丸子のクリスマス

キャンジャニ学園×関ジャニ∞ @canjani8kanjani

1 （ばっかじゃないの！？） 学食に倉子の声が響く。 この時期になったら話題はクリスマス一色。 テストのこともあるけど、でも基本勉強より彼氏。 プレゼント何にする？って盛り上がって、それで今の大声。 『…何よ』 （そんなんあげてどうすんのよ！？） 『だって…』

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2 （重っ！って言われてフラれて終わりよそんなん！） 心底馬鹿にしたような目で見下ろす倉子。 ムッとして言い返した。 『忠義はそんなこと言わないもん！』 （アイツが一番口悪いじゃない！笑顔で酷いことサラッて言うんだから！） 『それは倉子だからでしょ！？忠義優しいもん！』

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3 （アイツなんて内心何思ってるかわかったもんじゃないわよ！いい家のボンボンでたっかいのばっか持ってるじゃん！そんなんあげたって喜ぶわけないじゃない！） 『うっ…』 それはそうだ、本当に。 でもだからこそ一体何あげたらいいかわかんなくて、せめて私の気持ちをって…それ重いの？

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4 黙ってしまった私をフンッて鼻で笑って。 （ほら、自分でもそう思ってるんでしょ？） 勝ち誇ったように笑った。 『…そっちはどうなのよ？』 （ん？） 『あんたは何あげるの？って聞いてんの！』 （私は…何であんたに言わなきゃいけないのよ！？） 『私ばっかずるいじゃない！』

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5 （あんたが自分から言ったんじゃん！） 『どうせ自分だって自信ないんでしょ！？』 （私は絶対喜んでもらえるもん） 『そっちなんてまだ付き合ってもないくせに』 （なっ…違うもん！ちゃんと約束してるもん！） 『あんたが無理矢理約束させたくせに』 （ッ…！） 『図星でしょ』

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6 （…何だっていいでしょ！？あんたよりマシよ！） 『何でそんな言い方されなきゃならないのよ！？』 （優しさよ優しさ！） 『ばっかじゃないの！？』 （…フン！） 『…フン！』 睨み合って、顔を反らし合う。 ［平和ね］ すば子が興味なさそうに呟いた。

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7 「寒っ…！何か食べたいもんある？」 隣を歩く忠義。 クリスマスだって言うのに、いつものパーカーに上着。 寝癖は直してきたみたい。 首元には柔らかくてあったかそうなマフラーを巻いてる。 何か聞いたことないブランドタグ。 でも一目でいいとこのってわかる。

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8 「…丸子？」 ボーッと考え事してて足元が緩んだ私を不思議そうに見る。 『…あ、ごめん。何？』 小走りに近寄って見上げた。 「ッ…や、あの…」 『ん？』 私をじっと見て、ソワソワしてキョロキョロ視線を動かす。 首を傾げたら、突然チュッってキスされた。

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9 『たっ…！？』 「…可愛かったから」 もう…。 照れたように笑って、また口元をマフラーで隠して手を差し出してきた。 その手を握ると吃驚した顔して。 「冷たっ！」 叫んで手を離した。 思わず両手を握り締める。 チリッて疼く胸の痛み。 あれ、何これ？ 「あっ、ごめ…」

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10 そんな私を見て焦ったようにオロオロする忠義。 何だろ…何でこんな傷ついてるんだろ、私。 手繋いで欲しかったのかな？ 振り払われたのが辛かったのかな…？ 自分の心がわかんなくてモヤモヤする。 あったかい忠義の手、触りたいな…。 こんな時に出てきちゃっためんどくさい私。

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11 俯いたままの私の前に、スッと紙袋が差し出された。 『え？』 「ほんとはもっとロマンチックなとこで渡したかってんけど…」 ちょっと不安そうな忠義の顔を見て、それを受け取った。 かじかむ手で箱を開ける。 『…手袋』 「ん…」 私の手から取って嵌めてくれる。

