年末に飛び込んだ良い報せ!日本が産んだ113番元素の話

113番の優先権がほぼ確定か、というニュースが2015年末にありました。そこから広げた113番元素合成の話です。お楽しみください。
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はじめに

こんな絵で1000RTもいただけたので、ちゃんと連ツイしようと思いました

元素学たん@イヤリング販売中 @gensogaku

さーて、いい感じに実験が終わったので、少し113番の話でもしようかしら。

2015-12-29 21:31:32
アボガド6 @avogado6

@gensogaku 合成法を復習したいです…!

2015-12-29 21:35:59
ゆうた,ⓢ @09012022910S

@gensogaku 合成法を詳しくお願いします。高速で衝突の意味が分からんもんで

2015-12-29 21:40:01

113番元素の合成計画

元素学たん@イヤリング販売中 @gensogaku

113番元素の合成は次の通り。 Zn+Bi→Uut 亜鉛原子核とビスマス原子核を衝突させることで113番元素が生み出されるね。

2015-12-29 21:42:58
元素学たん@イヤリング販売中 @gensogaku

まず一番基本的なところ。元素の原子番号は、その原子に含まれる陽子の数に等しいわけだよね。だからもちろん、113番元素の原子には陽子が113個含まれている(中性子の数はとりあえずは問わないことにする)。

2015-12-29 21:46:03
元素学たん@イヤリング販売中 @gensogaku

ということは、113番を作ろうと思ったら陽子の数の合計が113になる組み合わせの原子核をぶつけて融合させたらいいことになるね。つまりただの足し算。X+Y=113になるようなXとYの組を考えてそのふたつをぶつける。これが基本的な考え方。

2015-12-29 21:47:07
元素学たん@イヤリング販売中 @gensogaku

さて、つまりだね、113番元素を合成する方法はざっと56通りあることになるのよね。だって1+112=113だし2+111=113、3+110、4+109 …… 56+57までの56通りすべてがX+Yとして考えられるからね。どの組み合わせでも113番合成はトライできる。

2015-12-29 21:51:14
元素学たん@イヤリング販売中 @gensogaku

この56通りのなかで一番効果的なペアはどれかな?と考える。先ずひとつ考えられるのは、「XとYはできるだけ差が大きいほうがいい」。なぜなら、原子核は+の電荷を持っているから、同じぐらいの大きさの+と+は近づくと電気的反発が大きくなって融合が困難になるから。

2015-12-29 21:54:49
元素学たん@イヤリング販売中 @gensogaku

この考えでいくなら、56+57なんて論外だね。1+112が一番いいペアっぽい……と、思うんだけど。実はもうひとつ、考えなきゃいけないことがある。

2015-12-29 21:57:01
元素学たん@イヤリング販売中 @gensogaku

二つ目に考えるのは「不安定な元素は新元素合成には使いづらい」。たとえば112番元素であるコペルニシウム(Cn)の原子核はびっくりするぐらい不安定で1秒も経たないうちに原子核崩壊を起こしてしまう。こんな不安定なものを合成には使えないから、1+112というペアはちょっと厳しいね。

2015-12-29 22:00:05
元素学たん@イヤリング販売中 @gensogaku

同様に2+111なら111番元素(Rg)が不安定で使えない。3+110なら110(Ds)が、4+109なら109(Mt)が合成には使えない。元素は原子番号が大きいものほど不安定になる傾向があるから、「使える程度に安定な元素のなかで原子番号が一番大きいもの」を使いたいところだね。

2015-12-29 22:02:58
元素学たん@イヤリング販売中 @gensogaku

さてさて、じゃあ「使える程度に安定な元素の中で一番番号が大きい元素」ってなんなのかと考えると、ひとつの答えは98番元素のカリホルニウム(Cf)みたいだね。これ以上大きい番号の元素だと原子の崩壊が速すぎて使えない(櫻井博儀先生の著書による見解を参考にしました)。

2015-12-29 22:07:45
元素学たん@イヤリング販売中 @gensogaku

ただしCfが「使える程度には安定」って言っても、この元素は放射性元素だし不安定なことに変わりはないから、もし合成に成功しても生じた新元素も不安定になってうまく合成できないことがあるの。そこでもうひとつの答えとして、最後の安定元素である83番ビスマス(Bi)が挙げられる。

2015-12-29 22:10:32
元素学たん@イヤリング販売中 @gensogaku

つまり作戦として、大きく二つある。 ①放射性元素を使ってでも、出来るだけ大きな原子番号の元素を使ったほうが合成が有利だと考える作戦 ②多少小さな原子番号の元素になるけど、安定元素を使ったほうが合成が有利だと考える作戦 この作戦は両方とも有効で、一長一短といったところだね。

2015-12-29 22:14:06
元素学たん@イヤリング販売中 @gensogaku

ちなみに、作戦①による融合を「熱い核融合」、作戦②を使った融合を「冷たい核融合」と呼ぶ。こういう用語はかっこいいね!

2015-12-29 22:16:06
元素学たん@イヤリング販売中 @gensogaku

歴史的な話をすると、人工元素のうち105番(Db)元素あたりまでは主に「熱い核融合」を使って合成されてたのよね。例えば95番アメリシウム(Am)や97番カリホルニウム(Cf)は93+2、95+2というペアを使ってたから「熱い核融合」だね。あ

2015-12-29 22:21:59
元素学たん@イヤリング販売中 @gensogaku

それが106番の合成あたりから「冷たい核融合」が注目され始めて、107番ボーリウム(Bh)から112番コペルニシウム(Cn)まではずっと冷たい作戦が主流になってる(というかドイツがこの作戦メインで攻めてる)。これに倣って、113番の合成も冷たい作戦で挑んだわけだね。

2015-12-29 22:26:35
元素学たん@イヤリング販売中 @gensogaku

これを踏まえたうえでもう一度さっきの核反応式を見てみよう。 Zn+Bi→Uut Uut、つまり113番元素の合成にZnとBiを使うのは、こういった理由なんだね。合成法のおさらいになったかな?

2015-12-29 22:28:53

まとめ
・113番元素を創るには、足して113になるような二つの元素の原子核をぶつければよい
・「熱い核融合」と「冷たい核融合」、二つの作戦がある。113番元素は冷たい核融合で合成された。

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