @kyou_takemura

出会いから数か月経った今では週末ごとにどこかへ遊びに行く仲にまでなっている。とはいえ、二人とも性分なのかお互いに敬語のままという少し微妙な関係である。#落ちぬい二次

2015-12-23 23:29:33
竹村京 @kyou_takemura

今日はかつて大名屋敷の一部だったという、公園として整備された庭園で逢瀬を重ねていた。 深井は今時の若者らしくこういった伝統的なものに疎かったが、だからこそ民俗学を専攻する岡野と過ごす時間は新鮮で、とても大切なものと思っている。#落ちぬい二次

2015-12-23 23:31:14
竹村京 @kyou_takemura

季節は既に冬になっていて、しかし雪も降っていないこの時期は緑も少なく紅葉も既に散っている。それでも、あれこれと遺構を見て回る二人は楽しそうだった。#落ちぬい二次

2015-12-23 23:32:27
竹村京 @kyou_takemura

「少し疲れてしまいました」 しばらく歩き回ってから岡野が歩みを止めて言うと、心配そうに深井が気遣う。 「あそこで少し休みますか」 深井が示したのは少し先にある茶屋風の休憩所だ。#落ちぬい二次

2015-12-23 23:34:32
竹村京 @kyou_takemura

岡野は疲れたと言っていた割に、テーブル席に座るなりさっさとメニューを開いておはぎと緑茶を二人分注文する。深井はその現金な様子に苦笑した。 「おはぎがお好きなんですか?」 「え、ええ。好きですよ」 岡野は赤面してからわざとらしく咳払いすると、仕切り直す様に口を開いた。#落ちぬい二次

2015-12-23 23:36:59
竹村京 @kyou_takemura

「深井さん、おはぎの呼び名が四つあるというのはご存知ですか?」 「四つもあるんですか? 僕はおはぎとぼたもちしか知りませんが……」 「秋は萩の花でおはぎ、春は牡丹の花でぼたもち。その他に昔は夏は夜船、冬は北窓と言ったそうです」#落ちぬい二次

2015-12-23 23:39:08
竹村京 @kyou_takemura

「夜船に北窓。それはなんとも、おいしくなさそうな」 「ふふ、そうですね。でも、おはぎの餅は普通のお餅みたいに搗かないでしょう?」 「ああ、そういえば半殺しとか言いますね」#落ちぬい二次

2015-12-23 23:41:07
竹村京 @kyou_takemura

「ペッタンペッタンと搗いた音がしない。だからいつ着いたかわからない夜の船と、月が見えない北側の窓に例えて夜船と北窓だそうです」 「なるほど、そう言われると粋な呼び名かもしれませんね」#落ちぬい二次

2015-12-23 23:42:56
竹村京 @kyou_takemura

岡野が豆知識を披露していると、おはぎと緑茶が届けられた。餡と胡麻が一つずつのものだ。 「おはぎ、もとい北窓ですね。いただきましょう」#落ちぬい二次

2015-12-23 23:45:05
竹村京 @kyou_takemura

二人は湯呑で手を温め、北窓を食べる。しかし、岡野が二つとも食べ終わっても深井は胡麻の方しか食べていなかった。にも拘らず、既に楊枝は置いていて餡子の方を食べる様子がない。 「おや、餡子はお嫌いでしたか?」#落ちぬい二次

2015-12-23 23:47:06
竹村京 @kyou_takemura

「嫌いというわけじゃないんですが、ちょっと前に饅頭を食べたらひどく体調を崩したんです。一緒に食べた友人はピンピンしていたので食中りではないはずなんですが」 「それは大変でしたね。小豆のアレルギーですか?」#落ちぬい二次

2015-12-23 23:49:15
竹村京 @kyou_takemura

「調べてみたんですが、どうも症状が違うみたいでよくわからないんです」 「食べられないものを注文してしまってすみません。何か別のものを頼みましょうか」 「いえ、胡麻の方だけで大丈夫です。よかったら餡子の方はどうぞ」#落ちぬい二次

2015-12-23 23:51:44
竹村京 @kyou_takemura

「いいんですか!ありがとうございます!」 岡野はぱっと顔を輝かせたと思えば、あっという間に北窓を口に放り込んで幸せそうに食べてしまった。 「岡野さんは本当においしそうに食べますね。僕、そういう人が好きですよ」 それを聞いた岡野はくすくすと笑い、言う。#落ちぬい二次

2015-12-23 23:54:52
竹村京 @kyou_takemura

「これでも女ですから、健啖を褒めるのはどうかと思いますよ?」 「あっ!すみません、こういう事に慣れていなくて、なかなか気のきいた台詞が出てこなくて……」#落ちぬい二次

2015-12-23 23:56:23
竹村京 @kyou_takemura

それから二人はしばらく他愛もない話をし、やがて話題は岡野が大学で専攻しているという民俗学、中でもこの地域の民話や昔話に移っていた。 「――あなたのご先祖様が、人ならざる者と契ったという話は御存知ですか」#落ちぬい二次

2015-12-23 23:59:26
竹村京 @kyou_takemura

この土地には海の者との異種婚姻譚が伝わっている。岡野が調べたところによれば、深井の家系にもその類の伝承があるらしかった。 「さあ……子供の頃に人魚を助けたとかいう昔話を聞いたような覚えはありますが」#落ちぬい二次

2015-12-24 00:00:39
竹村京 @kyou_takemura

「そうですか、ところで、ここ数年で泳ぎがかなり上達したのではありませんか」 「ええ。だからライフセーバーになったというのもありますし」 「ここしばらく、長く寝たはずなのに寝不足を感じる事はありませんか」 「……あります。月に一度か二度くらい、ものすごく眠い日が」#落ちぬい二次

2015-12-24 00:02:15
竹村京 @kyou_takemura

岡野は五月から十月までの具体的な日付を列挙する。 「その眠い日というのは、この日でありましょう」 「そんな細かくは覚えていませんよ……いや、そういえば九月と十月は確かにそのあたりの日だったと思います。居眠りして同僚に叩き起こされた覚えが」#落ちぬい二次

2015-12-24 00:05:07
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