浜風の小さなクリスマスプレゼント

竹村京さん(@kyou_takemura)の書いてくださった、落ちぬい二次創作です。 今回は浜風のクリスマス時のお話。 ほのぼの小市民主婦な浜風の一幕と愉快な仲間の情景をお楽しみください。 続きを読む
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はじめに

竹村京 @kyou_takemura

#落ちぬい二次 、はじまります。本作は #不知火に落ち度はない の二次創作であり、オフィシャルではありません。意見、指摘などは #落ちぬい タグでお願いします

2015-12-25 23:26:34

本編

竹村京 @kyou_takemura

「浜風いるか、入るぞ!」 勢いよくドアが開かれる。部屋の主たる浜風はさて大掃除だ、とエプロンと三角巾を装着したところだった。 「なんですか、いきな……」 「出かけるぞ!」 磯風にがっちり手を掴まれ、浦風にエプロンと三角巾をはぎ取られてコートを着せられる。#落ちぬい二次

2015-12-25 23:27:22
竹村京 @kyou_takemura

「お財布持ったよ!」 勝手知ったる他人の部屋、谷風が浜風の財布とバッグを持つ。 そのままほとんど拉致同然に基地から連れ出されたのだった。 「せっかくみんな揃って非番なんだ、楽しもうじゃないか!」#落ちぬい二次

2015-12-25 23:28:32
竹村京 @kyou_takemura

と言った割に、渋谷も原宿も乗り過ごして、着いたのは某アニメ会社と某特撮スタジオのお膝元にほど近い駅前の雑居ビルである。 「ここのラーメンがおいしいんだよ!」 これである。#落ちぬい二次

2015-12-25 23:29:39
竹村京 @kyou_takemura

磯風と谷風はわざわざ高速を飛ばして名古屋までラーメンを食べに行ったというから、電車で一時間程度で済んで助かったと言えるのかもしれない。 「辛いやつならこの磯か……私が奢ろう!」 「おっ、太っ腹だねえ!じゃああたしは辛いやつ!」 「うちは普通のでええわ」#落ちぬい二次

2015-12-25 23:30:49
竹村京 @kyou_takemura

磯風、谷風、浦風はそれぞれぽちぽちと食券を買っていく。最後は浜風だ。 「里美はどうする?」 「むむ……」#落ちぬい二次

2015-12-25 23:32:14
竹村京 @kyou_takemura

辛いものはあまり得意ではない。しかし鎮守府からここまで電車賃だけで1000円以上かかっている。このラーメンを磯風に奢ってもらえば電車賃を取り戻せるという誘惑もある。 「むむむ……」 悩みに悩み、悩み抜いた末に押したのは辛いラーメンのボタンだった。#落ちぬい二次

2015-12-25 23:34:23
竹村京 @kyou_takemura

「あちゃあ……」 浦風はその浜風の判断に、やっちゃった、という顔をするのだった。 しばらく待つと店員が注文を確認する。 「こちら大変辛くなっておりますので辛さを控える事もできますが?」 「私は辛いままでいいぞ」 「あたしも」 「あ、じゃあ私は控えめでお願いします」#落ちぬい二次

2015-12-25 23:35:37
竹村京 @kyou_takemura

そしてどんぶりが運ばれる。見た目にはごく普通の、野菜たっぷりのタンメンである。 「いただきます」 浜風は一口食べるなり、 ――からっ!これで辛さ控えめ!? と目を白黒させた。#落ちぬい二次

2015-12-25 23:37:19
竹村京 @kyou_takemura

隣の谷風は平然と食べているし、その向こうの磯風は麺大盛り野菜多めに豚ごはんまで猛然と食べている。 「里美、大丈夫? うちのと交換する?」 浜風が悶絶するのを見て、浦風が小声で話しかける。だが浜風はそれを断った。 「とても魅力的な提案だけど……自分で選んだものだから」#落ちぬい二次

2015-12-25 23:38:56
竹村京 @kyou_takemura

二口目を口に運ぶ。汗がにじむ。三口目。箸は止めないがペースは遅い。 「辛いの苦手なんやし、残しちゃってええよ?」 「食べ物を粗末にしちゃだめです。全部食べます。辛いけどおいしいですし」 半ば意地である。#落ちぬい二次

