安達裕章さん(田中芳樹さん秘書さん)からの“作家志望の方への助言”まとめ

自分用ビボ
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安達裕章 @adachi_hiro

もちろん、自分の書きたいジャンルがあって、私は読者の有無なんて関係なくそれを書くぞ。というのであれば、それでも構わない。ただ、商業出版は「商売」だから、読者に買って貰えない、と出版社が判断したら出して貰えないことも承知したうえで書く必要があると思う。

2016-01-17 09:19:11
安達裕章 @adachi_hiro

私の周囲にいる作家さんたちは、自分の書きたい題材があって、でも、それは今の読者にはそのまま受け容れて貰うのは難しそう、と思ったときは、いろいろと「お化粧」をして、興味を惹いて貰えるように工夫してる。それは「妥協」ではなくて、文筆業のプロとしての「工夫」だよね。

2016-01-17 09:19:17
安達裕章 @adachi_hiro

正直に言っちゃうと、私が担当している作家さんだって、毎回、私や担当の編集さんと「それをそのまま書くんじゃなくて、こう工夫したらどうですか」とか、熱い意見交換をしてる。すでに作家としてのキャリアも長く、読者もついてる人でもそうなんだから、作家志望の人はより工夫が必要かもしれない。

2016-01-17 09:22:55
安達裕章 @adachi_hiro

でも、作家も編集者も、もちろん私も、過去になかった題材を(うまく工夫して)書いてくれる新人の登場は、本当に心待ちにしているんだ。出版事情は厳しさを増しているけど、それでも「くぅ、こんなのが読みたかったぜ」と言わせるような作品が今年はいっぱい読めるといいなあ!

2016-01-17 09:25:12
安達裕章 @adachi_hiro

そうそう。この前、小説家志望者の作品を読む機会があったんだけど、皆さん、すごく資料を調べてる。これは素晴らしいんだけど、それをそのまま全部書いてるんだよね。これは野暮だ。昔から「10調べて1書く」と言うけど、「私はこれほど調べましたぜ」という記述ほど読者がしらけるモノもないよね。

2016-01-17 09:29:29
安達裕章 @adachi_hiro

ちゃんと調べて、理解したうえで書いたモノというのは、ちゃんと読者に伝わるもんだと思う。読者が読みたいのは小説であって、資料じゃないもん。一歩間違うと、自分の知識をひけらかす、いけすかないヤツ、と読者に思われるかも知れん。その記述が、書きたい主題に必要なものか考えつつ書くのは大事。

2016-01-17 09:32:20
安達裕章 @adachi_hiro

これも繰り返しになるけど、作家を志望する人は、とにかく新人賞に応募するのが王道。で、うまく結果が出なかったときは、ひとまずその作品はしまい込んで、新たな作品を書く。で、また新人賞に出す。落選した作品を手直しして別の賞に出す人が多いけど、それよりは新しい作品を書く方が良いと思う。

2016-01-17 09:47:14
安達裕章 @adachi_hiro

新人賞の下読みって、一次選考は編集部ではなく、編集プロダクションなどの下請けに出すことが多い。で、その人たちは各社の新人賞の下読みをしていることも多い。となると、手直しした作品を同じ人が読む可能性もゼロじゃない。心証はあまり良くないよね。これ、うちの会社であった実話なんだが。

2016-01-17 09:49:06
安達裕章 @adachi_hiro

もうひとつの理由。こっちが本題。念願かなってプロの作家になったとき、編集さんからどんどん作品を求められる。そのとき、どれだけ新しい作品を生み出せるかというのは、作家としての寿命を決める大きな要素になる。アマチュア時代のうちから、書いた作品をリサイクルしているようでは厳しいぞ。

2016-01-17 09:50:53
安達裕章 @adachi_hiro

要するに、自分でボツにした作品を、手直しして世に出すのはプロの作家になってからでも充分ということ。プロになったら〆切に追われることになるんだから、せめてアマチュア時代には、自分の好きな作品を好きなだけ書きましょう。それくらい書くのが好きじゃないと、プロの作家は厳しいかも知れん。

