裸の犬が首輪付けて歩いてる!◆3(終)
_シーラは鼻先に深く怒りのしわを刻み、魔法使いを威嚇する。魔法使いはと言うと、シーラには気にも留めずリビングに侵入し近くの戸棚を漁っている。 吠えるシーラをちらりと見て、嘲る魔法使い。 「犬が吠えるんじゃねぇよ。もうこの家の持ち主はいないんだ」 21
2016-01-26 18:12:00_魔法使いにも法はある。帝都において土地は重要であり、所有者が土地にいる限り土地の権利は守られる。 だが老人の死と共に土地の結界が破れ、その権利も、侵入できるようになった魔法使いにいくらでも手を加えられてしまうだろう。シーラはそれを知っている。 22
2016-01-26 18:16:28_魔法使いがベッドの脇のサイドテーブルに気付いた。何かの紙が置いてある。威嚇を続けるシーラ。 「どけよ、犬コロ。人間でも敵わない魔法使いだぜぇ?」 魔法使いが手のひらの上でバチバチと稲妻を迸らせる。シーラはひるまない。 23
2016-01-26 18:20:33「死ね、犬が……?」 魔法使いは信じられないものを見た。シーラが……犬が2本足で立った。そしてシーラは、めきめきと身長を伸ばしていく。 身体から獣毛が消えていく。顔が平らになる。胸が膨らんでいく。四肢が伸びていく。そう、大人の女性へと変わっていく。 24
2016-01-26 18:25:49_その現象を、魔法使いはよく知っていた。 「じ、人狼……」 魔法使いは稲妻をシーラにぶつける。しかし、全裸のシーラの、白く美しい肌に傷一つつけることはできない。シーラは怒りの形相で魔法使いを睨む。 「ひっ……死ね! 燃えろ! 凍えろ! 破裂しろ!」 25
2016-01-26 18:31:29_どの魔法もシーラには効かなかった。シーラは腕を振りかぶり、魔法使いの頭に鉄拳を叩き込む! 爆発したように頭が吹っ飛び、破片すら残さず塵になる。 「葬式は、教導院におまかせを」 シーラは最後にぽつりと呟いた。そうして、全てが終わった。 26
2016-01-26 18:41:28_ミクロメガスは裸の犬……シーラを散歩させていた。教導院の前庭には光が溢れ、ベンチには老人が座っている。目の前には高くそびえる、角砂糖を積み上げたような奇妙な建築物。 「失敗でもなかったな、今回は」 彼は一人呟く。 28
2016-01-26 18:53:24_その日の午後、ミクロメガスは教導院総帥に再び呼び出された。彼女は相変わらずまんじゅうのようで、椅子に座って机に肘をついている。その糸のような目はどこか嬉しそうだ。 「貴方の部下、シーラさんに寄付が来てるわよ。一等地に住んでいた老人なんだけど」 29
2016-01-26 18:58:46「心当たりありませんが」 「確かに、教導院のシーラ様へって遺書に書いてあったわよ。遺産を彼女に全部相続するって。ねぇ、この資産があれば貴方の失敗の埋め合わせにできるけど。いい話じゃない?」 ミクロメガスはにやりと笑って肩をすくめた。 30
2016-01-26 19:03:49