即興小説"深夜特急"「子子子子子子子子子子子子とかなり背の高い芦」
即興小説深夜特急に参加します! 1/29 22:00-24:00 立夏さん@ritsu1125 と共に、いただいた単語を使用して交互で即興小説をつくります。 下記ハッシュタグをご注目! #深夜特急24
2016-01-23 22:30:30今回のご乗車に関するうすいルール ・22:00-24:00(アバウト) ・途中乗車・下車歓迎 ・立夏 @ritsu1125 と藤長由佳 @folofolof の交互即興 ・先攻立夏、後攻藤長 ・事前に頂いた単語を文中に使用する「単語縛り」 #深夜特急24
2016-01-29 22:01:26というわけで、いただいた単語をおさらいしましょう。(提供者様省略、最後にご紹介します!) 餅、水道水、空腹のアライグマ、アイドル、爆笑、夏の風、月の裏側、強制開口具、季節外れの桜、単なる義歯、壊れた財布、かなり背の高い芦、子子子子子子子子子子子子、通りゃんせ #深夜特急24
2016-01-29 22:03:57注)もし私の出したのが抜けているよ、と言う場合には途中でも構いませんのでリプライ下さい! これらの単語すべてを最低一回、必ず使うというルールが今回のキモ!(同一単語の複数回使用はアリとします) #深夜特急24
2016-01-29 22:05:24まとめるとこーゆーことです! で、せっかくなので、ここからくじ引きでふたつ選んで、それをタイトルにします! #深夜特急24 pic.twitter.com/jNgGmVXWss
2016-01-29 22:08:53それでは、発車します。 即興小説「深夜特急」 ------ 「子子子子子子子子子子子子とかなり背の高い芦」 私はある道の上に立っていた。 #深夜特急24
2016-01-29 22:14:31でこぼこのアスファルトで覆われたその道は所々雑草が侵食していた。両側にはトタン屋根の民家がならんでいたが、雨戸は固く閉まっている。 道に面した庭の蛇口から水道水が垂れている。 #深夜特急24
2016-01-29 22:24:04タタンタタンと水道水のリズムを聞いていると私は大切な用事があったような気がし始める。しかしどうしても思い出せない。たとえば自分がアイドルでコンサートは間もなく始まって、たくさんの観衆が私を待っているような気がしてくる。そうだ、私はアイドルなのである。 #深夜特急24
2016-01-29 22:27:16赤いスカートをひるがえして毎夜練習していたターンをくるりと決める。かんぺきだ。今すぐスカウトマンがヘリコプターでやってきて、 私をここから連れ出してくれるに違いない。想像のステージの上でのりのりのわたしが歌う通りゃんせを、爆笑が遮った。 #深夜特急24
2016-01-29 22:34:41笑っている。観衆が笑っているのだ。子子子と子子子と子子子と子子子が笑っている。ト音記号とヘ音記号が私を蔑んでいる。お前なんかの歌で踊れるモノか、お前なんかの通りゃんせで通れるモノか。子子子と子子子が歯がない歯で笑っている。シシシ、シシシ、シシシ。シの音が出ない。 #深夜特急24
2016-01-29 22:39:25シの音を探して何度もファルセットをかける。月の裏側まで届くような、道に面した民家の曇りガラスがみんな割れてしまうようなシ!シ!観客の爆笑が怒号にかわる。飛び出し始めた喉仏が痛む。 #深夜特急24
2016-01-29 22:47:52子子子の単なる義歯単なる義シ単なるギシ、シを!シを!怒号は止まらない何故だろう。奴らの口は開きっぱなしなのだろうか? そうだそうだった。子子子と子子子と子子子と子子子の内、子子子と子子子と子子子の口は強制開口具が引っかけられていてどうにも閉じられないのだった。 #深夜特急24
2016-01-29 22:49:12観客の一人がステージに飛び込んできた。空いた口が塞がらないよ、お前なんかシシシシシんでしまえと言われる前に、餅を拾って口に突っ込む。気道確保!掃除機!掃除機!倒れた観客をとりまいて他の観客が騒いでいる間に、宙返り前転で背景幕の向こうへ逃げだした。 #深夜特急24
2016-01-29 23:01:01前転のときに掃除機のコンセントを足に引っかけた。掃除機が倒れ観客はドミノのようにパタパタと倒れているような気がして何コレとっても、アメイジングだ。観客たちめ結局嬉しそうだ。私は遠くへ走る。走る肺が苦しい。苦しくてシんでしまう。赤いスカートが引き裂かれそうだ。 #深夜特急24
2016-01-29 23:06:04遠くへ、遠くへ、遠くへ、それだけ考えてひたすら走っていたら、ぐいっと後ろへ引っ張られるようにして転んだ。振り向くと、赤いスカートが伸びた枝に引っかかっている。転んだ拍子に壊れた財布のがまぐちから100円玉が散らばって、くるくると回って、それから倒れた。 #深夜特急24
2016-01-29 23:14:48チャリン 私はそうしてその場から動けなかった。 芦が揺れているように感じられる。でこぼこのアスファルトで覆われたように見えるその道は所々雑草が浸食している気がする。両側にはトタン屋根の民家さながらの何かが並んでいる。雨戸が固く閉まっているかのようなナニカ。 #深夜特急24
2016-01-29 23:18:49道に面した民家の庭のようななにかから垂れた水道水のようななにかが倒れた私のほうまで流れてきて頬っぺたを濡らした。冷たい。 #深夜特急24
2016-01-29 23:24:07この水はなんでしょうか。 私は尋ねる。 アナタは誰です。 反対に私を尋ね返す声がする。 それは、私が答えなければいけないことなのか。 芦はぐんぐんとその背を伸ばしてく。夏の風に揺られて、いよいよ私の背を追い越して天高く超えていく。 #深夜特急24
2016-01-29 23:28:27ぐんぐんと伸びた芦は私のアタマの上で重なりあって、そこは河原に作った秘密基地になった。小さな洞穴のようなそこからは土手に並ぶ桜の並木がみえる。秘密基地の入り口から、誰かがひょいと覗いた。 #深夜特急24
2016-01-29 23:36:27飛び出た喉仏をごつごつした手の平で抑えて笑う大人の私には歯がなかった。赤いスカートが大好きだった少年のわたしにやさしく手を延べて、大人の私は「帰ろう」と言った。 #深夜特急24
2016-01-29 23:42:18私たちはふたりで歌を歌った。 ドはドーナツのド、レはレモンのレ、ミはみんなのミ、ファはファイトのファ、ソは青い空、ラは、ラッパのラ、 シは どこへ帰るの、と空腹のアライグマが尋ねた。 #深夜特急24
2016-01-29 23:47:22