都条例問題:半世紀経っても昔と同じ批判に晒されるマンガと、今日では社会的権威となった小説の差

1955年に嵐のごとく吹き荒れた「悪書追放運動」。  手塚治虫の代表作『鉄腕アトム』も焚書の対象となりました。それから半世紀後、都条例改正問題でも全く同じ構図が繰り広げられています。 ところがこの当時、実は小説も批判されていましたが、今日では社会的権威を持つまでになっています。 この差は一体何なのでしょうか? 考えたままに、書き連ねてみました。 なお1956年に石原慎太郎は『太陽の季節』で第34回「芥川賞」を受賞しています。 続きを読む
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古賀氏郷(仮) @KogaUjisato

漫画を見下す風潮に憤る藤本氏の意見は、ごもっともなのだが、だが一方で漫画家や研究者達、出版が漫画の地位向上に今までどれだけ努力してきたか?という事を考えると、ちょっと首を傾げてしまう。(続 RT @honeyhoney13 国内の他分野の研究者のマンガ研究への侮りは度し難い。

2011-01-24 01:11:47
古賀氏郷(仮) @KogaUjisato

続)「マンガはなぜ規制されるのか?」等でもそうだが、今まで規制問題が起きても、特に研究者達の存在感がほとんど無い。また出版は自主規制に奔走し、漫画家達は世間へ抗弁するか自粛するか、どっちにせよその場を凌ぐだけで精一杯。誰もが嵐が過ぎ去ると、あっという間に忘れてしまう。(続

2011-01-24 01:12:04
古賀氏郷(仮) @KogaUjisato

続)戦後、何度も何度も「漫画は低俗だ」という批判がされたにも関わらず、戦略的に「漫画の社会的地位ををどうやって向上させるか」という思考がなされる事は、今日に至るまでほとんどない。戦後、小説界が戦前弾圧を受けた反省から社会的地位向上に努力してきたのに対して、実に対照的だ。(続

2011-01-24 01:12:24
古賀氏郷(仮) @KogaUjisato

続)戦前は小説が子どものメインの読み物だった。その典型が江戸川乱歩や立川文庫。それらも今の漫画と同じ様に有害のレッテル貼られて規制された。戦前、自著を世間から批判され、戦中に徹底的に弾圧された江戸川乱歩は、作品を守るためには政治や世間に対抗できる権威が必要だと考えた。(続

2011-01-24 01:13:44
古賀氏郷(仮) @KogaUjisato

続)そこで彼は戦後、社団法人日本推理作家協会を結成している。今日では乱歩作品は学校図書館に並ぶ程になった。また小説界は他に日本ペンクラブを結成し、石原の俗悪小説『太陽の季節』に芥川賞やって権威付けたり、チャタレイ裁判や四畳半裁判などで裁判闘争も徹底的にやっている。(続

2011-01-24 01:15:12
古賀氏郷(仮) @KogaUjisato

続)その結果作られたのが、今日の小説の社会的地位だ。65年に悪書追放運動が起きて以来、漫画に対する世間の扱い、社会的地位は本質的なところではこの時と全く変わっていない。ところが一方の小説は権威あるものとして社会に君臨している。この決定的な差は、あまりに大きい現実だ。(続

2011-01-24 01:21:41
古賀氏郷(仮) @KogaUjisato

続)小説界が上手かったのは権威付けと社会に対するアピールだった。メディアを上手く使い、小説は素晴らしいものだ、というメッセージを送り続けた。またそれだけではなく、日本ペンクラブ自体や作家達も社会問題に積極的に発言していった。一方の漫画界は身内で閉じこもっていた印象が否めない(続

2011-01-24 01:26:51
古賀氏郷(仮) @KogaUjisato

続)(訂正 悪書追放運動は1955年でした。)日本ペンクラブの結成が1935年でその直後に戦争があったから、小説界の社会的地位向上への執念はその当時の弾圧が原点なのだろう。しかし同じ様に55年に焚書までされた漫画界は奮起しなかった。そして今日に至っている。(続

2011-01-24 01:39:00
古賀氏郷(仮) @KogaUjisato

続)半世紀前と未だに変わらない位置にいるという問題について、漫画界の関係者(出版、漫画家、研究者など)はもっと深刻に考えるべきではないだろうか?今からでも漫画の社会的地位向上のための戦略プランを練る事を、真剣に考えるべきだろうと思う。(了)

