量子テレポーテーションの深さを研究者が正しく楽しむ肝

量子テレポーテーションでは、量子情報の光速度以下の通信しかできません。だからテレポーテーションという名は使わないほうが良いという意見もあったので、「なぜ専門家はテレポーテーションと呼びたくなるか」を量子情報物理学の視点から解説しました。
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Masahiro Hotta @hottaqu

物理学研究者の皆さんの中でも量子テレポーテーションを誤解されてる方が、まだ多いかもしれません。因果律を壊した瞬間的な通信がもちろんできない「健全な物理」ですが、何故「テレポーテーション」と呼ばれるのかを知っておくと、楽しいですよ。 twitter.com/hottaqu/status…

2016-02-01 07:26:08
Masahiro Hotta @hottaqu

.@hottaqu【量子テレポーテーションの深さを研究者が正しく楽しむ肝】 ①まずテレポをみる視点によって全く異なる描像が現れることを理解し、しかし互いに矛盾がないことを楽しむ。「送り手のアリスの視点」では測定の瞬間に受け手のボブのスピンへ量子情報が飛ぶ。確かにテレポに見える。

2016-01-31 05:01:35
Masahiro Hotta @hottaqu

.@hottaqu【量子テレポーテーションの深さを研究者が正しく楽しむ肝】 ①まずテレポをみる視点によって全く異なる描像が現れることを理解し、しかし互いに矛盾がないことを楽しむ。「送り手のアリスの視点」では測定の瞬間に受け手のボブのスピンへ量子情報が飛ぶ。確かにテレポに見える。

2016-01-31 05:01:35
Masahiro Hotta @hottaqu

.@hottaqu【量子テレポーテーションの深さを研究者が正しく楽しむ肝】 ①(続き)「受け手のボブの視点」では、アリスの測定時刻に自分のスピンの状態は変化せず、アリスのスピンともつれた状態であり、縮約状態は最大エントロピー状態のまま。その時刻にテレポは起きていない。

2016-01-31 05:03:57
Masahiro Hotta @hottaqu

.@hottaqu【量子テレポーテーションの深さを研究者が正しく楽しむ肝】 ①(続き)「受け手のボブの視点」では、アリスから光速度以下で送られる古典的な測定結果が届いてから、ボブのスピンはアリスが送った量子情報に依存することになる。通信が光速度以下なのできちんと因果律は保たれる。

2016-01-31 05:06:07
Masahiro Hotta @hottaqu

.@hottaqu【量子テレポーテーションの深さを研究者が正しく楽しむ肝】 ①(続き)ところが「テレポが終わった後にボブが過去を振り返って自分のスピンの状態を推定する視点」では、再びボブにとってもテレポが起きているように考えることが可能。

2016-01-31 05:08:01
Masahiro Hotta @hottaqu

.@hottaqu【量子テレポーテーションの深さを研究者が正しく楽しむ肝】 ①(続き)「テレポ終了後にボブが過去を振り返って自分のスピンの状態を推定する視点」では、まず終わった時刻には、確かにボブのスピンはアリスが転送した未知の純粋状態|Ψ〉になってる。

2016-01-31 05:11:08
Masahiro Hotta @hottaqu

.@hottaqu【量子テレポーテーションの深さを研究者が正しく楽しむ肝】 ①(続き)「テレポ終了後にボブが過去を振り返って自分のスピンの状態を推定する視点」ところがボブがその終わる直前にしたのは|Ψ〉に依存しない局所ユニタリ操作だけ。測定とかしていない。

2016-01-31 05:12:41
Masahiro Hotta @hottaqu

.@hottaqu【量子テレポーテーションの深さを研究者が正しく楽しむ肝】 ①(続き)「テレポ終了後にボブが過去を振り返って自分のスピンの状態を推定する視点」だからボブの操作以前のボブのスピンはU(α)|Ψ〉という|Ψ〉に依存した純粋状態。しかも|Ψ〉の情報量は|Ψ〉と同じまま。

2016-01-31 05:15:45
Masahiro Hotta @hottaqu

.@hottaqu【量子テレポーテーションの深さを研究者が正しく楽しむ肝】 ①(続き)「テレポ終了後にボブが過去を振り返って自分のスピンの状態を推定する視点」ところがボブのスピンはU(α)の操作以前に相互作用を全く受けないようにきっちり保管されていた。でも|Ψ〉の情報を持ってる。

2016-01-31 05:19:23
Masahiro Hotta @hottaqu

.@hottaqu【量子テレポーテーションの深さを研究者が正しく楽しむ肝】 ①(続き)「テレポ終了後にボブが過去を振り返って自分のスピンの状態を推定する視点」ボブのユニタリ操作時刻は「早くても」アリスから光速で測定結果が届いた後。でもその時刻前にスピンは|Ψ〉の情報を持ってる。

2016-01-31 05:24:56
Masahiro Hotta @hottaqu

.@hottaqu【量子テレポーテーションの深さを研究者が正しく楽しむ肝】 ①(続き)「テレポ終了後にボブが過去を振り返って自分のスピンの状態を推定する視点」では、だから超光速で先回りしてボブのスピンに未知状態|Ψ〉の情報は届けられていて、確かにテレポーテーションと呼びたくなる。

