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maroni_chang
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「京番茶」第二号の、「リアリティーを突き詰めた結果、押井守による映画版では『レイバーは役に立たない』という結論に達してしまい、劇場版第二作ではレイバーの戦闘シーンが数分しかないといった状況を招いた。」という所について、不用意に押井の話をすると押井警察がやってくるという話をしよう。
2016-02-07 22:28:06注:京番茶 第2号

結論から言うと「リアリティーを突き詰めた」結果、「レイバーは役に立たない」という結論に達した、は間違いである。よって「レイバーは役に立たない」という間違った前提をもとにした「レイバーの戦闘シーンが数分しかないといった状況を招いた」はミスリードだ。
2016-02-07 22:29:25
では、「なぜ『パト2』ではレイバーは役に立たないように見えるのか」という話になるが、この疑問を持つこと自体が、劇中の悪役・柘植の陰謀なのである。
2016-02-07 22:38:03
第一に「レイバーは役に立っている」。劇場版序盤シーンでPKOレイバー隊は潰滅しているが、それは「レイバーの運用に最も向かない高温多湿の熱帯雨林で、十分なバックアップもなしに単独で投入された」からであって、日本で役立たないとは言っていない。
2016-02-07 22:30:44注:「レイバーの運用に~投入された」は後藤隊長と荒川の台詞より。

むしろ、日本ではこの前提が成り立たないのだ。すなわち「高温多湿の熱帯雨林」ではないし、「十分なバックアップもなし」ということもない。「単独で投入」されることもない。これを裏付けるように、太田の訓練シーンがある。
2016-02-07 22:31:40
訓練生は太田に向かって「でもレイバーによる警備活動はペアーが原則ですし」と発言しているが、これはPKOレイバー隊のように、バックアップ無しで単独投入されることはないという前提を裏付けている。日本では多くの警察官がいて、レイバー隊がその中にいるから、レイバーはきちんと機能するのだ。
2016-02-07 22:32:56
しかしながら、東南アジアにおけるPKOレイバー隊は、ペアーの原則を崩して各個撃破されている。このことを見ると、パト2におけるレイバーを語るに当たっては、「日本ではレイバーは当たり前に機能する」すなわち「レイバーは当然に役に立つ」という前提を元に話を進めなければならないのだ。
2016-02-07 22:35:36
すると「リアリティを検討した結果レイバーは役に立たないと判断された」という認識がいかに過てるものか明白であろう。リアリティを検討した結果、「日本で当たり前に機能するものも、東南アジアでは機能しなくなる」という現象を描いたのだ。前提は百八十度違うことが見て取れるだろう。
2016-02-07 22:36:44
レイバーは役に立たないように見えるが、これは「高温多湿の熱帯雨林」「十分なバックアップもなしに単独で投入」というレイバーが機能不全に陥る2条件を、東京という場所で整えたという柘植の功績であって、後藤隊長以下特車二課は、巧みにこの2条件にハマらないよう誘導している。
2016-02-07 22:39:34
「高温多湿の熱帯雨林」というのはレイバーが身動きできず、歩兵に簡単に撃破されるような状況を指す。東京にたとえると、大量の人間がいる、なおかつどれが敵なのか味方なのか分からない状態(自衛隊・警察間の争いによる機能不全)。「十分なバックアップもなしに単独で投入」は無線のジャミング。
2016-02-07 22:41:44
日本は「レイバーは役に立つ」環境なのだ。自衛隊駐屯地前で後藤隊長はレイバーのデッキアップを拒否している。これはレイバーが立ち上がることにより、自衛隊の警戒を招く=警察の自衛隊に対する戦意の表明となるからであり、「立つだけで威嚇になる」というレイバーの顕著な優位性を示している。
2016-02-07 22:43:30
柘植の陰謀の手段(注:目的ではない)は「通信を混乱させ、レイバーの向かない環境を作りだし、レイバーを引っ張り出す」ということにあったのだから、のらりくらりと後藤隊長がレイバーを出さなかったのはそういう理由がある。レイバーが役に立たないから出さなかったのではないのだ。
2016-02-07 22:46:55
レイバーは役に立つ、が、この状況下でレイバーを出してしまったら各個撃破される。なぜならば、PKOレイバー隊と同じ状況下におかれるから。これがレイバーが出なかった理由。
2016-02-07 22:47:44
「首都を舞台として戦争状況を作り出す」ことが柘植の目的だったわけだが、最後までPKO部隊と同じ環境にレイバーを引っ張り出すことに腐心した結果、自衛隊ヘリにより爆撃を行うところまで達した一方で、後藤隊長はレイバーを易々と出すことに徹底して反抗し、柘植の陰謀に乗らないようにした。
2016-02-07 22:45:59
実のところ、「レイバーが役に立つ」ということは実際に「パト2」内部でも示されている。例えば南雲警部が冒頭「レイバーの拡散傾向が見られ……」と発言しているが、これはレイバーが人口に膾炙していることを示していて、レイバーが衰退している事を示すのでは全くない。
2016-02-07 22:48:51注:「人口に膾炙する」は僕が興奮するとついつい使ってしまうワードなのでここでは「広く普及する」程度の意味と考えてください。

仮に「レイバーが役に立たない」ということで劇を進めるのであれば「レイバーが拡散している」なんてことはおくびにも出さないはずだ。それまでレイバーが効果を発揮するのは、バビロンプロジェクトのような超巨大土木工事であったが、そうでない土木工事にも応用され始めた、と受け取るのが妥当だ。
2016-02-07 22:50:15
今一度整理しよう。柘植の目的は「首都を舞台として戦争状況を作り出す」であり、手段は「レイバーをPKOレイバー隊と同じ状況に追い込む」ことだ。挑発に乗ってレイバーがしゃしゃり出てきたら、各個撃破することにより戦争状況を作り出すことができる。だから後藤隊長はレイバーを出さなかった。
2016-02-07 22:52:50
柘植の手段が達成される前提として、「レイバーは役に立つ」という認識が共有されていなければならない。すなわち「一丁事あらばレイバーを出せば良い」という話になっていることに注目して欲しい。「事あらばレイバー」をまんまとやってしまったら、柘植の思い通りになってしまう。
2016-02-07 22:55:05
日本政府は「レイバーは日本で(軍用も含めて)これぐらい活躍しているから、PKOでも同様に活躍するだろう」と考えて適当に柘植を送り込んでしまったのだ。これが結局一番の失敗であり元凶だった。恨んだ柘植は「東京でも同じ事が起こりうるんだぞ」ということを示そうとした。
2016-02-07 22:56:03
結果、日本政府は柘植に「東京でも戦争状況が作り出される」ことを思い知らされ、しかも「レイバーが役に立たない状況は東京でも作りうる」ということを知らされたのだ。――しかしこれはあくまで柘植の思い通りに全てが運んだらの話である。
2016-02-07 22:56:58
柘植の思い通りに行っていたら、「レイバーを出さなきゃ行けない状況を作る」→「レイバーがまんまと出てくる」→「戦争状況が作り出される」という流れになるのだが、柘植の誤算は、レイバーがまんまと出てこなかったことなのだ。
2016-02-07 22:57:54