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12 革の明るいオレンジ色の手袋。 「いっつも着てるコートに合うと思て」 あったかい。 なめらかで柔らかくて上品。 忠義のマフラーと同じブランドのタグ。 きっと高い。 ふとあの日の倉子の言葉を思い出す。 『…ねえ』 「ん？気に入った？」 『手編みってどう思う？』

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13 「は？」 唐突な質問に目が点になってる。 「まあ…正直あんまり…。私の気持ちってったって重いやん？」 『ッ…』 目の前が真っ暗になる。 倉子の言う通り、だった。 「そんでも好きな子から貰えるんやったらいくら重くても嬉しいし大歓迎…って、丸子！？」

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14 最後まで聞かずにその場を逃げ出した。 鞄の中の包みがガサガサ音を立てる。 どうしよう、捨ててしまおうか。 どうしようどうしよう…。 『きゃっ！』 やみくもに走って、ヒールが引っかかって転んだ。 『いったぁ…』 じんわり涙が滲んで視界が霞む。

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15 鞄からリボンのほどけかけた包みがこぼれてる。 それを掴んで、思いっきり地面に叩きつけようとした。 その時。 「何してんのっ！？」 後ろからその手を掴まれて。 『忠義っ…！』 寒いのに額に汗かいて息を切らせてる忠義。 「おま…すぐ逃げる癖やめろや…」 『だって…』

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16 「だっても何も…追いかけんの大変やねんぞ…」 包みを手から取り上げて、握ったまま向かいにしゃがみ込む。 それからちょっと怒ったような顔で私のことじっと見て。 「今度は何？ちゃんと言うて」 駄々っ子を叱る様に、めっ！…って。 忠義に握られた手。 手袋の中で熱い。

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17 ぽろって涙がこぼれた。 「丸子？」 『…プレゼント』 「うん」 『それ…』 「これ？」 『…そう』 「開けていい？」 返事を待たずにガサガサ音がする。 「…あ」 どんな顔してるのか、怖くて見れない。 俯いたままずっと地面を見てた。

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18 倉子の言うことちゃんと聞いとけばよかった。 あれ、意地悪じゃなくって本当に心配してくれてたのかも。 今更後悔したってもう遅い、けど。 そんなこと考えてたら、ふわって首元に布が巻かれた。 『え？』 顔を上げると、そこにはさっきと違うマフラーを巻いた忠義の姿。

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19 明らかに目がガタガタで揃ってなくて、ミックスカラーの毛糸のおかげでそれをどうにか誤魔化した感のある、どう見たってつたない手編みの。 「それもあげる」 『…え？』 見ると、首にかけられたのはさっきまで忠義が巻いてたマフラー。 『な…だって…！』 「俺こっちがいい」

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20 『だってさっき重いって…』 「好きじゃない子から貰ったら何だって重いやん。でも好きな子からなら…めっちゃ嬉しい」 『でも…そんな下手なの…』 「そう？めっちゃあったかいで？」 そう言って嬉しそうに笑った。 「ありがとう、丸子」 …そうだ、お礼も言ってなかった、私。

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21 『…ごめんね』 「…ん」 『ありがとう、忠義』 にっこり笑って、涙を拭ってキスしてくれた。 手を取って立ち上がらせてくれる。 「デート続きしよ？」 『うん…あ、ちょっと待って』 「ん？」 貰った手袋を片方だけ外した。 それから手を握り直して忠義のポケットに入れる。

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22 目を合わせて笑い合う。 倉子に言ってやんなきゃ。 忠義はやっぱ喜んでくれたって。 他の子には辛辣だけど、私にはとっても優しい王子様。 倉子の言うような人じゃないもん。 それから街をさ迷って、食事にありつけたのは数時間後。 クリスマスの夜を甘く見てた。

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23 どこも予約でいっぱいで入れやしない。 湯気の立つラーメンを目の前に、しょげる忠義。 「…何かごめんな…こんなんで…」 全然楽しいけどな。 その姿を見てクスクス笑った。 カッコいいけどちょっと抜けてる私の王子様。 ハッピーメリークリスマス。 愛してるよ、忠義♡

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