丸子×大倉

キャンジャニ学園×関ジャニ∞ @canjani8kanjani

1 浮き足だってざわついた校内を下向きながら全速力で走り抜ける。 校舎の端までそうして来て、目の前の扉を勢いよく開けて飛び込んだ。 後ろ手に閉じて、思い切り叫ぶ。 『忠義のバカー！』 誰もいない部屋に響く声。 『…はぁ』 床に溜め息と涙がこぼれた。

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2 『…何よ、あいつ…』 さっき言われた言葉を思い出したらまた何かがこみ上げてきて唇を噛む。 『そんなの私が一番よくわかってるのに…』 部屋の奥まで歩いて窓の外を見た。 カラフルに飾られた校門。 いつもは女の子しかいない校庭は老若男女、たくさんの人で賑わってる。

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3 今日は学園祭。 さっきまで彼氏の忠義と一緒だった。 色とりどりに飾られた校舎の中をあっちへこっちへ。 楽しく回ってたのに…何か急に不機嫌になって。 どうしたの？って聞いても、何でもないって。 いつまでたっても機嫌の悪い忠義と押し問答になって結局喧嘩。

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4 終いには酷いこと言われて思わずビンタして逃げて来ちゃった。 「調子乗ってんちゃうぞ！ブスのくせに！」 だって…。 そんな台詞吐かれて、みんなの前で思い切り。 まだ手がジンジン痛い。 わかってるよそんなの。 みんな…あの子たちと比べたら私なんて…。

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5 やっぱりそういう風に思ってたんだ…って、溜息をつく。 FCまである忠義がどうして私と付き合ってるんだろう…そう思ったことだって一度や二度じゃない。 何か忠義の学校とうちの学校との公認カップルみたいに扱われてるけど、きっと裏で何か言われてる。 だって忠義カッコいいもん…。

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6 あの顔に人懐っこい笑顔、女子にしては大きめの私を優に超える高身長。 一緒に歩いててモデルや芸能界のスカウトに遭遇したことだってある。 片や私は…。 さっきも思ったけど、可愛くない身長、可愛くない顔、可愛くない…私。 目だってパッチリ二重じゃないし、手足だってゴツい。

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7 もし忠義が女装したら絶対私より可愛い。 そんな私がいつも一緒にいる子たちはみんな学園の人気者たち。 みんな、可愛くて女の子らしくて、でも元気で楽しくて。 そんな中にいるから私に声をかけてくれる人たちも多い。 でもそれはきっとみんなの中にいるから。 一人でいたら全然…多分。

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8 元々、本当は緊張しいな私。 すぐ真っ赤になってわーってなる。 でもそれじゃダメだって思ったから、じゃあどうしたらいいかって考えたとき…せめて私の周りだけでも笑ってて欲しいって思った。 いくら私が笑われてもいい。 みんなが笑顔でいられるなら、それで。

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9 だから一緒に歩いてても声かけられたら返事してただけなのに。 忠義と一緒に歩いてるの、楽しかったんだよ？ こんなカッコいい彼氏いるの、私…って、優越感だって。 でもそれ、私だけだったのかな…。 やっぱり忠義は…私のこと…。 『忠義…』 「何やねん」 『えっ！？』

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10 振り向くとそこには息を切らしながら扉を開けて入ってくる忠義の姿が。 「お前意外と足早いな…陸上部やったっけ…」 『何でここ…？』 校舎の端の方にある指導室。 学園祭の真っ最中にこんなとこまで誰も来ないはずって思って飛び込んだ教室。

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11 部外者の忠義がこんなとこ知ってるはずないし。 「アイツ…倉子が教えてくれたで」 『…倉子？』 「こっちの方のどっかの教室おるはずって。えらい探したわ」 え？何で？ 「…アホ、言われたわ」 『…え？』 「女の子にブスって言うなんて酷い！やって」

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12 見てた、の？ やだ…恥ずかしい。 また後でからかわれちゃう。 私がさっき叩いたとこ。 少し赤く腫れてる。 いてて…って苦笑して手を頬にあてて、口を開いた。 ***** 丸子があんたのこと話すときどんな顔してるかわかってんの？ 一緒にいるときの顔だって…。

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13 いっつも一番可愛い顔してる丸子と一緒にいるくせに、それをブスって言うんなら私が許さない！ あの子がいるからいつもみんな笑ってるの！ 自分だってそうでしょ？ いっつもアホみたいに笑ってられるの、丸子のおかげでしょ？ そんなのもわかんないの？

