裸の犬が首輪付けて歩いてる!◆2

悩み多き魔法使いの青年が、とある愛犬家と出会う話です この話は◆3まで続きます 前↓ ◆1 http://togetter.com/li/929640 続きを読む
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減衰世界 @decay_world

_裸の犬が首輪付けて歩いてる!

2016-01-25 17:18:53
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_広大な帝都の中心地。地価も高い、まさに一等地にその家はあった。3階建ての豪華な家で、ビルの隙間にひっそりと佇んでいた。  ベルを押すミクロメガス。隣に座るは犬のシーラ。返事が無い。使用人がいてもいいはずだが。遅れて、弱弱しい声で返事があったので中に入る。 11

2016-01-25 17:23:26
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_玄関近くのリビングにベッドが用意してあり、酷く痩せた老人が臥している。 「その制服、教導院のモンか。葬式はいらんぞ! 帰れ、帰れ! ゴホゴホッ」  幽鬼のような目で睨み、追い返そうとするが、ふりふりと尻尾を振るシーラを見て表情が変わる。 「フランソワーズ……?」 12

2016-01-25 17:29:10
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_老人はわなわなと震え、ベッドから上体を起こしシーラに向かって手を差し伸べる。 「おお……フランソワーズ! 帰ってきてくれたんだな……教導院の兄ちゃん! お前フランソワーズをどうするつもりだ! 返せ! フランソワーズを返せ!」  口から泡を飛ばし、叫ぶ老人。 13

2016-01-25 17:34:20
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_どうやらシーラのことをフランソワーズという犬と勘違いしているらしい。クシュスが言うには、老人と犬のイメージが混入したという。しかし、犬の姿は見当たらない。  ミクロメガスは困った顔で思案する。老人を見る。病に侵され、死相が浮かんでいる。部屋を見渡す。荒れ果てた室内。 14

2016-01-25 17:38:43
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_恐らく、この老人は孤独なのだ。誰も身の回りの世話をせず、看病にも見舞いにも訪れないのだろう。  ミクロメガスはシーラを抱いて、静かに言った。 「シーラ。一晩預ける。いい子にしてるんだよ」  彼はシーラを置いて、一礼し、家を去った。 15

2016-01-25 17:42:52
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「おお……フランソワーズ。こちらにおいで」  シーラは素直に老人のベッドに駆け上り、その脇に大人しく座った。老人はしっかりとシーラを抱きしめ、静かに泣いていた。 「ありがとう……帰ってきてくれたんだね、フランソワーズ」  そして、日が暮れていく。 16

2016-01-25 17:46:30
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「フランソワーズ……お前だけだよ。ワシの傍にいてくれるのは。女は追いかけても逃げていく。友人だと思っていたら、裏切られる。誰もがワシの隣を通り過ぎていった。ただ……お前だけが、いつもの散歩で、必ずワシの隣を歩いてくれた……」  シーラは老人の濡れた頬を舐める。 17

2016-01-25 17:51:14
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_老人は上体を起こし、サイドテーブルの紙に何かを書き始めた。懺悔は続いている。 「お前をまだまだ可愛がってやりたかった。寂しかったろうに、夜泣きしたお前を叱ってすまん……もっとおやつを上げればよかった。散歩をサボった日もあったなぁ……すまん……すまん……」 18

2016-01-25 17:56:01
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_翌朝、眠りについた老人が目覚めることは無かった。シーラは老人が冷たくなっても離れることは無く、一晩を共にした。  シーラは物音に気付いて耳を立てる。誰かが家に入ってきた。主人の足音でも匂いでもない。 「おっ、ジジイ、くたばったようだな」 19

2016-01-25 18:01:39
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_詰襟を着た粗野な男。服は着崩している。男が土足で床を踏むたびに、魔力の風が巻き起こる。魔法使いだ! 「いい家じゃねぇか。ゴミを片付けて、改装するかね」  その言葉に、老人に対する敬意は無かった。 20

2016-01-25 18:05:41
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_裸の犬が首輪付けて歩いてる! ◆2終わり ◆3へつづく

2016-01-25 18:06:56