座敷鎮守府「欧州難民船団護衛編」◆艦これSS◆その1

座敷犬さん @zash_dog による艦隊これくしょん~艦これ二次創作作品です。 - 座敷鎮守府「欧州難民船団護衛編」 - Zulu Navy District "Escape from, guardian from" 続きを読む
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座敷犬 @zash_dog

《全主砲、目標に照準、撃て(ファイア)ッ――次弾装填急げ》《エネミーハープーン!》《シースキミングか! CIWSだけじゃ間に合わない、迎撃急げッ》《全艦密集陣形! 対空網に穴を作っては駄目よ》《了解(イエスマム)! ――落ちて!》 #座敷鎮守府

2015-12-29 22:18:34
座敷犬 @zash_dog

《なんて機動性――腐っても駆逐艦ってことか》《逃げられたわね――こちらビッグスティック、モビーディックを取り逃がした》《了解だスティック、ベルチバードが発艦した。LZに向かってくれ》《……》《落ち込まないでよビッグJ、僕たちで駄目なら「彼ら」の力を借りるしかないさ》 #座敷鎮守府

2015-12-29 22:22:30
座敷犬 @zash_dog

《「ヤツら」の、ねぇ……》《行きましょう――西へ》 #座敷鎮守府

2015-12-29 22:22:50
座敷犬 @zash_dog

Zulu Naval District Escape from,guardian from #座敷鎮守府

2015-12-29 22:23:09
座敷犬 @zash_dog

ここは――船の中か。揺れる。暗い。一歩踏みしめ、嫌な感覚を靴裏で味わう。下を向く。濃い赤、血肉。これまで眠っていた感覚たちが一気に活性化する。咽返るような鉄と脂、有機の焼ける臭気。一面にぶちまけられた死体。隙かさず吐き気がやってくる。えづく――吐けない。 #座敷鎮守府

2015-12-29 22:24:51
座敷犬 @zash_dog

喉奥からやってきた唾液が意識に入ってくる。猛烈な不快感に踞る。何とか頭を上げ――数m先の生首、女の子と目が合う。「たすけて」途端に死体たちの救いを求める合唱が始まる。たすけてくれ、おねがいだ、すくってくれ。止めろ、止めてくれ。(――く)僕は助けられない。 #座敷鎮守府

2015-12-29 22:26:07
座敷犬 @zash_dog

てい――)僕には。「提督!」――ッ。見慣れた天井。覗きこむ隻眼の少女――木曾。「大丈夫か」すまない。寝過ごしたか?「いや、まだ余裕はあるさ。――酷くうなされてたぞ」だろうね、酷い夢を見たよ。「……黒木や天龍たちの事か?」あぁ、と生返事をする。寧ろアレは―― #座敷鎮守府

2015-12-29 22:29:01
座敷犬 @zash_dog

「その件で島根の奴が話があるらしい、後で行ってやってくれ」分かった。島根――ギークの大学留年生で、鎮守府の長距離通信施設で働いている。施設篭もりの彼が僕を呼び出すのであれば。簡単な身支度を整え、冷たい風の吹く人工島のデッキへと出る。向かうはデッキの端の通信棟。 #座敷鎮守府

2015-12-29 22:31:29
座敷犬 @zash_dog

狂った気候の強風に煽られながら、悪夢にかき乱された頭の中を整頓する。木曾の言った「黒木や天龍たち」、第四遠征艦隊。半年前、上層部の命令で僕が欧州に派遣した部隊だ。軽巡洋艦娘の天龍と龍田、航空巡洋艦娘の鈴谷と熊野の四隻、そして50名のスタッフを黒木翼大尉が指揮する。 #座敷鎮守府

2015-12-29 22:35:43
座敷犬 @zash_dog

誰も彼も有能で信頼の置ける者たちだ。しかし、向かったのは黒い靄に包まれ、陸海空全てのフィールドで人類の業に襲われる欧州。そこから脱出し、東へと向かう難民船団を護衛する任務は、絶望的といって良い程困難なものだった。第四遠征艦隊と、彼女らが護る船団の所在は不明となった。 #座敷鎮守府

2015-12-29 22:44:28
座敷犬 @zash_dog

スタッフの間には帰還を絶望視する声が広がったが、彼女らの無事を信じる者達の存在もあって、今では彼女らの話題を挙げる事は禁忌となっている。――着いた。トタンと木で建てられた平屋に生えた通信機器の群れは、多種多様な建造物を生やした人工島デッキにおいても異彩を放っている。 #座敷鎮守府

2015-12-29 22:49:58
座敷犬 @zash_dog

ドアを開ける。「んごおおおおおおお」ナノマシンを使ってもいびきを掛ける奴がいるとはな、島根。「! て、提督でしたか」君の徹夜の成果を聞きに来た。「そうだった、ちょっと待ってて下さいね」大柄の男が慌ただしく動き始め、掃除と無縁の長距離通信棟の一室に埃が舞う。くしゅん。 #座敷鎮守府