2015-12-25 23:39:58
竹村京 @kyou_takemura

一口食べてはポットの冷たいジャスミン茶で口をすすぐ、という方法でどうにかこうにか完食したのは箸を付けてから30分近く経ったころだった。 「うまかった!」 「ねー!」 「おいしかったけど、里美は大丈夫?」#落ちぬい二次

2015-12-25 23:42:10
竹村京 @kyou_takemura

「酷い目に遭いました……」 「意地っ張りなんやから」 「反省してます……」 店を出て、てくてくと先頭を歩いていた谷風がふと思い出したように切り出す。#落ちぬい二次

2015-12-25 23:43:12
竹村京 @kyou_takemura

「あ、そうそうあたし実は公務外出なんだ。これからちょっと陸軍さんにおつかいに行くけど、磯風付いてくる?」 「なぜこの私が」 「あとででっかいパフェおごるよ?」 「付いて行くに決まっている」#落ちぬい二次

2015-12-25 23:44:36
竹村京 @kyou_takemura

谷風は今日は勤務日だったが、近く予定されている陸海合同訓練に関する書類を陸軍第1師団に届けるという事で外出許可を得ていたのだ。谷風は待ち合わせ場所を告げて、「じゃ、浦風あとよろしくね!」と磯風を連れてバス乗り場の方へ去って行った。#落ちぬい二次

2015-12-25 23:46:03
竹村京 @kyou_takemura

「じゃ、うちらはお買いものでもしよか」 「しめ飾りとか?」 「そーゆーんやなくて、ほら、服とか雑貨とか」 「えっと、服はあまり……」 「ええからええから。見てるだけでも楽しいから、ね?」#落ちぬい二次

2015-12-25 23:47:21
竹村京 @kyou_takemura

二人は電車に乗り、都内とも埼玉の植民地とも言われる繁華街に向かう。目的地は屋上に水族館がある商業施設だ。あまり乗り気ではなかった浜風も、いつものスーパーマーケットとはまるで違う華やかな店に少しずつ目を輝かせ始めた。 「ほら、このコート似合うと思うよ」#落ちぬい二次

2015-12-25 23:48:13
竹村京 @kyou_takemura

小さな店が多く入ったショッピングモールで、浦風は浜風にあれこれとアウターを見立てる。 ジャケットは背が小さいから似合わない、ダッフルコートは中学生に見える、モコモコした綿入りのコートは浦風に笑われた。#落ちぬい二次

2015-12-25 23:49:14
竹村京 @kyou_takemura

浦風に勧められるままあれこれ見ていた浜風も以前神通が着ていたのと似ている純白のピーコートには少しぐっと来たらしい。#落ちぬい二次

2015-12-25 23:51:14
竹村京 @kyou_takemura

だがタグを見て苦虫を噛み潰したような顔になり、ラックに戻してしまった。時期柄だいぶ値引きはされているのだが、まだ浜風の財布の紐を緩ませる事は出来なかったのだ。#落ちぬい二次

2015-12-25 23:52:03
竹村京 @kyou_takemura

「よう似合っとるのに、こればっかりは性分やねえ。仕方ないね、あっち行ってみよ」 方針転換した浦風が案内したのはドラッグストアよりは化粧品店に寄った、主にティーンズをターゲットにしているであろう店だった。#落ちぬい二次

2015-12-25 23:53:12
竹村京 @kyou_takemura

「里美は化粧っけがないけえ、これ、使ってみたらどうじゃ?」 そう言って浦風が差し出したのは色付きのリップクリームである。色はごく薄い、おそらく意識して見なければわからないくらいのものだ。#落ちぬい二次

2015-12-25 23:54:07
竹村京 @kyou_takemura

「これだけで結構違って見えるもんじゃよ」 むむ、とディスプレイされている写真を見る。確かにほんの少しの色の違いでも印象は大分違って見える気がする。 「でもこういうのって使って大丈夫なの?」#落ちぬい二次

2015-12-25 23:55:03
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