ツイッター小説 お気に入りセレクト 2011/01/21

のおの @noz_on_tw

「かぐやや、帰らなくていいのかい。」「いいのよ。」かぐや姫はもう500年も地上にいる。なんでも月の国は飽きたそうで、そんな彼女の面倒を、不死になった竹取夫妻がみている。時は移ろい、かつての求婚者も皆死んだ。彼女はこの変化に富んだ世界がお気に入りで、未だ帰らない。　#twnovel

おぼろちゃん @oboroose

#twnovel 世界はもう終わる。ぼくは逃げまどう。不意にある男が「お前はいいよな。目を覚ませるから」と恨めしそうに言った。ここが夢であるとそのとき気付いた。同時に、目覚め方を忘れてしまった。世界の終わりが終われば朝が来るのだろうか。業火に焼かれながら、ぼくは考えている。今も。

宇宙食 @uchuusyoku

#twnovel 鯖、鯖、鯖。大漁の鯖。鯖を捌いて鯖缶にする。鯖を獲って鯖を売り、毎日鯖を喰う。鯖神社のあるお山は、魚の食べカスで出来てるって話だ。だが、沢山鯖が獲れても何故か儲からねぇ。子供らは皆んな出て行っちまった。私らが死んじまったら鯖はどうなるんだろう。明日から鯖祭りだ。

layback @laybacks

少女は窓越しに指示を出す。ゆっくりね。少女の口の動きでそれを読み取った巨人は無言で頷く。観覧車は回りはじめる。まるで巨人が福引でもしているかのように見える。やがて少女は巨人の肩に乗って帰ってゆく。満月の夜の翌朝はいつもゴンドラの座席がひとつだけ夜露に濡れていた。 #twnovel

@K_Ichida

#twnovel 世の中は醜く汚い。もうなにも見たくない。通販で「醜い世の中を見ないですむ装置」を買った。装置には爪楊枝が２本入っていた。取扱説明書…まず右手と左手に、爪楊枝をひとつずつ持ちます。次に、右手で右目、左手で左目を刺します。すると、世の中が見えなくなります。

トーリン @1thorin

#twnovel 彼女とコンビニの帰りに空を見上げたらアパートの向こうに満月が見えた。「月が綺麗だし、踊りましょうか？」悪戯っぽく微笑んで、彼女は戯けた様子で変な踊りを始めた。つられて真似したけど、恥ずかしいし、買い物袋には彼女の誕生日ケーキがあるのから、僕のは軽めのステップだ。

クリントン大西 @klinton_onishi

#twnovel 痴漢対策に、カメレオン下着発売。「光学迷彩仕様です。下着裏地の映像が表面へ投射される事によって、見事に溶け込む訳です。これで婦女子のパンツは絶対覗かれません」「……それは凄いことになってるんじゃないか？」「“下着覗き”のを防ぐ訳ですから、これでいいんです」

@candlehome

あなたはこの文章を読んでいる。ここには多量の文字があるのが解るだろうか。一軒の、小さな書店では扱いきれないほどの紙幅を使うほどの文字があるのを。そう、あなたの眼の前には鏡がある。そこに映るのは紛れもなくあなたである。　#twnovel

Tohru Ishizuka @operahaus

「目玉焼き」ある朝、目玉焼きを食べようとしたら目玉焼きが喋りだしてとまらない。よほど食べられたくないのだな、と放っておいたら目玉焼きはベーコンを食べ、レタスとトマトを食べ、そのまま消えてしまった。あわてて窓のカーテンをあけると、ちょうど満月が沈むところであった。 #twnovel

ひらばるまなぶ（平原学）＠もの書き @chocolatesity

#twnovel 魔王の目的はこの世を滅ぼすことだった。彼は憎んだ。産まれ出た頃より悪魔の血を引く者と罵り、蔑み、見捨てた世界を。だが勇者の剣で心臓を貫かれ、魔王は倒れる。死ぬ間際、彼は言った。「残念だったな、これで目的を果たした。世界は滅ぶのだ……私の中で」勇者は哀しくなった。

Shimada Yuichi @chimada

#twnovel 月の光は音になる。新月にはピアニシモ、満月にはフォルテシモ。耳を澄ませて。月光の音は大地の音と混じり合い、ひとつの交響曲を奏でている。僕たちは音楽に囲まれて生きている。

rime @prhymethyme

お父さんには1箱あげる。わりと仲のいい男子にも中の小袋を1つずつ。小学校のクラブ活動の顧問の先生と男子部員に1本ずつ。クラスの男子全員には足りなければポキポキ折ってひとかけらずつ渡せばじゅうぶんだよね。ああ何て安あがり。百均でたった1箱100円の「ポッキーを」。 #twnovel

hina @ec_hina

其の村では娘達は蜜柑の皮を剥くのが仕事だった。大抵は皆、美しく皮を剥くのだが中には手先をぐしょぐしょに濡らす者も在った。そういう娘は深い地下牢に連れて行かれ、手先を矢張り濡らしながら洒落首の中身をかき出す作業が与えられた。頭蓋は大人のも、幼児のもまちまちだった。 #twnovel