2016-01-31 05:27:11
Masahiro Hotta @hottaqu

.@hottaqu【量子テレポーテーションの深さを研究者が正しく楽しむ肝】 ②瞬間移動に見えると感じるためには、アリスの送る2ビットの古典情報であるベル測定結果は完全にランダムで、各結果の出現確率は|Ψ〉に依存しないことにも意識する必要あり。この古典通信で伝わるものは何もない。

2016-01-31 05:32:07
Masahiro Hotta @hottaqu

.@hottaqu【量子テレポーテーションの深さを研究者が正しく楽しむ肝】 ③瞬間移動に感じるためには、量子力学の純粋状態の意味を正しく思い出しておくことも大切。注目系は担える最大の量子情報をその内部に保持している状態が、純粋状態。この場合、他の量子系との相関は全て零。

2016-01-31 05:35:45
Masahiro Hotta @hottaqu

.@hottaqu【量子テレポーテーションの深さを研究者が正しく楽しむ肝】 ③(続き)だから①のボブが過去の自分のスピンの状態を推定する視点では、ボブのユニタリ操作の前も純粋状態で、アリスのスピンとはもつれていなかった(相関が無い)と考えるのも合理的推定であることに気付くこと。

2016-01-31 05:39:50
Masahiro Hotta @hottaqu

.@hottaqu【量子テレポーテーションの深さを研究者が正しく楽しむ肝】 ③(続き)だからボブにとっては2つの異なる描像がある。一方は超光速の出てこない因果律が満たされた描像と、他方は未来からの推定による超光速が現る描像。しかしどちらの描像も正しいのが、量子力学の楽しい部分。

2016-01-31 05:44:09
Masahiro Hotta @hottaqu

.@hottaqu【量子テレポーテーションの深さを研究者が正しく楽しむ肝】 ③(続き)ボブのスピンに超光速で|Ψ〉の情報が届いたように見えても、それはアリスの測定の事象に対して相対論でいうところの空間的(space-like)領域の話。

2016-01-31 05:47:42
Masahiro Hotta @hottaqu

.@hottaqu【量子テレポーテーションの深さを研究者が正しく楽しむ肝】 ③(続き)だから超光速で届いているはずのその|Ψ〉の情報を、アリスの測定結果の報告が届く未来の時刻まで待たないとボブは全く使えない。それで有用な情報を光速度を超えた速さでは、ボブはアリスからもらえない。

2016-01-31 05:50:53
Masahiro Hotta @hottaqu

なんか説明が変だったな。アリスが送る測定結果を知らないと、並んでいるボブのスピンのそれぞれがどのαの値(αは1,2,3,4のどれか)のU(α)|Ψ〉という状態にあるか分からないから、超光速で届いていた|Ψ〉の情報も使えないということ。twitter.com/hottaqu/status…

2016-02-01 08:09:04
Masahiro Hotta @hottaqu

.@hottaqu【量子テレポーテーションの深さを研究者が正しく楽しむ肝】 ④ 数式も含めてより詳しく楽しむには、下記ブログを参照。 ⇒「量子テレポーテーションは、本当はテレポーテーションではないのか。 」mhotta.hatenablog.com/entry/2014/05/…

2016-01-31 05:53:23
Masahiro Hotta @hottaqu

.@hottaqu【量子テレポーテーションの深さを研究者が正しく楽しむ肝】 ⑤量子状態(波動関数)を実在とみると、ボブの2つの描像に関して、途端に矛盾が起きます。量子状態は認識論的対象であり、観測者が取り出せる対象系の情報の束(知識)に過ぎないという大前提を決して忘れないこと。

2016-01-31 06:07:28
Masahiro Hotta @hottaqu

.@hottaqu【量子テレポーテーションの深さを研究者が正しく楽しむ肝】 ⑥水素原子が20世紀初頭の量子力学の創生や発展の礎だったように、量子テレポーテーションは「量子情報物理学」の創生、発展の礎であるという歴史的価値も十分に楽しめる事案。

2016-01-31 06:11:06
Masahiro Hotta @hottaqu

.@hottaqu【量子テレポーテーションの深さを研究者が正しく楽しむ肝】 ⑦量子状態そのものがモノの個性であり、モノそのものという認識をもつこと。量子力学では個々の電子や光子には全く個性がなく区別ができない。人体とか辞書とかのモノの個性はその多体系の量子状態(量子情報)である。

2016-01-31 06:22:17
Masahiro Hotta @hottaqu

.@hottaqu【量子テレポーテーションの深さを研究者が正しく楽しむ肝】 ⑦(続き)だから量子系の量子状態のテレポーテーションは、モノそのもの転送のテレポーテーションとみなせる楽しみがある。実際テレポーテーション後にはアリスの手元に|Ψ〉の情報は全く残らないことも分かる。

2016-01-31 06:24:43
Masahiro Hotta @hottaqu

.@hottaqu【量子テレポーテーションの深さを研究者が正しく楽しむ肝】 ⑦(続き)一方ボブの手元にはモノとしての完全な|Ψ〉が作られている。古典通信でアリスからボブに送られた2ビットの測定結果は完全にランダムで、|Ψ〉依存性もない。"モノ"は表の世界に出ることなくボブに転送。

2016-01-31 06:27:53
Masahiro Hotta @hottaqu

.@hottaqu【量子テレポーテーションの深さを研究者が正しく楽しむ肝】 ⑦(続き)アリスとボブが共有する量子的にもつれた2つのスピン(ベル対)は、どんなモノでも対岸に渡す橋のようなもの。

2016-02-01 06:59:01