2011-01-24 01:41:27
古賀氏郷(仮) @KogaUjisato

なお戦前、江戸川乱歩がどういう具合に世間から批判されていたかというとこんな感じ。「乱歩の小説に影響されて、陰惨な殺人事件が起きるんだ!」「乱歩は実際に女を殺し、それを題材に小説を書いてるんだ!」等。今も昔も世間の批判の仕方は同じ。だからそれを覆す方法もやはり同じ。

2011-01-24 01:42:07
古賀氏郷(仮) @KogaUjisato

1955年の悪書追放運動の際、同じ漫画でも手塚漫画は俗悪で駄目だが、赤胴鈴之助は道徳的で良いという声があったらしい。今回の都条例改正問題でも、夢や希望のある漫画はいいが、エロは低俗で駄目だという意見があったが、半世紀前と構図が全く同じなのが笑えてしまう。これが現在の漫画界の地位

2011-01-24 01:53:01
古賀氏郷(仮) @KogaUjisato

ソース:“1955年『鉄腕アトム』は小学校の校庭で見せしめ的に焚書された/橋本健午『有害図書と青少年問題』” 《読書猿Classic between - beyond readers》 http://p.tl/EKfX

2011-01-24 23:59:44
古賀氏郷(仮) @KogaUjisato

手塚治虫著『ガラスの地球を救え』(光文社、1996年)14頁より引用 「(1955年の悪書追放運動で起きた)「焚書」ばかりでなく、手塚が受けた批判の中には、「『赤胴鈴之助』は親孝行な主人公を描いているから悪書ではない。」というものがあったが、(続

2011-01-24 23:14:51
古賀氏郷(仮) @KogaUjisato

続)手塚が回顧する処によると、その様に主張した主婦は、実際には『赤胴鈴之助』を全く読んだり見たりしておらず、「ラジオでその様に聞いた」というだけの事であった。(続

2011-01-24 23:16:08
古賀氏郷(仮) @KogaUjisato

続)また、高速列車や高速道路、ロボットなどの高度な発展の描写を「できるはずがない」「荒唐無稽だ」と批判した上、手塚のことを「デタラメを描く、子どもたちの敵」とまで称した者もいたという。」http://p.tl/EKfX (了)

2011-01-24 23:16:21
古賀氏郷(仮) @KogaUjisato

1955年、手塚漫画は「現実的でない」と批判され俗悪漫画の烙印を押された。そして半世紀後、石原都知事が2011年1月23日の新報道2001で「漫画は現実にはありえないことでしょ」と批判した。50年以上経ってなお全く同じ構図が繰り返されている。

2011-01-24 23:21:52
古賀氏郷(仮) @KogaUjisato

そしてやはり55年の悪書追放運動を主導したのも警察と結託したTA(母の会)、マスコミであった。都条例改正問題でも同じだ。ただ唯一違うのは全てのマスコミが規制一色ではなく、賛否両論であった事が僅かな救いといえよう。

2011-01-24 23:32:17
古賀氏郷(仮) @KogaUjisato

なお悪書追放運動で批判を受けたのは、特に冒険活劇であった。それは漫画だけでなく小説であってもバッシングされた。例えば直木賞作家、柴田錬三郎が書いた冒険空想小説も、「直木賞作家が非良心的な読物を書いて少年に害を与えるか」と批判の的になった。(橋本健午著『有害図書と青少年問題』より)

2011-01-24 23:51:38
古賀氏郷(仮) @KogaUjisato

名著「橋本健午『有害図書と青少年問題』」は現在絶版で、重版予定無しである。戦後から2000年代までの表現規制の流れや背景を余すところ無く書いたこの本は、現在最も必要とされているものだろう。ぜひ復刊ドットコムhttp://p.tl/IFdQで、再販希望の投票にご協力を

2011-01-24 23:51:49
古賀氏郷(仮) @KogaUjisato

メモ「■[漫画]1955年の漫画バッシング(悪書追放運動)について」http://d.hatena.ne.jp/lovelovedog/20070722/akusyo

2011-01-24 02:05:36