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14 あの子に…丸子にブスって言っていいのは私だけなの！ 今すぐ謝れ！ ***** 「…やって」 …倉子…なに、言って…。 何か色んな感情がぐちゃぐちゃになって俯いた。 忠義が近付いてくる足音が聞こえる。 視界に足が見えて、体がそっと抱きしめられた。 「…ごめんな」

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15 優しい声にまた涙が溢れた。 「自分が…丸子が俺以外のやつばっか見てるから…」 『…ぇ？』 「折角一緒におんのに、声かけられたらそっち行ってまうやろ？」 『…』 「丸子、人気者やからわかってたはずやなのに…嫌やってん…」 『忠義…』

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16 「何で俺一緒におんのに他のやつらと話してるん？他のやつらとヘラヘラして…俺のこと忘れてるんちゃうん？って…」 『…っ』 「俺のんやのに…お前らのんちゃうのにって」 『…ふっ、くっ…』 嗚咽が漏れた。 「そんで丸子が悪い、って…八つ当たり…した」 『…んっ』

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17 「ごめん…嫉妬…」 『忠義っ』 「ごめん」 震える体を包むようにぎゅーって抱き締められてさらに涙が溢れる。 「ブサイクとちゃう。可愛い、丸子」 『っ、うそぉ…』 ふるふる首を振った。 「嘘とちゃう」 頭を撫でながら顔を覗き込んでくる。

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18 『わたしっ、なん、てっ…おっきいしゴツイ、し、デブだし…それから…っ』 「俺の方がでかいし、食べるし」 『でもっ…他の子の方が…』 「他の子なんて関係ないし」 指でそっと涙を拭ってくれる。 『みんな笑って…』 「誰が？」 『ぇ…』

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19 「丸子のこと大好きってのならあったけど、悪口なん聞いたことない」 『…！』 「みんな丸子のこと大好きやで」 『…、ぅ…』 「一番好きなんは俺やけど」 『ッ…！？』 「ホンマは恥ずかしがりやですぐ赤くなるとこも、こんな泣き虫なとこも、めっちゃ可愛い」 『っ…、っ…』

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20 「せやからもう泣き止んで。全部俺が悪かってん…許して貰わな、また倉子に殴られるわ」 『えっ！？』 パッと顔を上げて頬を見る。 「丸子に叩かれたとこと同じとこ殴ってきよった、アイツ」 『嘘ぉ…』 そこに手を触れてみた。 ちょっと熱を持ってる気がする。

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21 「…あ、女の子にしては力が強いとこも好き」 その手に自分の手を重ねて目を閉じる忠義。 「手汗かきがちなとこも」 『…バカ』 ふたり顔を見合わせてクスッて笑った。 『…ごめん、ね…私…』 「ん？」 『そんな風に思ってたなんて思いもしなかった』 「…ん」

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22 友達の紹介で何となく始まった私達。 ほんとはずっと憧れてた。 だから逆に自信が持てなかった。 『忠義こそ私と歩いてて恥ずかしくないのかなって…そう…』 「えぇ？」 目見開いて吃驚した顔。 「思ってへんよそんなん。誰かに言われたん？」 『いや、そんなんじゃないけど…』

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23 「そりゃ丸子愛想いいしいっつもニコニコしてっから色んなんに声かけられてイラってすることはあったけど、一緒にいて恥ずかしいとか嫌とかそんなん思ったことないで？」 『…』 「むしろこんなかわいい子が俺の彼女です、って、そんなん思いながら歩いてたんに」 『っ、やっ…！』

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24 そんなあっけらんと言われるとどうしたらいいかわかんなくてただ真っ赤になる。 「丸子は何や俺のこと嫌やとか思いながら歩いてたん？」 歩くの早いとか？ 服ダサいとか？ あ、寝癖つきっぱなしなんあかんかった？ 急に焦りだして体中パタパタしだすから、思わず噴き出した。

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25 『ううん…一緒』 「ん？」 『忠義と一緒。カッコいいでしょ？忠義大好き、って思いながら歩いてた』 「…ホンマ？」 『…うん』 「…っ、あー…よかったー…！」 何や言われたらどうしようか思ったー…って溜息ついて頭を肩に乗せてのしかかって来る。 『ちょ、おも…』 「んー」