ある検査があります。この検査の精度はこれこれです。では陽性の人の病気の確率は?

医学というか確率論の奥深さを感じた。こういうのをもっと健康番組とかで触れてもらえないだろうか。
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センター試験がありましたが、こんな確率の問題はいかがです?

Aprildiamond(坂山) @Poker_April

ある検査があります この検査は ○○病の患者にすると90%陽性になります(感度90%) ○○病でない患者にすると95%陰性になります(特異度95%) ある人にこの検査をしたところ陽性でした。 この人が○○病である確率は

2016-01-17 12:26:58
Aprildiamond(坂山) @Poker_April

一応これ、後で真面目な話につなげようと思ってますよ?(汗

2016-01-17 12:51:01
Aprildiamond(坂山) @Poker_April

1時間足らずでこんなにたくさんの回答ありがとうございます 解説を始めます ・・・石を投げられないといいけど pic.twitter.com/tzJgtHA6T2

2016-01-17 13:11:34
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解答発表!

Aprildiamond(坂山) @Poker_April

まず○○病の患者2000人、○○病でない患者8000人 合計1万人にこの検査をした場合(有病率20%:パターンA) を考えてみましょう

2016-01-17 13:13:29
Aprildiamond(坂山) @Poker_April

○○病の患者のうち陽性になるのは90%、1800人ですね ○○病でない患者8000人のうち陰性になるのが95%、7600人 表を作るとこんな感じになります pic.twitter.com/JrL5vlYnGK

2016-01-17 13:18:56
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Aprildiamond(坂山) @Poker_April

検査が陽性になったのは2200人でした、このうち○○病なのは1800人 したがって求める確率は81.8%・・・?

2016-01-17 13:20:13
Aprildiamond(坂山) @Poker_April

別の集団を考えてみましょう ○○病の患者5000人 ○○病でない患者5000人 合計1万人にこの検査をした場合(有病率50%:パターンB) を考えることにします

2016-01-17 13:21:16
Aprildiamond(坂山) @Poker_April

先ほどと同じ表を作ります Excel便利ですね pic.twitter.com/HAUyJyAf6I

2016-01-17 13:22:27
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Aprildiamond(坂山) @Poker_April

今度は4750人が陽性と出ました うち4500人が○○病ですから求める確率は94.7%・・・?

2016-01-17 13:23:36
Aprildiamond(坂山) @Poker_April

有病率95%:パターンC 有病率10%:パターンDも出してみましょう パターンCだと99.7%だし パターンDだと66.7% pic.twitter.com/guS2ZV8cd8

2016-01-17 13:26:33
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Aprildiamond(坂山) @Poker_April

有病率(=検査前確率)によって ○○病である確率(検査後確率)は変わってしまうのです 先の問題は条件が足りなかったのですね そういう視点で選択肢を見ると・・・ ああ、正解がありました。「知るかボケ!」 ・・・石を投げないで!!!!

2016-01-17 13:28:16

では、ここからが解説です。

Aprildiamond(坂山) @Poker_April

さて、なぜこのような問題を出したか インフルエンザに話を戻しましょう この検査の感度(インフルエンザの患者にこの検査をして陽性になる確率)は非常にばらつきがあり、また時期によってもかわりますが60-90%くらいとしましょう

2016-01-17 13:31:33
Aprildiamond(坂山) @Poker_April

感度70% 特異度95% 検査前確率90%でさっきの表を作りましょう 陽性ならほぼインフルエンザとみなして良さそうです ・・・でも陰性でも74%インフルエンザです pic.twitter.com/niFvIPgYHd

2016-01-17 13:35:47
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Aprildiamond(坂山) @Poker_April

痛い思いして鼻に綿棒突っ込まれて、「検査陰性です 良かったですね でも7割以上の確率でインフルエンザですよ」 ・・・嬉しくないですよね

2016-01-17 13:36:37
Aprildiamond(坂山) @Poker_April

逆のパターン考えましょう 熱はあるけどほかの症状ありません インフルエンザもこの地域では流行っていません 「会社にインフルエンザでないことを証明してこいと言われた」 感度70% 特異度95%、検査前確率15%で検査しましょう

2016-01-17 13:37:56
Aprildiamond(坂山) @Poker_April

表を作るとこうなります 検査したら陰性でした ・・・でもインフルエンザの可能性5%残ってます・・・ pic.twitter.com/g44hP58kE1

2016-01-17 13:39:29
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Aprildiamond(坂山) @Poker_April

時期を変えて感度90% 特異度95% 有病率15%にしてみましょう だいぶ良くなりましたが、それでも2%残るんですね 0にはならないです pic.twitter.com/kPrInxYR3X

2016-01-17 13:41:12
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Aprildiamond(坂山) @Poker_April

検査の擁護をしますと、感度90%、特異度95%の検査は「非常に優秀な検査」です。 それでもこのような結果になるんです。 検査が悪いのではなく、検査の特性なのです。医者はそんなことを考えて検査を利用するんですね。

2016-01-17 13:42:42
Aprildiamond(坂山) @Poker_April

実際の臨床では、症状や周囲の感染状況を考え、検査の必要性を判断します 検査をしてもしなくても方針が変わらない場合、検査をする必要はなく「臨床診断」でインフルエンザと診断しさえします

2016-01-17 13:43:59
Aprildiamond(坂山) @Poker_April

逆にインフルエンザでないことの証明は非常に困難です 初期は感度が低いためなおさらです(感度70%と90%の表をもう一度比較してみてください) 「インフルエンザでないことを証明する」のにこの検査は(そしてほかのどの検査も)向いていません

2016-01-17 13:45:24
Aprildiamond(坂山) @Poker_April

これは患者に対してではなく、周りの方に向けてで 先に書いたのと同じ文脈で話しますが 「インフルエンザであること」の証明はファジイにした方がいい場合が多々あります いろいろな事情により診断書があったほうがいいことも理解はします

2016-01-17 13:46:47
Aprildiamond(坂山) @Poker_April

ですが、医療機関を受診しても、そこまで情報が増えるわけではないことも多いです。インフルエンザに関しての病欠をもっとゆるやかに適応すれば、みんな幸せになれるのではないでしょうか

2016-01-17 13:47:53