「デッドムーン・オン・ザ・レッドスカイ」 #7
(前回までのあらすじ:ダルマ・テンプルに呼び出されたニンジャスレイヤーの前に現れたのは、武装霊柩車ドライバーのデッドムーン。この第一の刺客を倒したフジキドの前に、真の刺客が姿を現す。それは武装霊柩車に積まれた棺の中に潜んでいたゾンビーニンジャ、レベナントであった)
2011-01-26 22:46:05(何と、ニンジャスレイヤーと親交のあったスガワラノ老人は、ソウカイヤの科学実験によってゾンビーニンジャに変えられていたのだ! 卑劣にも、この戦いの模様はトコロザワ・ピラーへと中継され、ソウカイヤの首領ラオモト・カンや、狂気の科学者リー先生のもとへリアルタイムで届けられている!)
2011-01-26 22:51:14ニンジャスレイヤーとレベナントは、互いにジュー・ジツの構えを取りながら、タタミの上を同心円状に回る。攻め込む隙をうかがっているのだ。一瞬の静寂。両者の見えないカラテがスパークする。そして動いた。ニンジャスレイヤーは流れるような動きで、バズーカを発射するかのごとき立膝の姿勢を取る!
2011-01-26 22:53:02「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーの腕がムチのようにしなり、とても危険なスリケンがレベナントの眉間に命中! だが敵はものともせず突き進んでくる! 「アバー」手首に結んだクナイが、ニンジャスレイヤーをえぐった!「グワーッ!」ニンジャ装束と肉を切り裂かれたものの、バク転で致命傷を回避!
2011-01-26 22:58:07「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーの腕が再びムチのようにしなり、致命的なスリケンがレベナントの心臓に命中! だが敵はものともせず突き進んでくる! 「アバー」手首に結んだクナイが、ニンジャスレイヤーをえぐった!「グワーッ!」ニンジャ装束と肉を切り裂かれたものの、側転で致命傷を回避!
2011-01-26 22:59:52「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーの腕が再びムチのようにしなり、油断ならないスリケンがレベナントの股間に命中! だが敵はものともせず突き進んでくる! 「アバー」手首に結んだクナイが、ニンジャスレイヤーをえぐった!「グワーッ!」ニンジャ装束と肉を切り裂かれたがブリッジで致命傷を回避!
2011-01-26 23:01:41「これは注目です! ゾンビーニンジャの使うネクロカラテは、まさに無敵なのです!」トコロザワ・ピラーにリレイされる画像情報を見ながら、リー先生はラオモトに対して冷静な科学的見解を示す。「ゾンビーニンジャは絶対に痛みや恐怖を感じません。普通のニンジャには取れない行動が取れるのです!」
2011-01-26 23:03:01「ムハハハハハ!」ラオモトはフブキ・ナハタ女史を横にはべらせ、その豊満なシリコン胸を手慰みにしながら哄笑した。卓上黄金マイクのスイッチを入れ、ニンジャスレイヤーを嘲笑う。「ムハハハハハ! 友人の手にかかって死ねるとは一石二鳥だな、ニンジャスレイヤー=サン? ムッハハハハハハー!」
2011-01-26 23:06:14「イヤーッ!」「アバー」「イヤーッ!」「アバー」テンプルでは、ニンジャたちの高速カラテが火花を散らしていた。チョップとチョップがぶつかり合う! ニンジャスレイヤーの高速レッグスイープをレベナントがジャンプでかわし、レベナントの高速ソバットをニンジャスレイヤーがダッキングでかわす!
2011-01-26 23:12:09並のニンジャ相手なら、必殺のカラテで一気に勝負をつけられる。だが、レベナントは心臓を破壊されようとも、平然と反撃してくるかもしれない。できることならば、スガワラノ=サンを一撃でアノヨに送りたい。……ニンジャスレイヤーの心は乱れていた。多くの事を考えすぎていたのだ。それは死を招く!
2011-01-26 23:18:40「アバー」「グワーッ!」ナムサン! ついにソバットが命中! ニンジャスレイヤーは素早くジュー・ジツのディフェンス姿勢を取ったが、その上からでもかなりのダメージだ。足の裏の摩擦熱でタタミを焼き焦がしながら、中腰姿勢のニンジャスレイヤーの体は数メートル後ろに押される。ナムアミダブツ!