2015-12-29 22:52:39
座敷犬 @zash_dog

「これを」投げて渡されたヘッドホンを付け、耳を傾ける。……この砂嵐は?「あ、一昨日から今朝に掛けてパラボラが受信していた電波を音声化したものですね――きょうび『砂嵐』なんて言い方する人は珍しいな」要点を。「……ここから妨害電波やら何やらを取り除きます」 #座敷鎮守府

2015-12-29 22:55:40
座敷犬 @zash_dog

キーボードを叩き、ツマミを回し、トグルを弄る。――これは。「皆に搭載されてるのってERV35でしたよね」ビーコンの事か。端末を取り出し、艦娘に搭載されている物の型番を調べる。ERV35CA――当たりだ。「強度から見て複数――」《Attention!―― #座敷鎮守府

2015-12-29 23:02:00
座敷犬 @zash_dog

Unknown Aircraft Approaching》鎮守府データリンクに接続された端末の警告音声。輸送ヘリの輸送計画の登録忘れ――否、今日到着する機はない筈だ。「あっ話はまだ」僕の仕事の方が先だ。端末で司令室のオペレーターを呼び出す。どうなっている。 #座敷鎮守府

2015-12-29 23:09:56
座敷犬 @zash_dog

出たのは二橋中尉。司令室で数少ない女性オペレーター。《北西からの機影、機種判別完了――CV-320 バルドイーグルです》米軍制式採用のティルトローター機、僕達の使うバローの後任。《発光信号を確認、着陸許可を求めています》何故アメリカが今――許可を出してくれ。 #座敷鎮守府

2015-12-29 23:13:41
座敷犬 @zash_dog

西の空に着陸態勢に入るヘリコプターを見つける。2機。物資運搬用のエレカを一台借りて向かう――徒歩よりはマシだ。何故だ。対深海棲艦戦線に於いて専守防衛を主とし、他国の過去の清算に手出しをしてこなかった米軍が突然やってくるとは。背筋を震わせるのは寒さだけか、否。 #座敷鎮守府

2015-12-29 23:28:28
座敷犬 @zash_dog

ローターを畳んだ二機が「客」を降ろす前に、なんとか辿り着く。中からパワードスーツを纏った兵士が出てきて殺戮を始める構図が、何気なく頭に浮かんで。身構える。装甲・与圧されたハッチが開き、最初に出てきたのは――「おや提督殿、ご無沙汰でありますな」あきつ丸。 #座敷鎮守府

2015-12-29 23:37:42
座敷犬 @zash_dog

「何のつもりだ、トンボ」いつの間にか後ろには木曾が居た。殺気立っている。「まぁまぁ、そう剣呑な顔をしないで頂きたい。自分はこの方々をここまで案内しにきただけであります」苦笑し――尤も目は笑っていない――黒蜻蛉(ブラックウィドウ)が言う。彼女に続く人影、5つ。 #座敷鎮守府

2015-12-29 23:47:50
座敷犬 @zash_dog

物憂げな青年一人、女性4人。感覚で分かる――艦娘。青年の方が4人を制止し、一人此方に歩み寄ってくる。「アー……初めましてアドミラル■■■■、米海軍第77任務部隊"ピークォド"指揮官、エイハブ・キングスコートと申します」差し出された手を取る。――来訪を歓迎します。 #座敷鎮守府

2015-12-29 23:56:22
座敷犬 @zash_dog

後ろの艦娘4人が挙手礼。木曾が答礼する。その場にいたスタッフもバラバラながら――そこ、幾ら君が熱心なトレッキーでもバルカン・サルートをするんじゃない。目の前の青年が笑いを堪える。「いや失礼、本当に自由な場所だ、堅苦しくなくていい」なら良かった。 #座敷鎮守府

2015-12-30 00:05:41
座敷犬 @zash_dog

「まずは――例の物を」十数分後、僕たちは応接室でテーブルを囲んでいた。エイハブが声を掛けると艦娘らしき4人の一人――一番年上に見える女性がカプセルを両手に抱え、運んで――テーブルに置く。エイハブがエアロックを解除する。上がる液体窒素の煙――これは? #座敷鎮守府

2015-12-30 00:11:42
座敷犬 @zash_dog

「深海棲艦がBC兵器を欧米で投入している事はご存じですか?」「棄民病」、でしたか。WWII戦勝国の人間だけに罹るという。「それです――敬語でなくても構いませんよ、僕は23です」それなら。これはその治療薬か。「ワクチンです。特効薬は米軍の保有する半霊的技術ではまだ」 #座敷鎮守府

2015-12-30 00:17:07
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