SF作家 笹本祐一氏 軌道エレベータを語る

SF作家・サイエンスライターである笹本祐一氏による軌道エレベータの解説
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笹本祐一 @sasamotoU1

軌道エレベーターかあ。いやどんな番組やってて、富野監督がなに喋ってるのか、うちじゃwowow映らないんで解らないんですがね。

2011-01-24 22:46:24
笹本祐一 @sasamotoU1

とりあえず現状で軌道エレベーターについてわかっているいくつかの確実なこと。素材の目途は付いているが、実際にそれを素材として使える技術はまだ確立されていない。なんせ鉄の百倍、ケプラーの25倍って強度の素材ですから、使えるようになったらいろいろと設定が変わる。

2011-01-24 22:51:26
笹本祐一 @sasamotoU1

材料の強度が100倍になるって事は、単純に言って同じ強度のものが100分の1の重量で作れるようになるってことである。仮に自動車を同じ強度で作った場合、エンジンだのゴムだのクッションだの置き換えの効かない部位があるにしても構造重量を圧倒的に軽量化することが出来る。

2011-01-24 22:55:22
笹本祐一 @sasamotoU1

現状で最軽量でも数キロって自転車のフレームをカーボンナノチューブで同じ強度で作ると数十グラムの重量しかなくなる。たぶんシャボンで作ったみたいなすかすかの薄いパイプを組み合わせることになるんじゃないかと思うが、現実感ないなー。

2011-01-24 22:57:08
笹本祐一 @sasamotoU1

軌道エレベーターを実際に建設するには、そんな非現実的な強度の材料が必要になる。で、そんな非現実的な強度の材料が実用化されている世界なら、ガンダムの装甲や宇宙船のタンクなんかもそういう材質で作られるだろうから、極端に軽量化されるんじゃないかなあ。

2011-01-24 22:58:45
笹本祐一 @sasamotoU1

今地上にある全ての物質の化学反応の効率は解明されて理科年表にも載ってる。で、ややこしい説明を省くが、液酸液水の化学反応で軌道速度を出そうと思うと、地上重量の9割を液酸液水にしなければならない。

2011-01-24 23:00:50
笹本祐一 @sasamotoU1

今まで幾度となく構想されつつまだ開発されてない単段式宇宙機は、自重の9倍の燃料を搭載出来ないと成立しない。残り一割の重量で液酸液水タンク、エンジン、ペイロードまで作らないと、単段式宇宙機は軌道速度を出せず、宇宙機になれない。

2011-01-24 23:02:36
笹本祐一 @sasamotoU1

残り一割だけで機体作ってタンク作ってエンジン作って、ってなると、問題になるのが材料強度になる。米のX33は新素材でタンクを作って軽量化を図ろうとしたが、極低温燃料に耐えるタンクをどうしても作れず、仕方ないからタンクをアルミベリリウム合金にしたら重量過大になり、計画中止になった。

2011-01-24 23:04:43
笹本祐一 @sasamotoU1

ところが、もし軌道エレベーターに使えるような強度のカーボンナノチューブが実用化されてるなら、その材料で単段式宇宙機が作れるのよ。おそらく軽量化を旨とする宇宙船の構造もまるっきり変化してくるはず。その辺り、作家としては世界観に注意しないとアンバランスな世界を作ってしまうことになる。

2011-01-24 23:07:25
笹本祐一 @sasamotoU1

で、実は軌道エレベーターにはもうひとつ実用化状の大問題がある。スペースデブリ、ゴミに限らないけど軌道上にある物体は実用衛星もゴミも宇宙飛行士が落としたスパナもライフル弾の20倍って猛烈な軌道速度で地球の周りを回っている。

2011-01-24 23:09:03
笹本祐一 @sasamotoU1

まあ、ISSが飛んでる程度の高度なら微弱とはいえ空気抵抗があるんで、数ヶ月から十数年も経てば落ちてくるから、高度1000キロ以下なら未来永劫スペースデブリに悩まされる心配はない。もちろん、静止軌道辺りのデブリになると空気抵抗なんかないからいつまでも滞留する。

2011-01-24 23:11:07
笹本祐一 @sasamotoU1

低軌道と静止軌道の間には、猛烈な放射能が荒れ狂うバンアレン帯があるので、GPS衛星などの例外を除いてはその辺り飛んでる衛星はあんまりない。でも、低軌道には今もデブリがばんばん飛んでいる。

2011-01-24 23:12:12
笹本祐一 @sasamotoU1

軌道エレベーターを実際に建設すると、このデブリの衝突が問題になる。あんまり細いと実用化難しいからある程度の太さがあるケーブルが、地上と同じ速度で低軌道から静止軌道までまっすぐ延びることになるが、低軌道ではステーションも外れたボルトも大和の主砲弾の10倍って速度で飛んでいる。

2011-01-24 23:15:12
笹本祐一 @sasamotoU1

テザー衛星といって長くワイヤーを伸ばした衛星の構想があるんだが、もちろんワイヤーの長さが伸びれば伸びるだけ衝突確率が増える。15年くらい前に九州大学で当時のデータでの計算でも、1・5キロのワイヤーを低軌道で伸ばすと一週間に一度なんかぶつかる、って結果が出たそうな。

2011-01-24 23:17:27
笹本祐一 @sasamotoU1

飛んでる衛星や部品がカーボンナノチューブほどの強度がない、とはいってもなんせ速度が違う。今ある一番早い大砲の弾の10倍くらいの速度でぼんぼん飛び回ってる衛星やデブリが、低軌道で次々と軌道エレベーターのワイヤーにぶつかってったら、どうなるか。

2011-01-24 23:19:46
笹本祐一 @sasamotoU1

ワイヤー強度が充分に高ければ、ワイヤーが次から次へとぶつかるデブリをぶった切ってしばらくは保つかも知れない。でもそうすると、低軌道のデブリが覿面に増えて、自動的にケスラーシンドローム発生源になるわな。で、強度がそれほどでもなければぶった切られちゃう。

2011-01-24 23:21:21
笹本祐一 @sasamotoU1

低軌道のデブリは放っておけばそのうち大気圏突入するけど、中軌道以上はそうは行かない。という訳で、軌道エレベーターを建設するための材料、技術が揃ったとしても、建設運用期間中にぶつかる可能性のあるデブリを排除するシステムを構築出来ない限りは、実用化難しいんじゃないかなあ。

2011-01-24 23:24:50
笹本祐一 @sasamotoU1

低軌道での軌道エレベーターケーブルと飛翔物体の速度差は、秒速にして最低でも7・5キロ。この相対速度は相手の軌道によっていろいろかわるしぶつかってくる角度も一様ではない。現実としての軌道エレベーターを、SF的手段によらずにどうやって護るか、あるいは護れないのか。大変よね。

2011-01-24 23:30:15
笹本祐一 @sasamotoU1

レーザーで蒸発させるなんて案もありますが、金属塊を完全に蒸発させるためにどれくらいの強度のレーザーを何秒間照射しなきゃならないか、そして蒸発させたとしても同じスピードで飛んでくるはずの霧状金属は衝突してもダメージを与えないのか、考察が必要ですなあ。

2011-01-24 23:35:25
笹本祐一 @sasamotoU1

あともうひとつ、こっちは軌道エレベーターが成立するかに比べれば些細な問題なんだが、地上から静止軌道駅まで36000キロ!空気抵抗はないとはいえ、ケーブル伝って上がらなきゃならないゴンドラがどの程度の速度出せるんだろう。時速1000キロでも一日半かかるのよねえ。ずっと立ってる?

2011-01-24 23:37:31