- tasobussharima1
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少女は、震えていた。眼と鼻の先で起きた爆発と、橋の崩壊。 そして……立ち上がる崩落の煙の向こうに、確かに埋もれた『得度兵器(かみさま)』があった。 スカートの端で口元を覆いながら、少女はそれでも破壊の中心を目指した。この光景を、記憶に留めておかねばならないと感じていた。
2016-01-24 21:04:07少女の震えは、恐れではなかった。それは、紛れも無く興奮だった。日常が音を立てて崩れ去る興奮。彼女は思わず失禁していたが、それすら自分では気づけない程に。 そして、少女の眼前で。埋もれた『かみさま』の腕が動いた。
2016-01-24 21:08:03(……ああ) ここで死んでもいい、と少女は思った。この一瞬には、その代償を払うだけの価値があると、その時の彼女は思った。だが、彼女の命はそこでは終わらなかった。 思わず目を細めた一瞬の後。彼女の前に、屈強な男の背中があった。
2016-01-24 21:12:07「怪我はないか」 男は言った。 「……うん」 少女は答えた。 「あなた……誰」 「クーカイ」 「徳の高そうな名前」 男が答えると、少女は笑った。 「あの『かみさま』……まだ生きてる」 「……『得度兵器』か」 少女は、自分たちが崇めていた『かみさま』が、兵器であることを知った。
2016-01-24 21:16:05この状況でまず「徳の高そうな名前」。この時代の価値観とかまだ掴みきれてないので何とも言えないが、かなり危うい #徳パンク
2016-01-24 21:17:36「行こう」 男……クーカイは少女の手を引く。 「俺の仲間が待ってる」 「……まかま?」 「ああ、ガンジーと言うんだが……合流したら、車で家まで送ろう」 だが、 「……いや」 少女は、クーカイの腕を跳ね除けた。
2016-01-24 21:20:04「知った」って。曲がりなりにもそれまで「かみさま」と呼んでたものを、これほどすぐに「兵器」に書き換えられるのか? #徳パンク
2016-01-24 21:20:07こんな素晴らしい時が、終わってしまうなんて。またあの日常の不和の中へ、逆戻りするなんて。 (そんなことは、耐えられない。死んだほうがマシ) 状況は、急転する。あたかも彼女の思いに答えるかのように、埋もれた得度兵器は……人を解脱させる機械は動き出し。その指の先に四度、光が宿る。
2016-01-24 21:24:04故に、いびつな少女は叫ぶ。 「わたしを……たすけて!」 と。少女の叫びは、クーカイと得度兵器、一体どちらに向けられたものだったのか。それとも、『どちらでも良かった』のか。それは彼女自身にすら、よくわからないことだった。 -----
2016-01-24 21:28:02得度兵器は、機械である。『人類の幸福』という目的から導き出された『全ての人間を解脱させる』という壮大な結論を遂行するための機械群である。 得度兵器は仏像ではない。まして、仏そのものではない。例え、結果として同じ目的に至ったとしても。機械が功徳を積むことは、有り得ない。
2016-01-24 21:32:04だが『それ(It)』は皮肉にも、未来仏の姿を取るに至った。 ……果たして、『同じ姿』と『同じ目的』を持つ存在が『同じではない』などということが。果たして、誰に断言しうるのであろうか。 まして、『得度兵器』となる以前の『それ(It)』の機能が消え失せてしまっているなどと。
2016-01-24 21:36:05