闇に堕ちかけたシンデレラ

もしかするとヴィランになってたかもしれなかったアシェンプテルbot
1
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

気弱なワニが闇に包まれた。ヴィランか…。 思うところが無いわけではない。私も光側の人間ではないからな…。私はサンドのように優しさを保てなかった。憎しみに染まってしまった。思い返せば、私もああなっていた…のかもしれない(以下、前回の小話の続編みたいな物を流すアシェンプテルbot)

2016-01-22 00:28:43
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

あれは2日目の武闘会だったか。私は母様の木からドレスを貰い、シンデレラとして武闘会に向かった。 前日に引き続き、私は大活躍。数多の敵を倒し、ついには王子殿にも勝ってしまった。誰も倒せなかった王子殿を倒した私に皆が見惚れていた。まさに武闘会の花だった。

2016-01-22 00:29:35
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

そんな私は王子殿に呼ばれ、人気の無いバルコニーで二人だけの時間を過ごしていた。 「先の戦いは凄かったよ。黄金の姫君」 「いえ、王子殿こそ無敗と謳われただけの実力でした」 黄金の姫君とは私の事だ。この日の私は黄金のブーツを履いていた。先日は銀のブーツだった。

2016-01-22 00:30:46
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

「あの…そんな大層な呼び名はお止めください…」 「では何と呼べば良い?」 「え!?あ、その…ア、アシェンプテルとお呼びください」 惨めな正体を明かすのが怖かった私は、咄嗟にアシェンプテルと名乗ってしまった。動転していたとはいえ虐めで付けられた名前を名乗るなんて不覚だ。

2016-01-22 00:31:42
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

「変わった名前だね…。では、アシェンプテル殿」 「はい」 王子殿はじっと私を見ておられた。私は視線をそらそうとしたが、その強い瞳に吸い込まれるようにそらせなかった。 「貴女のような強く美しい女性は初めて見た」 「そ、そんな…!私なんて大した事…」 「いや、貴女は美しく強い」

2016-01-22 00:33:19
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

悪く言えば安直な、何の変哲もない褒め言葉だった。だがあの時の私はこの言葉に舞い上がり、虜になった。 思えば私はチョロかったかもしれない。だが仕方無い。だって誰かに認めてもらえたのなんて、母様と父様が亡くなられて以来たったの一度も無かったのだから。 「ありがとう…ございます…」

2016-01-22 00:34:10
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

幸せだった。汚い灰にまみれながら扱き使われていた私を、この人は強く美しいと言ってくれた。幸せで気を失いそうだった。 母様がくれたシンデレラの力のお陰だ。この力で私は美しい姫君となり、この力で誰かに認めてもらって、 (この力で…) その時、私の脳裏に映ったのは、継母どもだった。

2016-01-22 00:35:16
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

私の全てを蹂躙し、何度殺したいと思ったか分からないあの3人。 (この力で…?) 私は傍に置かれた二振りの剣を見やる。 (この力があれば…?) 私は時計台を見る。時刻は11時半。 (私は…もっともっと幸せになれる…!?) 私の中の心の喜びが、悦びに変わった。

2016-01-22 00:36:11
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

「アシェンプテル殿、実はこの武闘会はただの交流試合ではない。本当の目的は…僕よりも強い女性を見つけ、妻とする事だった。ずっと見つからなかった。でも今日ついに…」 「王子殿、申し訳御座いません…。私はもう帰らなければなりません…。これにて…失礼します…」 「え!?ま、待ってくれ!」

2016-01-22 00:37:16
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

「本当に申し訳御座いません…。私は…12時の鐘が鳴る前に帰らないといけないのです…」 「12時…?ならまだ30分もあるじゃないか」 「はい…。だから…30分経ってしまう前に…シナイトイケナイ事ガ…アルノデス…」 「アシェンプテル殿…!?」 「今日ハ、夢ノヨウニ楽シカッタデス…」

2016-01-22 00:38:25
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

あの時の私は…多分闇の中に片足を突っ込んでいた。まあ結論から言うと、そうはならなかったのだがな。だが続きは明日にしよう。 しかし思い返せばこの時の私は、王子殿に関するとても重大なチャンスを棒に振ってしまっていたような気がするぞ…!全部継母どものせいだ!

2016-01-22 00:42:17
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

では続きを話そうか。王子殿を撒いた後の私は虚ろな目であの三人を探していた。意識は朦朧としていた筈なのに、自分があの時に何をやっていたのかは鮮明に憶えている。 推測だが、体は闇に呑まれつつも、心は完全に呑まれてなかったからではないか。ともかく私はしっかり憶えている。あの感覚までな。

2016-01-25 00:16:19
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

突如逃げ出した姫を探す為、城は大騒ぎだった。だが気にもならなかった。私はあの三人を探していた。 王子の玉の輿が狙えないと分かった三人は外れの方にいた。奴等は下心しか無いからな。こんな事だろうと思った。だが私にとっては好都合だった。人気の無いここなら、何をしようとバレないだろう。

