- tasobussharima1
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「……良し」 深夜、ラマ・ミラルパ20世は人知れず徳ジェネレータの復旧に取り組んでいた。自身が徳エネルギーに精通する人間であることを隠すため、彼は人目につかぬこの時間帯に作業を行っているのである。
2016-01-10 21:04:07「『マニタービン』は問題なし、か」 自身の産んだ、徳カリプスの一因たる忌まわしき技術。一方で今それは、皮肉にも徳を持たぬ人々の命を繋いでいる。 「……いや」 技術そのものに、善悪は無い。と老ミラルパは思い直す。観音菩薩めいて幾つもの顔を持つのが、技術というものの本質なのだろう。
2016-01-10 21:08:08「後は徳ジェネレータ本体を稼働させれば……」 老人は傍らに安置されたソクシンブツを見やる。骨と皮ばかりになったその顔に、表情は無い。だが……このソクシンブツもまた、信ずる宗派は違えど衆生救済を願いながら入定していったことは間違いない筈だ。
2016-01-10 21:12:11徳カリプスから10年。発明者としてメンテナンスは続けようということなのだろうか。気になるのは「許すわけにはいかないあやつ」。 #徳パンク
2016-01-10 21:12:40「……有り難く、使わせて貰う」 そう呟き、ラマ・ミラルパ20世は徳ジェネレータの中へソクシンブツの搬入を開始する。徳ジェネレータの内部には、曼荼羅めいたシンプルな空間が広がっている。それは形而上と形而下とを繋ぐ場……即ち禅の思想に通づるところがあるためだ。
2016-01-10 21:16:09そういえば、マニタービンで徳エネルギーを運動エネルギーに変換するといっても、ソクシンブツをどのように使ってマニ車を回すのだろうか #徳パンク
2016-01-10 21:16:16「試運転を……」 内部点検を終了した高僧が、試運転プログラムを実行するためジェネレータの内部から出ようとした、その時。 「……馬鹿な!」 徳ジェネレータの曼荼羅模様が突如光り始めたではないか。 「起動しているだと」 徳ジェネレータが、起動している。
2016-01-10 21:20:06曼荼羅って比較的密に描きこんである印象があるのだけれど……。さて、搬入してからいかなる原理で徳エネルギーを取り出すのか? #徳パンク
2016-01-10 21:21:10それは高齢の徹夜作業によるミスか、或いは機械の故障によるものか定かではない。だが、事実としてジェネレータは起動していた。ソクシンブツがコロナめいた発光を纏う。 「ぐっ……」 そして、老人……ラマ・ミラルパ20世もまた。
2016-01-10 21:24:03あっ!? まさか取り出されつつある徳エネルギーをモロに浴びてしまうと成仏してこの世を去ってしまうのか!? #徳パンク
2016-01-10 21:25:59