【艦これSS】#鎮守府プロダクション ep1:introduction

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Count K.Kawazoe @_____zoe_____

―砲声。 ―砲口から立ち上る紫煙。 ―少女はかつて人間だった肉塊を後目に、事も無げに立ち去る。 #鎮守府プロダクション

2016-01-06 22:47:41
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

《しっかし、このおっさんもアホだよねー。うちの艦娘(アイドル)に枕迫るとかさー。》 《まあそう言ってやるな。それだけうちの「悪行」が知られてないって事なんだから。》 #鎮守府プロダクション

2016-01-06 22:49:11
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

《おいおい、勘弁してくれよ。いくら実質無法地帯になりつつあるとはいえ、まだ表の世界の法は生きてるんだ。》 《どうせ機能してないようなものなんだからいいじゃない。》 #鎮守府プロダクション

2016-01-06 22:50:53
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

《第一、だ。うちの本業はあくまで芸能であって、こっちは自主防衛って建前なんだよ。いいから仕事終わったなら早く帰ってきなさい。》 《了解~。これより川内帰投しまーす。》 #鎮守府プロダクション

2016-01-06 22:53:40
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

そう言うと、――川内と名乗る、全身に艤装を纏った――その少女はストールで顔を隠し、夜の闇へ颯爽と駆けていった。 #鎮守府プロダクション

2016-01-06 22:56:55
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

艦娘なる少女達が実戦に投入されはじめてどれ程になるだろうか。彼女達の敵である深海棲艦は海から出てこず、一方西太平洋のほぼ全域に至るまで多くの――一説には三百万にも達するらしい――「鎮守府」が居を構えている現在、本業以外の食い扶持を持つ勢力は少なくなかった。 #鎮守府プロダクション

2016-01-06 22:58:22
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

この話は、そんな鎮守府の一つの物語である。 #鎮守府プロダクション

2016-01-06 22:58:43
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

この鎮守府を取り仕切る「提督」は、大凡軍装に相応しくない長髪を後ろに束ね、これまた軍人にしてはあり得ないほど貧相な体格の男だった。艦娘が登場して以来、ご覧の如く帝國海軍の軍規などあってなきようなものになっていた。 #鎮守府プロダクション

2016-01-06 23:03:10
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

無論、余計なことに現を抜かしている所為で階級は将官にすら届くかすら怪しいところなのだが。 「あー!もう飽きたー!」 「まだ始めたばっかりだろーが!」 「あたしに書類仕事とかむーりー!!そんなことより夜戦行こーよー。」 #鎮守府プロダクション

2016-01-06 23:05:56
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

この騒がしい艦娘は秘書――もっとも、その本来の仕事がどれだけこなせているのかはご想像に難くないだろうが――の川内。 「お前が夕方まで寝てたおかげで大半終わってんだよ。せめて地方巡業の手配くらいはやってくれ。」 「どうせいつものメンバーでいつものとこでしょ?」#鎮守府プロダクション

2016-01-06 23:07:05
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

「ま、確かに大半はいつも通り若手の駆逐艦中心の地方営業なんだがな。」 「あれ、今日から吹雪ちゃんチームNから抜けるんだ?」 「ちょっとこっちで声がかかりそうなんだ。そろそろ本部でしっかり仕上げてやりたいからな。」 「で、代わりは春雨ちゃんか。」 #鎮守府プロダクション

2016-01-06 23:08:20
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

「声域的には結構代わるから、他の子もちょいちょいパート変更って感じになるな。」 「まああそこはあきつ丸先生がみてるから大丈夫でしょ。――あの怖さに耐えられれば。」 「あいつは真面目が服着て歩いてるようなもんだからなー…」 #鎮守府プロダクション

2016-01-06 23:10:48
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

「よし、片づいた!提督、早く夜戦いこ?」 「お疲れさん。今日の現場はちゃんとわかってるか?」 「いつものシルバームーン、今日は余所の子一組との対バン、でしょ?」 「…ったく、その調子で他の仕事も完璧にやって欲しいんだがな…」 #鎮守府プロダクション

2016-01-06 23:12:18
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

前述した通り、暇を持て余した提督達が副業に精を出しているおかげで、呉の町も今や空前の賑わいを見せている。特に、飯に五月蝿い海軍軍人どもに鍛えられた飯屋は名店揃い…おっと話が逸れた。 #鎮守府プロダクション

2016-01-06 23:13:44
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

何にせよ、彼らは今「シルバームーン」という名のライブハウスの楽屋にいる。特段変わったところのある店ではないが、半ば根城のごとく頻繁に使っているようだ。 #鎮守府プロダクション

2016-01-06 23:15:11
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

ここに着いてからと言うもの、川内は先程のいい加減な雰囲気もどこへやら、てきぱきと準備を進めている。提督が打ち合わせから戻ってくる頃にはもう着替えもメイクも自分で終わらせてしまっている光景も、もはやいつものことのようだ。 #鎮守府プロダクション

2016-01-06 23:17:17
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

実際明石という名のメイク・衣装係もいるのだが、この程度の現場でソロ活動なら、自分自身でやったほうが手早いとか。 …提督?そんな技能は持っているはずがない。むしろあったらドン引きである。 #鎮守府プロダクション

2016-01-06 23:18:30
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

一方、ステージの方ではもう一組の出演者が準備を進めていた。艦娘の副業が一般化しているとはいえ、こうした仕事につくのが皆艦娘ばかりというわけではない…というか、やはり流石にまだまだ艦娘の方が少数派であって、今日の競演者も生身の人間である。 #鎮守府プロダクション

2016-01-06 23:18:38
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

「で、最近はどんな感じだい?」  バーカウンターに立つ店主に、提督が語りかける。 「いつも通り、大して変わらんさ。というか、うち程度の現場ならわざわざあんたが同伴してこなくても、あの子なら十分一人でやれるだろうに。」 #鎮守府プロダクション

2016-01-06 23:20:10
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

「あいつはステージの事しか頭にねーからな。金の話すら怪しいんだ、着いて来ざるを得ないだろ。」 「なんだ、そんな理由なのか。」 「あ?」 「てっきり、あの子と"デキ"てるからかと思ったんだがな。」 「ばーか。」 #鎮守府プロダクション

2016-01-06 23:21:35
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

他の多くの提督と同じく、この男も艦娘に指輪を贈っている…が、人気商売の稼業故かそれは普段身につけさせてはいなかった。店主もそれに感づいてはいるようだが、逆にだからこそこうやって意地を突いて遊んでいるようだった。 #鎮守府プロダクション

2016-01-06 23:22:55
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

「で、この子達はどんなユニットなんだ?」 「ご覧のとおり『和風』をテーマにした二人組だね。最近事務所も雨後の筍みたいに増えてるけど、そんな新興勢力の一つみたいだ。まだ学生らしいけど、なかなか将来有望かもしれない。」 「ほー。そいつは楽しみだ。」 #鎮守府プロダクション

2016-01-06 23:24:03
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

男達が軽口を叩いている間に既に幕は上がっていた。満員というほどではないが、既に客席は「濃い」ファンや学校の友人と思われる若者達まで、バラエティ豊かに結構埋まってきていた。 #鎮守府プロダクション

2016-01-06 23:25:37
Count K.Kawazoe @_____zoe_____

「実際、あーいう追っかけの連中も大変だよなぁ…。別に応援したって見返りがあるどころか、彼女たちが有名になったらその分遠くなっちまうだろうに。」 「そいつらのお陰で食えてる業界の人間が言っても白々しいんじゃないのか?」#鎮守府プロダクション

2016-01-06 23:26:18