第七駆逐隊、救出作戦に突入せよ

キス島よりの伝書鳩が危急を伝える。第七駆逐隊突入せよ! 切腹の人さん(@HarakirimanEX) のツイートより
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切腹の人. @HarakirimanEX

第七駆逐隊のメンバーにも親しい人間はいる。 基地に勤めるのは軍人だけではない。地元の人間を鎮守府内に積極的に招いているのは、深海棲艦により打撃を受けた地元に対して雇用を少しでも与えようという目的と、艦娘という存在への忌避感を少しでも取り払おうという切実な願いがあった。

2015-12-23 12:12:39
切腹の人. @HarakirimanEX

艦娘。 その超常的な能力を発揮して海の勢力圏を取り戻す一方、彼女達が陸に上がればどこにでもいる女の子と変わらない存在である。そのギャップは民間人も軍属も悩ませている。どちらも彼女達の本質であり、だからこそよくある平和主義者たちも表立って艦娘の存在を糾弾することが出来なかった。

2015-12-23 12:14:39
切腹の人. @HarakirimanEX

深海棲艦出現初期に、彼らとの対話を試みた幾つもの(自称)平和団体が無残な最期を迎えた事が、皮肉な事に艦娘に対する社会的な認知を推し進める結果となった。 善良で純朴。戦うことに痛みと苦しみを自覚し、それでも守るため取り戻すために力を尽くす少女たちの姿は百万の言葉よりも雄弁であった。

2015-12-23 12:17:29
切腹の人. @HarakirimanEX

第七駆逐隊の少女達は、意外にも市民と軍属の双方から好感を持たれている稀有な存在だ。 鎮守府内の駆逐艦の中でも、比較的高い練度でまとまった部隊であること。喜怒哀楽の感情表現豊かでありながら、非常時において理性を失わずに行動できること。 その上で人間らしい感情を捨てていないこと。

2015-12-23 12:23:36
切腹の人. @HarakirimanEX

また一般的な中高生に近しい容姿を第七駆逐隊が有しているのもプラスに働いている。 神秘的あるいは威圧的なオーラを漂わせる艦娘や露出過多な衣装の艦娘達はプロマイドでこそ抜群の人気を誇っているが、実物を目の当たりにすると多くの人間は彼女達を偶像として扱ってしまうのだ。

2015-12-23 12:25:31
切腹の人. @HarakirimanEX

その点において、偽装を外してしまえばそこらの学校で見かけても不思議ではない容姿と雰囲気を持つ第七駆逐隊の彼女達は「迷子に話かけても泣かれない」「市民に触れても必要以上に怯えられることがない」といった反応で、基地内で働く市民や鎮守府周辺の市街地でも大変評判が良かった。

2015-12-23 12:27:43
切腹の人. @HarakirimanEX

「七駆の娘達と仲良くしているのを見かけたから」と市民に挨拶される軍人は意外に多い。中には家庭菜園で採れた南瓜を「作り過ぎたから」と大量の煮物を仕込んで届けに来る老婆もいる(後日それが彼女達が非番時に買い物の荷物運びを手伝った御礼だと判明した)

2015-12-23 12:30:48
切腹の人. @HarakirimanEX

軍属の目から見た第七駆逐隊は、前述のとおり個体間の練度差が小さく、そして部隊としての機動を重視した訓練を徹底した艦娘として評価されている。 単体の駆逐艦として彼女らを凌駕する艦娘は多数ある。そもそも巡洋艦や戦艦、空母が海域制圧の要となっている現状で駆逐艦の活動は限定されている。

2015-12-23 12:33:48
切腹の人. @HarakirimanEX

キス島近辺の異変を調査していた駐在部隊が消息を絶ったのは、それから間もなくの頃だ。 深海棲艦の拠点構築、あるいは自然環境の激変。予測される幾つもの可能性を鎮守府の提督麾下歴戦の軍人と艦娘達が話し合う中で、会議室に第七駆逐隊の朧が現れる。その手には傷ついた伝書鳩があった。

2015-12-23 12:42:49
切腹の人. @HarakirimanEX

キス島駐在部隊より放たれたそれを、鎮守府沖合で漁をしていた地元の漁船が発見して保護した。 漣がお守りにと漁船の船長に渡したウサギの小さなヌイグルミを味方の証拠と判断したのか、伝書鳩はそこめがけて飛び込んできたという。

2015-12-23 12:45:48
切腹の人. @HarakirimanEX

「深海棲艦ニヨル前線基地再構築ノ兆シアリ、至急支援求ム」  伝書鳩以外にキス島に電波が通じない状況で、それはもはや疑うべき状況ではなくなっていた。工廠を預かる明石が、作戦指揮を補佐する大淀が動く。  一度は攻略した海域である。その難易度が油断ならない事も分かっている。

2015-12-23 12:48:50
切腹の人. @HarakirimanEX

突破できる艦娘は大勢いる。 提督は考える。 第七駆逐隊の自主訓練記録を見る。連携を重視した水上機動、敵の殲滅ではなく突破を重視した戦い方、激しい海流で隊列を維持するための姿勢制御。 かつてキス島攻略で苦労したからこそ、また同じような海域が現れても対処できるようにという強い決意。

2015-12-23 12:56:03
切腹の人. @HarakirimanEX

「第七駆逐隊、キス島撤退作戦突入部隊として駐在部隊を救出保護せよ」  半ば無意識に出た言葉である。  だが問題ない。提督の前に、既に偽装を整えた第七駆逐隊の艦娘達がいた。たとえ支援する側だったとしても全力を尽くしたいという思いで、彼女達は作戦参加を志願しに来たようだ。

2015-12-23 13:00:12
切腹の人. @HarakirimanEX

異を唱える者はいなかった。軍属にも、艦娘にも。 かくして第七駆逐隊は、倒すためではなく救うため守るため、キス島沖へと突入した。 その結果は、語る必要もない。

2015-12-23 13:04:02
切腹の人. @HarakirimanEX

こういう感じの話が好きで悪いか(開き直り)

2015-12-23 13:10:50