2016-01-25 00:19:19
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

「ゴ機嫌ヨウ…?」 奴等は挨拶する私を一瞥し…すぐに顔をそむけた。呆れたものだ。この程度の礼節無くして殿方を射止められると思ったか。 ブンッ 私は奴等が肘をついていたテーブルを真っ二つにしてやった。 「挨拶ハ返スノガ淑女ノ礼儀…。私ハ毎朝、貴女達ニ挨拶シテイタトイウノニ…」

2016-01-25 00:23:19
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

その言葉でようやく奴等は、黄金の姫君の正体に気付いたようだ。何故ここに。そんな驚愕の目で私を見ている。実に気分がいい。 「継母様、見マシタカ?私ノ勇姿ヲ…。私、トテモ強クテ美シイオ姫様ニナレマシタ…。コノチカラガアレバ、オ前達ニ頭ヲ下ゲル必要モ無イ…。アハハハッ」

2016-01-25 00:26:14
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

武闘会は正々堂々。だがこれは武闘会ではない。ここからは私の復讐の時間だ。 剣から放たれた斬撃の衝撃波が奴等に突き刺さる。上がる悲鳴。だが…人気のないここならば誰にも聞こえない。 「アハハハッ!アハハハハハハッ!殺ス!殺シテヤル!!ソシテ私ハ幸セニナル!!!」

2016-01-25 00:28:49
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

逃げ惑う継母ども。だが彼女達の逃げ道を突然何かが遮った。私の鳩達だ。 「イイゾ!ソイツラヲ逃ガスナ!!私ガ皆殺シニスル!!」 そうか、この二羽は私の味方だ。この子達は母様が私の幸せの為に遣わしてくれた。私の幸せの為なら何だってしてくれる。私がどうなってしまっても。

2016-01-25 00:32:31
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

下の義姉が震えながらも剣を取った。そうだ。武闘会に出たからにはそれくらいの気概を見せてくれないとな。見上げた根性だ。だが所詮、私の敵ではない。 「ハアアッ!!!」 甘い太刀筋を往なし、カウンターで切り裂く。こんな奴に私は負けない。傷一つ負わない自信がある。

2016-01-25 00:37:17
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

だが、下の義姉と剣を交える私の背後から奇声が聞こえた。剣を打ち込む叫び声。 上の義姉だろう。戦いの最中に背後から斬りかかるか。この下衆め。だがいいだろう。これは武闘会ではない。私の復讐だ。私は卑怯も咎めない。そして私は遠慮しない。 「私ノ時間ニ踏ミ入ルナ!」

2016-01-25 00:38:57
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

振り向きざまに背後に手をかざす。私の手から灰が放たれ、霧のように空気中に蔓延する。義姉どもの動きが途端に鈍くなった。足も、剣も、何もかもが遅い。 面白い。こんな力まで使えるのか。こんな力があるのならそれはもう、 嬲り放題じゃないか。蹂躙し放題じゃないか。凌辱し放題じゃないか。

2016-01-25 00:39:34
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

「ハハッ、ハハハハッ!」 背後の遅すぎる剣撃をかわし、逆に蹴飛ばしてやる。上の義姉が怯んだ隙に、下の義姉の足に剣を叩き込む。上がる悲鳴が実に心地良い。 爪先を切断してやった。これでもう逃げられまい。 「貴様等ハ只デハ殺サナイ!最期マデ甚振ッテカラ殺シテヤル!!!」

2016-01-25 00:43:56
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

灰の霧から抜け出したのか上の義姉は逃げ出す。見苦しい。だが勿論逃がさない。 「ドコヘ行ク!?私ハ貴様等ノ嫌ガラセカラ逃ゲタ事ナド無カッタゾ?貴様モ逃ゲルナァ!!!」 だがそれは少し違った。奴の目的は逃げる事ではなかった。狙いは私の鳩達だった。 「止メロ…!止メロオオオオオオ!!」

2016-01-25 00:45:00
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

無我夢中で上の義姉の背を追い掛ける。金のブーツが煌めき、辺りに靴音が輝かしく響いた。私は鳩に剣を振り上げる上の義姉の首根っこを右手で掴み、力任せに地面に引きずり倒す。 「私ノ友達ニ…手ヲ出スナアアアア!!!」 そして怒りに任せ、左手の剣を上の義姉の顔面に、突き刺した。

2016-01-25 00:48:54
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

激痛にのたうち回る上の義姉を眺める。左手の短い方の剣。致命傷ではないが、間違いなく眼球は潰れただろう。今思えば、何と恐ろしい事をしたのだ。 だがこの時の私は、既に正気を保っていなかった。 「目を潰す。こんな手もあったか」そう思い、笑っていた。

2016-01-25 00:50:58
童話に興味を持ったアシェンプテルbot @manabuAschesama

「ヒハハハハッ!」 地面を転がる上の義姉の足を切断する。動き回るから狙いが外れたが、踵を切断してやった。悲鳴が更に増した。 上の義姉を放置し、さっき倒した下の義姉の元へ戻る。義姉は逃げようとしていたが、爪先を切断されてろくに歩けない。胸倉を掴み上げ、左手で顔面に剣を構える。

2016-01-25 00:51:58