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即興小説"深夜特急"「被検体」

深夜24:00から25:00の間に即興小説を連続Tweetするひとりぼっち企画「深夜特急」一年ぶりの今回は更に延長で三時間! お相手は前回に引き続き人体色彩画廊I'NNが代表中野皓作御大と三度の「交互即興」です。
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立夏◎獣の仕業 @ritsu1125
さて、まもなく即興小説「深夜特急」です。 ・22:00〜25:00まで ・@sorairoinn 中野さんとの「交互即興」 ・先攻立夏、後攻中野さん ・ノーテーマ! #深夜特急24
立夏◎獣の仕業 @ritsu1125
Twitter即興小説「深夜特急」【被験体】 報酬は38万円だった。 #深夜特急24
中野皓作@11月から伊豆 @sorairoinn
妥当な金額だと言われればそうなのかもしれない。けれど、ここからの一応【労働】と呼ばれる、おそらくは【仕事】と呼ばれるいくらかの時間を費やす対価としてはいくらか安い気もした。 私は尋ねた。 「それは前払いで? それとも全額?」 #深夜特急24
立夏◎獣の仕業 @ritsu1125
「全額だよ〜アンタバカ言わないでよ」 #深夜特急24
中野皓作@11月から伊豆 @sorairoinn
崩れ切ったような声だ。汚い顔をしているのだろう。ひょっとしたら鼻の一つでも曲がっているのかもしれない。 ああ、確かに曲がっているのだろう。顔全体をすっぽりと覆う薄紫の布の前側が妙な具合に出っ張っている。その下の露出した肌からは例の「腐臭器官」がいくつも見える。 #深夜特急24
立夏◎獣の仕業 @ritsu1125
「えぇへ、えぇへ。それともアンタなんなの。もうちょっと欲しいの。アンタ、お金に困ってんの。そんな感じするよ。」 【腐臭器官】は当事者が高ぶるとその臭気を増してしまう。 「どうしてそんなに欲しいか言ってくれたら考えてもいいよ、えぇへ」 #深夜特急24
中野皓作@11月から伊豆 @sorairoinn
布が揺れる。その度に酷い臭いが飛散する。肌の色は紫だ。腐臭の色も。ブスブスと紫色のガスが【器官】から溢れてくる。 「話さない」 布越しに激しく頭を掴む。頭というか、鼻というか、何しろ妙な弾力のある体だった。 「ぎぃひぃ、ぎぃひぃ」 臭い奴が臭い息を激しく吸った。 #深夜特急24
立夏◎獣の仕業 @ritsu1125
「分かったよ。話さなくていいよ。だからそんなに怒らないでよ。」 ぎぃひぃ。 「ギャグだよ、ギャグ。最近の若いのはやぁだね。すぐ怒っちゃうからねジョーダン、通じないからね。おぉ、怖いね」 #深夜特急24
中野皓作@11月から伊豆 @sorairoinn
私は手を離す。布が落ちる。予想通り三つある鼻の一つが曲がっていた。臭い体には良く似合いだと思った。 「前金で38。全額で100になるよぉ」 ぎぃひぃ。 #深夜特急24
立夏◎獣の仕業 @ritsu1125
「100? だったら初めからそういえばいーんだよ」 足元で布をせっせと拾っているやつに声をかける。 「で、なにをすればいいの。100で。」 #深夜特急24
中野皓作@11月から伊豆 @sorairoinn
「それはアタシの仕事じゃないよぉ。あっちのねほぉら、あそこの、黒くて丸々のあれにね、いるよぉ。ほぅら、アタシは伝えるだけが仕事だからねぇ。100.アンタは100だよぉ。前金で38。38さぁ。前金も黒くて丸々に行けばいい。アタシの仕事はそれだけさぁ」 #深夜特急24
立夏◎獣の仕業 @ritsu1125
そーやって笑うの、やめたらいいよ、オバサン。 舐められるから。おれみたいな若造に。 と言おうとしたが、かわいそうなのでやめた。 【黒くて丸々】の奴は鼻の女の視線の先にあった。確かにその通りで、すぐに見つかった。 #深夜特急24
中野皓作@11月から伊豆 @sorairoinn
通りは雑多だった。言葉通りの意味だ。特殊な【器官】の付いた連中が雑多にいる。足にエンジンが付いている者、肛門から金を吐き出す者。その金をブラシ状の舌で掬い取る者。骨格と肉が反転している者。普通の人間なんて私ぐらいなものか。 私ぐらいのものか。 #深夜特急24
立夏◎獣の仕業 @ritsu1125
