ついのべ1月分まとめ

1日1本をノルマに書き続けた140字小説の1月分のまとめ。
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コオロ @ko_ro506

#twnovel 「凶器がわかった」新年早々に起きた殺人事件。探偵はそう切り出した。「年賀状です」だが、独り暮らしのホトケには一通も届いていなかった。「追い詰められ、家族のない彼は、名誉のために自らの命を絶つしかなかった。年賀状がないのが当然の…喪中となるために」自殺だったか…。

2016-01-01 14:06:26
コオロ @ko_ro506

#twnovel 後に史上最悪の暗殺事件と語り継がれることになる異文明との調印式は、開始当初は厳かに、しかし和やかに執り行われた。日本側の大使は言う。「我が国では今、新年を祝っておりまして。特別なおもてなしを用意させていただきました」そして運ばれてくる料理。「餅、というものです」

2016-01-02 21:50:46
コオロ @ko_ro506

#twnovel ギャンブル規制の対象となって以来、福袋はアングラ化、店側の提示するクエストをこなさなければ購入できなくなった。そうして手に入れたとしても、中身は体の良い在庫処分ばかりである。それでもかつての伝説を信じて買う客は「冒険者」、福袋は「ミミック」と隠語で呼ばれている。

2016-01-03 22:17:30
コオロ @ko_ro506

#twnovel 頭に思い浮かべただけの言葉でも読み取れる機械が発明された。当初は公表されず、思想警察のみが所持していたが、やがて一般へも流出。本音と建前は逆転し、人々は口では悪態をつきながら、頭でキレイ事を考えるようになった。後世で総ツンデレ社会と呼ばれる黄金期の到来である。

2016-01-04 22:06:11
コオロ @ko_ro506

#twnovel 人に訊けば大抵のことは解決する。訊き難い相手と、訊き辛い内容でなければ。俺のような探偵はその時のためにいる。俺は女に、恋人から預かったメモを読み上げた。「今朝めっっちゃ機嫌悪かったけど生理?生理なの?」そして代わりに殴られる。探偵はタフでなければ生きられない。

2016-01-05 18:59:20

ついのべ三題ったー「白鳥」「雨」「ワイシャツ」

コオロ @ko_ro506

#twnovel 玄関を開けると白鳥がいた。「先日助けていただいたワイシャツです」喋った。「雨が降る前に取り込んで貰いまして」当然では。「恩返しに来ました」普通、人で来ない?「目立ってしまうので…」そして白鳥は裸ワイシャツの美女に。なんてことが起きんかなと今日も袖を通す。出勤だ。

2016-01-06 07:33:23
コオロ @ko_ro506

#twnovel 小説家の私のもとに1件のクレームが来た。「なぜ自分の少年時代が小説になっているのか」そんなはずはない、私の小説はすべて創作だ。だが確かに、彼の語る半生は小説と酷似していた。私は歓喜した。ちょうど続きに困ってたんだ。それが私がストーカーになった動機です、刑事さん。

2016-01-07 07:48:51
コオロ @ko_ro506

#twnovel 『せりなずな ごぎょうはこべら ほとけのざ すずなすずしろ…』古より伝わる謎の呪文を前に、冒険者たちは途方に暮れる。やがて1人が思い出す。「これは薬草の名前だ」薬草を手に入れる度に記憶を取り戻す冒険者たち。七草粥を食べ、正月ボケを回復し、日常へ戻っていく。

2016-01-08 07:56:01

ついのべ三題ったー「留守」「予測」「男」

コオロ @ko_ro506

#twnovel 男には、その家の留守を見抜く力があった。この力を使えば空き巣になれるのではと、鍵開けを学び始めた。男に予測できなかったのは、その家には「いないもの」として娘が閉じ込められていたこと。俺の力はこのためにあったのだと、男は今日も娘の待つ家に帰る。鍵はかかっていない。

2016-01-09 08:31:18

140字小説コンテスト お題「横綱みかん」

コオロ @ko_ro506

#twnovel 横綱みかん。お袋から贈られてきたソイツはそう名乗り、俺の部屋に上がり込んだ。でかい。受験を応援するといって、するのは何故かぶつかり稽古。気分転換らしい。とにかくでかい。あふれる果汁が、部屋を柑橘系の香りで満たす。俺、がんばるよ。残り香に誓った。また贈って欲しい。