2016-01-17 09:55:29
安達裕章 @adachi_hiro

プロのアスリートが、その競技が好きで好きで、その競技を辞めろと言われるのが一番辛い、というのを同じで、プロの作家というのは本を読むのが好きで書くのが好きで、という人に向いている職業だと思う。こういうことを書くと作家というのはひねくれ者ばかりなので、「俺は違うぜ」とか言われるけど。

2016-01-17 10:02:17
安達裕章 @adachi_hiro

あの(なぜ「あの」と付ける)田中さんだって、持ち歩いてる紙袋には、いつも原稿用紙が入ってる。本人いわく「いつ、原稿を書きたくなるかも知れないし」と。少なくとも私が秘書になってから20年、そういう機会を目の当たりにしたことはないのだが。でも、作家というのはそういうものかも。

2016-01-17 10:02:28
安達裕章 @adachi_hiro

あと、けっこう作家志望者さんたちが知らないのが、出版社各社の編集さん同士の交流が活発と言うこと。みんなライバル会社でありつつ、出版業界を支える同志という感覚なんだと思う。だから、良い作品を書くと、すぐに他社からもコンタクトがある。逆もしかり。悪いことできない。いや、しないけどね。

2016-01-17 10:17:55
安達裕章 @adachi_hiro

さっきから延々と書いてるけど要するに「面白い作品を読みたい〜」ということ。最近は商業出版じゃなくても一定数の読者が確保できるので、そのままアマチュア作家で活動する人も多い。それはそれで素晴らしいけど、もしそこからプロを目指す人がいるなら、ここに気をつけたらモア・ベターよ、と。

2016-01-17 10:24:40
安達裕章 @adachi_hiro

ほんと、コレですよね。私も、プロ作家としてデビューしたあと、編集さんに新作を求められ「過去に書いたモノなんですが…」と言って、そっと出して掲載された作家さんを知ってます。 twitter.com/michiharakatum…

2016-01-17 11:15:51
道原かつみ @michiharakatumi

編集側は新作を投稿して欲しいので、知人は新作投稿&手直し作を送りました。 両方乗ります。#小説WINGS twitter.com/adachi_hiro/st…

2016-01-17 11:04:09
安達裕章 @adachi_hiro

このため、出版社はとにかく本を出し続ける必要がある。自転車操業に近い状況。それを支えるためには、一定数以上の作家が必要になる。その結果が、いまの「書店の店頭に1週間も並ばない」「取次からのハコが開梱されないまま戻される」ほどの出版点数の「洪水」。

2016-01-17 11:29:46
安達裕章 @adachi_hiro

突き詰めていうと、これは再販制度の問題ということになるだろう。この実情をすべて是とするつもりはないが、再販制度があるおかげで、売れるか売れないか判らん本でも出すことが出来る。また、全国津々浦々、同じ値段で本が買えるという良い面もある。

2016-01-17 11:31:26
安達裕章 @adachi_hiro

正直いうと、このような再販制度もいずれ改革されていくと思う。どのように改革されるかは判らんけど。個人的意見がだ、そうなると、より新人の発掘は厳しくなると思う。売れるものだけ出すようになるからね。その時代の新人発掘は、私のような作家代理人が担うのか、電子媒体が活躍するのか。

2016-01-17 11:38:09
安達裕章 @adachi_hiro

そういう意味でも、出版業界に改革が必要というのはとても正しい意見だと思う。ただ、このまえ耳にした某IT企業の人の発言、「作家と打ち合わせをしたあと、原稿が上がるのが半年後なんてオカシイ。人数さえ集めればコンテンツなんてすぐ出来るだろう」というのも変だと思う。

2016-01-17 11:41:08
安達裕章 @adachi_hiro

それはよくいう「妊婦を10人集めれば、1ヶ月で子どもが出来る」というのと同じことで、人を集めることで一気に作れるモノと、個人のクリエイターに依存するモノの差を理解してないということだと思う。

2016-01-17 11:43:14
安達裕章 @adachi_hiro

電子書籍も含め、さまざまな形態での出版が可能になった現在だからこそ、クリエイティブな部分と、それをどう表現していくかの組み合わせは、さまざまに展開できるのもあろう。これはある意味で楽しみが増えたとも言える。

2016-01-17 11:46:04