「【白山羊】を飼ってほしい。一か月間」 【黒くて丸々】とした【肥大眼球】をした女が私に告げた。 #深夜特急24
中野皓作@11月から伊豆 @sorairoinn
「【白山羊】?それはなんだい?」 黒い眼球がもっと黒い瞳孔をこちらに向けた。 「ここにある」 広がりきった瞳孔の中に山羊がいた。二本の足で立つ、利発そうな顔立ちの山羊だった。眼鏡でもあればよく似合うだろう。黒縁の真面目一辺倒なやつだ。 #深夜特急24
立夏◎獣の仕業 @ritsu1125
「これと暮らしてもらう。一か月、あなたの部屋で。殺さなければなにをしてもいいよ」 黒い眼球は微笑んで続けた。 「ハイ、38万だよ。この場で確認して。最終日に【白山羊】と一緒にまたここへ来ることだよ。そしたら残りを渡すことになるよ。確認できたら、今日はバイバイね」 #深夜特急24
中野皓作@11月から伊豆 @sorairoinn
金額を確認すると、女は自分の眼球に梯子を掛け、【白山羊】を瞳孔から出した。 理知的な顔立ちの【白山羊】は恭しく一礼をして告げた。 「お近づきの印に、その紙幣一枚寄越しちゃあくれませんか。インクの匂いが堪らないんだ」 38万が37万になった。 #深夜特急24
立夏◎獣の仕業 @ritsu1125
そうして、黒い眼球の女と別れ、通りを引き返して家路に向かう。 「黒目の中もインク壺の中みたいでなかなか快適なんでさぁ。とろとろしてうっとりとしてきまさぁ」 紙幣をもしゃもしゃ食みながら白山羊は私の後ろを付いてきた。 「試しにどうです? 旦那も」 #深夜特急24
中野皓作@11月から伊豆 @sorairoinn
差し出された紙幣は食いさしだった。印字された紙幣の老人の顔には明らかな恐怖が浮かんでいた。懐の札束の連中がざわつて、上着が苦しい。 「要らない。歩きながら食べるのはやめろ。懐が苦しい」 「そんなに沢山持ってらっしゃるのに?」 「お前一日にどれくらい食べる?」 #深夜特急24
立夏◎獣の仕業 @ritsu1125
「なんまいでも」 しらしらと美しい歯並びで白山羊が笑った。懐の老人たちがざわめきだす。 (ごくつぶしだ、)(ひところしだ、)(だれでもいいんだ、シリアルキラーめ、) 「でも、旦那様がNOと言うならもちろん、控えますが、いかがでしょう」 #深夜特急24
中野皓作@11月から伊豆 @sorairoinn
目が山羊らしい目で笑った。三日月の様なやつだ。細い、厭らしい目。 「どのくらい食べないでいられる?」 「どのくらい食べないでいましょうか?」 「帰ってからも食べるのか?」 「帰宅後の一枚は当然でしょう?」 気付けば門扉の前だった。 「チップをはずんで下さいましよ」 #深夜特急24
立夏◎獣の仕業 @ritsu1125
「チップ?」 「チップでございますよ」 「なんの報酬で?」 「なんの報酬でございましょう?」 「なんの対価で?」 「なんの対価でございましょう?」 「お前が私に何か労働をしてくれたのか?」 「なにか労働をするのですか?」 だめだ。 #深夜特急24
中野皓作@11月から伊豆 @sorairoinn
「入れていただけたら美味しいお金を一枚くださいな」 開けるよりも早く【白山羊】は家の中に入り込んだ。懐はデモでも起こりそうな勢いで締め付けてくる。(やめてくれ)(尊厳を) 門扉を開くと【白山羊】がお辞儀をした。 「旦那様おかえりなさいませ」 また一枚なくなった。 #深夜特急24
立夏◎獣の仕業 @ritsu1125
(いいいいでぇえ) もしゃりと老人が食まれていなくなる。今月は何日あっただろうか。カレンダーを見やる。31日。 「お前、これ以外のものは食べるのか」私は白山羊に尋ねた。 「これ以外のものをいただけるのですか?」 「てがみ、とか」 「にゃあしゃしゃしゃしゃ!!」 #深夜特急24
中野皓作@11月から伊豆 @sorairoinn
「手紙のインクはこれ以上もないほどに美味なので御座いますよ旦那様、それをご存知とは流石、黒目玉の選んだお方であると言う他ない。ああ、これは何たる幸運なのでしょう、注文があるのですが、手紙はなるべく消印の薄いものにして頂きたい。順番は紙幣の次に。紙幣の次ですからね」 #深夜特急24
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「#演劇」

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