@olive_sw

犀は繊細だ。心に触れるもの全てに感動し姿すら変えてしまう。悲しい話を聞くと青い涙の形に。恋に気づくと赤い薔薇の形に。それは不都合だという事で神様は犀に固く頑丈な鎧を与えた。それ以来犀は犀の形をしているが、中はまだ繊細で、鎧の下で青くなったり赤くなったりしている。 #twnovel

丸山政也 ©︎ @masaya_maruyama

Tさんは深夜千鳥足で帰宅した。猫の額ほどの建売住宅とはいえ買ったばかりの新居である。呼び鈴を鳴らすも妻は出てこない。やがて戸は開いたが怪訝そうな声。まあ、何時だと思ってらっしゃるの？酔っていたTさんは突然妻に接吻した。よく似た造りの隣家の奥さんだったという。　#twnovel　

N.T.Works/凪司工房＠介護生活中＠脱落者 @nagi_tter

#twnovel 「デートの約束すっぽかしてパチスロ。二人で歩いてても他の女に声かけてへらへら。仕事は直ぐに辞めて、その癖いつも宝くじ当てるみたいなこと言っててさ。好きって言ってくれるのはベッドの中だけ。手料理を美味しいとも言わないの」「だったら僕が」「でもね、お前が一番だって」

140字物語 @shortshortshot

「履歴書の特技の欄には『妄想』とありますが、これは？」「はい、私妄想する事が好きなんです。辛い時でも楽しい事を妄想すれば元気になれるんです！」「ポジティブですね」「ありがとうございます。実を言うとこの会話も妄想なんです」「仕事早く見つかるといいですね」「はい…」 #twnovel

ぬこ @sakuranuko

日没の海に来た。水平線に陽が沈む、オレンジと青とが空と海に混ざり合う。ふと幼い我が子を見る。手を合わせ祈っている。太陽信仰などしていないし、そんなことを教えた事も見せた事もない。人は圧倒的な力の前に ただただ祈るしかできないことを彼は本能で悟っているのだろう。 #twnovel

八本正幸 @nekogamihakase

人間豹は飢えていた。今宵の獲物はビルの屋上から身を投げようとしていた。「やめなよ自殺は地獄行きだぜ、それより俺と極楽を見たくねえか？」人間豹の台詞に「ありがとう」と答えた女は微笑み「もっと早くあなたに出会いたかった」と言い残して宙に舞った。 #twnovel

翼 @keith_mild

#twnovel 継ぎ接ぎだらけの猫を一色に染めるのは愚かしいと判るのに、群像の事となると皆、目が曇ってしまう。槍の穂先に括り付けた旗に一体どんな意味があるのか。我々が掲げるべきは血よりも濃い知性であるはずだ。なのに、皆は白を求めて集まってしまう。本当の白なんてどこにもないのに。

高山 環 「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕（宝島社文庫）」より発売中 @Takuya11

#twnovel 「ちょっと」誰かが話しかけてきたけど辺りには誰もいない。「僕だよ君の影だよ。起業するなら君のパートナーになるよ」人手が欲しいので喜んで応じる。影はよく働き会社は急成長した。「さすが僕の影だな。仕事できるね」影は黙る。影の能力は本人の能力とは真逆な事は内緒にした。

@accoutname

#twnovel ケーキ屋に赤い髪の少女が居て、その影を追いかけているうちにいつのまにか世界が反転した。あの午前２時に僕が気まぐれをおこしたばかりに少女と薄汚い青年は目と口を封じられてデジタルの海に沈んでいった。後悔の波間から時々声が聞こえるが、もう救い出すことはできないだろう。

夕凪奏恵 @k_you_nagi

#twnovel 古い黄ばんだ封筒の表には私の名前が書いてある。たった一度だけくれた手紙を今も大切にしてる。これがきっかけでメールアドレスを交換して、電話番号を交換して、ちょっぴりゆっくりめに始まって終わったごく普通の恋。もう何も残っていないけれど、これだけは捨てられずにいる。

藍　真史 @shin1960

#twnovel 子育てに失敗した。一人娘は高校卒業前に行方不明。妻との会話にのぼることも少なくなった。娘の部屋だけはそのままにしていた。ある日帰宅するとその部屋から妻の悲鳴。駆け上がりドアを開ける。散らかった室内。妻に馬乗りになる女の子とあやす娘。隣で見知らぬ男が頭を下げた。

さー♬︎ @usagichan5

私が呼ぶと、チラッと振り返るだけのつれないキミ。聞こえてるんでしょ。聞こえないフリするのが上手いんだから。「ご飯だよー」と呼んでみる。小走りに私のところへくるキミ。ほら聞こえてるじゃん。「ちゃんと返事するのよ、わかったの！」「ニャー。」よし。カワイイから許す！ #twnovel