2011-01-26 23:26:12レベナントの怪力は想像を絶するものだった。何故、死体であるゾンビーニンジャにこのような力があるのか? その答えはニューロンにあった。人間は脳によって筋肉にリミットをかけ、実際の筋肉量に比して数パーセントの力しか使えなくしている。さもなくば、自らの肉体自体がダメージを負うからだ。
2011-01-26 23:30:35ニンジャソウル憑依者の場合、この数値は爆発的に飛躍し、筋肉の持つポテンシャル能力の数十パーセントまでを安定して引き出せる。いわゆるニンジャ筋力だ。だが、読者の皆さんは死んだカエルの筋肉に電極を差したことがあるだろうか? そして、その破壊力を試したことは? …答えは100%なのだ。
2011-01-26 23:32:51「イヤーッ!」「アバー」ニンジャスレイヤーのチョップが腕で弾かれる。骨にヒビが入るも、レベナントは苦痛を感じない。まるでノレンを殴っているかのような手ごたえの無さだ。「アバー」「グワーッ!」逆にレベナントのクナイダート・パンチがニンジャスレイヤーの腹をえぐり、壁まで弾き飛ばした!
2011-01-26 23:34:49ニンジャスレイヤーは背中から壁にたたきつけられ、切り裂かれた無数の白い花のベッドの中に落下した。視界が揺らぐ。ウカツ! あのクナイ・ダートには、何らかの毒薬が塗りこまれていたのかもしれぬ。(((だがナラクの力は借りぬぞ!)))ニンジャスレイヤーは立ち上がり、カラテをふりしぼった!
2011-01-26 23:37:05「アバー……」レベナントは紫色の目を輝かせながら、両手首に結んだクナイダートを胸の前で交差させ、威圧的にニンジャスレイヤーに近づいてくる。そして、ちょうつがいの外れた顎をがくんと開き、おもむろに言葉を発した。「アバー……死よりも悲惨なものは何か……?」ブッダ! またもや禅問答だ!
2011-01-26 23:40:14「レベナントがまた喋った!?」遠く離れたトコロザワ・ピラーの宴会室でラオモトらと共に大型ディスプレイを眺めていたリー先生は、驚きの表情を隠せなかった。「ありえませんわ! ありえませんわ! 知性など!」ラオモトに抱かれたフブキ・ナハタは、ノートUNIXを叩きながらデータを解析する。
2011-01-26 23:41:28「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは飛び掛った。ジゴクのオニめいた素早さで。首元を狙ったクナイをダッキングで回避し、そのままタックルを仕掛ける。敵を押し倒し、マウンティング・ポジションを奪う。迷いは無い。彼は禅問答の答えを身をもって知っていたからだ。それはリヴィング・ヘルであると!
2011-01-26 23:47:11「イヤーッ!」「アバー」「イヤーッ!」「アバー」右、左、右、左! ツキジじみたマグロ撲殺機械のように無慈悲に叩き込まれるニンジャスレイヤーのカラテパンチが、レベナントの顔面を破壊してゆく! フジキドの眼に涙は無い。それはもう枯れ果てていた。変わりに血の涙が彼の両眼から流れている。
2011-01-26 23:52:35「何故だ! レベナントは何故反撃をくり出さない!」ラオモトはフブキ・ナハタを投げ捨て、解析データの記されたパンチングシートを読むリー先生の襟首を掴んで問い詰めた。「し、信じられませんネェ……」リー先生が驚きに満ちた口調で言う「レベナントの筋肉が、理性によってリミットされています」
2011-01-26 23:54:02「サツバツ!」フジキドはひときわ大きく右腕を振り上げ、レベナントの頬にカラテパンチを叩き込んだ。レベナントの首が360度、いや1080度猛烈な速度で回転し、赤紫色のゾンビエキスを撒き散らしながらねじ切れる! 「サヨナラ!」断末魔の叫びと共に、レベナントの腐った肉体は爆発四散した!
2011-01-26 23:55:16畳の上に転がったレベナントの首へと素早く近づく。一刻も早くカイシャクし、スガワラノ老人のソウルを腐った肉体の檻から開放するためだ。フジキドが意を決して右足を上げると……おお、ナムアミダブツ! 両眼の潰れた生首は安らかな声を発したのである!「アバー……ニンジャスレイヤー=サン」と!
2011-01-26 23:58:43ニンジャスレイヤーは過ちを犯した門弟のように足をゆっくりと下ろし、両手でレベナントの生首を大切にかき抱いた。「アバー……ニンジャスレイヤー=サン……目が見えないが、あなたはそこにいますか?」 ああ、それは、邪悪なニンジャソウルの支配から解放されたスガワラノ老人の静かな声であった!
2011-01-27 00:00:57「ドーモ、スガワラノ=サン……私はここにいます」ニンジャスレイヤーはサツバツとした静けさで答えた。「ゲホッ、ゲホーッ! ドーモ……私は今どんな格好かも解りませんが……今着ている清掃服の胸ポケットに、写真が入っています。どうぞ、見てみてください。小さく折り畳んでしまいましたが……」
2011-01-27 00:03:55