2016-01-10 11:46:31
コオロ @ko_ro506

#twnovel 「『飲酒した』と自首した自称17歳アイドルの裁判が、本日より始まります。被告は既に成人していると見られていますが、検察側の被告の熱狂的なファンが17歳と信じて告発したという経緯があり、弁護人の話では『人はどこまで夢を見られるのか』が試される裁判となる模様です」

2016-01-11 07:39:02
コオロ @ko_ro506

#twnovel 土地を不当に占拠した容疑で村の長老が逮捕された。長老は「勇者にしか抜けない」剣があることを理由に工事を遅らせていたが、剣は業者でも簡単に引き抜けたことで偽装を自白。おかげでその業者の男が勇者だと誰も気づかず、世界は魔王が支配した。おしまい #ファンタジー社会問題

2016-01-12 07:06:10

ついのべ三題ったー「速度」「アメンボ」「自己暗示」

コオロ @ko_ro506

#twnovel 大事なのは速度だ。右足が沈む前に左足を出す、それを交互に繰り返せば水の上を走れる。そして自らにアメンボだと暗示をかけ、沈んだ。「当然です。アメンボは水面を走ってはいない」探偵は私を見る。「これは誤認を利用した計画殺人です」逆立った毛が汗を撥く。アメンボのように。

2016-01-13 07:34:09

twnvday1/14 お題「去る」

コオロ @ko_ro506

#twnvday 大地が割れ、ビルが倒れる。車は吹き飛び、人は叫び惑う。電撃、火花、爆炎、烈風。飛び交う閃光と鳴り止まぬ丁々発止の金属音。そんな騒がしい日々は、もう白昼夢の中にしかない。みんなどこへ行ったのだろう。 僕はここにいるのに。ただ、手を引かれてるだけで。戻れないだけで。

2016-01-14 07:58:05
コオロ @ko_ro506

#twnovel エルフ組合が「若者の人里離れにより、森を出るエルフは現在0人」という衝撃の発表をして以来、人間が営業時だけ耳を伸ばし、年齢を詐称する「ビジネスエルフ」の摘発が相次いでいる。店側は「耳しか見ていなかったので気づかなかった」と供述している。 #ファンタジー社会問題

2016-01-15 07:15:02
コオロ @ko_ro506

センター試験における最初の難関は「会場に着くこと」。ここを軽んじた受験生は… #twnovel 「ねえ…運転手さん」「はい」「試験会場までって言ったよね」「はい」「離れてってんだけど。タクシー業界の近道なの?」「息子が」「は?」「息子も受験生なんだ。ライバルは減らしておきたい」

2016-01-16 07:35:04

ついのべ三題ったー「目玉焼き」「三日月」「一人」

コオロ @ko_ro506

#twnovel 目玉焼きを一人で作ろうとしたんだ。簡単だと思った。そしたら黄身が破れて、慌てて玉子焼きに路線変更したけど、間に合わずに不細工な三日月みたくなった。強がらずに訊けばよかった。「その流れで最初に言うことが『オッケー、グーグル』っていうのはどういうことよ」すみません。

2016-01-17 09:28:57
コオロ @ko_ro506

#twnovel 都会で大雪だというので表に出たが、こちらは雪国だというのに雪かきするほど積もっていなかった。ふと目を凝らすと、例年なら出動はもっと遅いはずの除雪車がフル稼働。不足していたイベント用の雪をかき集めているのだろう。誰かが作った小さい雪だるまも砕かれ、運ばれていった。

2016-01-18 07:38:40
コオロ @ko_ro506

#twnovel「ガチャで当てたいやつを引かせてやる」その男の言う通りにすると、本当にSレアが手に入った。「相手はプログラム、パターンを読めば簡単だ」俺はまだ知らなかった。男は読んでいたのではなく、ハッキングしていたこと。そのSレアは絶対に引けないようプログラムされていたことを。

2016-01-19 07:14:36