1.「あはっ」彼女はきれいな顔で笑う。返り血を浴びた顔で。僕の血を浴びた顔で。僕は、それをただ見ることしかできない。手を伸ばすことも、声をかけることも。手を動かそうとすれば、指先だけがビクリと動き、声をかけようとすれば、掠れた吐息が漏れるだけ。そんな僕を彼女は笑顔で見ているだけ。
2011-01-23 23:36:182.薄れていく意識が、彼女の言葉を最後に聞き取る。何を言ったのか一切理解できなかったが、その声に歓喜が満ちていたことだけを感じ取って、僕はの意識は閉ざされた。そして、次に意識を持ったときには、僕は『僕』ではなくなっていた。そして、最後との時と同じように彼女は笑顔で僕を見ていた。
2011-01-23 23:41:333.彼女は語った。僕に。僕がどうなったのか。何を用いたのか。それは尋常ならざる手段で、僕には半分も理解できなかった。そして、彼女はこれで貴方とずっとずっと一緒だね、と。僕はそれに対して何も思わなかった。死んで戻ってきた僕は、感情がなくなっていたのだ。
2011-01-23 23:55:564.感情がなくなったことで、僕の記憶は記録になった。記憶から感情というタグが外れて、記録になった。だから、彼女に対しても何も思うことがなかった。怒りも恨みも恐怖も。僕は、それから彼女が死ぬまで彼女のそばいいることとなった。どうとも思っていない彼女のそばに。
2011-01-23 23:59:455.彼女は自分が長くないと気づいたとき、僕に看取られることを希望した。何もすることがない僕は、彼女の希望を叶えた。僕が死んだ時とは違うシワだらけの顔なのに、同じ綺麗な笑顔だった。彼女は息絶える間際、僕に言葉を残す。死んでも貴方と一緒にいられるから、と。
2011-01-24 00:06:586.僕は彼女の最後の言葉を聞いた時、僕の内に浮かぶモノがあった。それは言葉だった。それは感情だった。それは怒りだった。なくなったと思っていた感情はただ薄くなっていただけだった。『僕』が死んで、彼女が死ぬまでの長い間、消えたと誤解していたのだ。
2011-01-24 00:11:017.僕は、浮かぶままに言葉を紡ぐ。嫌だね、と。彼女は、僕の言葉に驚きの表情を浮かべる。畳み掛けるように口は動く。自分勝手に僕を扱った上に、この先も同じようにするのか。人形遊びをするのか。僕は君の人形じゃない。既に死んでいる、死体だ。僕がここにあるのはおかしな事だ。
2011-01-24 00:14:128.僕は湧き出る言葉を紡ぎ、彼女は表情を変える。それは、怒りだった。きれいな笑顔が醜悪な、鬼の形相に変わったのだ。なぜ、そんなことを言うのか。私は貴方の為を思って貴方を生まれ変わらせたのだ。そうでなければ、貴方は私とはずっと一緒にいられなかった。いることができなくなってしまう、と
2011-01-24 00:19:049.そんなことは知った事ではない。彼女の事情なんて知らない。僕は、『僕』は、彼女のことが大嫌いだったのだから。だから、彼女が僕に看取られることを希望した際に言われた、実行すべきことに必要なものをすべて壊した。動けない彼女の目の前で。彼女の絶叫が響く。それが、ひどく心地よい。
2011-01-24 00:21:3110.僕は笑う。狂ったようにゲラゲラと。彼女は叫ぶ。絶望の声を。そして、すべてを壊し終えたとき、彼女は事切れていた。恐ろしく醜い形相で。僕はそれを見て、爽やかなナニカを感じた。そして、僕は本当の最期を迎えた。
2011-01-24 00:25:00【3】その物語は、能力がある為に本気になれない青年が主人公だった。自分と正対する伴侶を得、最後に本気になって、世界を救った青年の物語だ。
2011-01-26 23:54:19【6】僕は、それに涙した。僕は主人公の青年のように能力があるわけでもない、なのに本気になるということがわからない。本気になれない。
2011-01-26 23:55:21【8】では、貴方達の言う「本気」というのはなんなのか。貴方達はどうしたら「本気」になれるのか。教えてくれ。僕にはそれらがわからない!
2011-01-26 23:55:59【12】そして、「本気」とはどういう様なのか!それは自分で「本気」となっていることが理解できるのか!それすらも分からない!理解出来ない!
2011-01-26 23:57:26