- canjani8kanjani
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1 『え?先生今日誕生日なの?』 「...安子お前...覗き見とかええ趣味しとるやんけ」 『...見えたんだもん』 いつもの指導室で机挟んで向かいに座る先生。 私には反省文書かせてるくせに、自分はタバコ吸ったり携帯触ったり違反し放題。 文句言っても鼻でフフン...って。
2016-02-14 17:53:542 『違反』 「俺生徒ちゃうもん」 『でも先生だって禁煙でしょ?』 「誰も見てへんもんし」 『私見てる』 「今更やん」 『私だって誰も見てないじゃん』 「俺が見てもーたからアカン」 『そんなのズルイ』 「立場の違いやな」 屁理屈こねて、目を細めてニヤリと笑う。
2016-02-14 17:54:033 「ええからはよ書け」 真っ白な原稿用紙を指でトントン叩いた。 それに促されて渋々目を落とす。 もう何度となく書かされた薄っぺらい謝罪文。 まるでテンプレートのように決まりきった文章を綴っていく。 毎回こんなのでOK出す先生が不思議。 形式だけならやめたらいいのに。
2016-02-14 17:54:144 チラリと見上げると、なんか薄笑いながら携帯見てた。 さっきの画面を思い出す。 『ねえ、先生?』 「...ん?出来たか?」 『先生、今日誕生日なの?』 「おん。それがどしてん」 『言ってくれたら...』 「あ?」 『言ってくれたらプレゼントくらい...』 「...アホ」
2016-02-14 17:54:245 『いった!』 ピンッてデコピンされて、額を抑えて睨みつけた。 「プレゼントなんいらんから、はよそれ書いて帰らしてくれや」 鬱陶しそうな顔して顎で原稿用紙を指す。 その先生らしからぬ態度にムッとして、ペンを投げ捨てた。 「あ?何やそれ?」 『...』 「拾え」 『嫌』
2016-02-14 17:54:356 「何や?」 『約束でもあるの?』 「何やねん」 『早く帰りたいんでしょ?』 「おお。お前がいらんことするから遅刻や、もう」 『...彼女?』 「はあ?」 『ディズニーって...』 「...何見とんねんお前」 『...見えたんだもん』 「...お前には関係ないやろ」
2016-02-14 17:54:467 その言葉に胸がズキッて傷んだ。 じわりと浮かぶ涙を隠すように俯く。 「...はよ書けって」 『...書かない』 「...何やねんお前...」 明らかにイライラした声。 折角の先生の誕生日なのに、私だってこんな態度とりたいわけじゃない。 でも何かモヤモヤするの。 嫌なの。
2016-02-14 17:54:578 本当はおめでとうって言いたい。 プレゼントあげて、喜んでくれる顔が見たい。 でも先生はそんなのよりももっと今日会いたい人がいて、私なんてただの邪魔者でしかなくて。 それが悲しくて悔しくて。 流れる沈黙。 ガタッて音がして、体をビクリと震わせた。 目の前にペンが置かれる。
2016-02-14 17:55:069 「書け」 『...嫌』 「...ほなもう今日はええから帰れ」 『...帰んない』 「...何やねんお前」 顎を掴まれて無理矢理顔を上げられる。 睨みつけて、目を反らした。 ツ...って涙が一筋伝ったのがわかる。 先生がどんな顔してるのか、見たくなかった。
2016-02-14 17:55:1710 「...ほな勝手にせえ」 手が離れて響く足音。 振り向くと、もう背中を向けて去っていく先生の後ろ姿。 『ッ...!先生!』 それを思わず叫んで呼び止めていた。 「...何や?」 見下ろすその目が冷たくて哀しい。 涙がボロボロ零れて止まらない。
2016-02-14 17:55:2911 こんなことしたいんじゃない。 でもそれすら言葉にならない。 先生が近づいてくる。 しゃくりあげる私の目の前で止まって、それから急に、怖い顔が崩れた。 『ッ、ぅ...せんせ...っ』 「何やねんなもう...」 さっきまでとは全然違う困ったような顔で頬に触れてくる。
2016-02-14 17:55:4112 その手が優しくてあったかくて、もっと涙が溢れた。 「あーもー泣くなって...」 手で乱暴に涙を拭って、頭を引き寄せて抱きしめてくれる。 先生の硬いお腹のあたりに顔を埋めてしがみついた。 「すまんって...俺そない怖かったか?」 『ちがっ...』 「...悪かった」
2016-02-14 17:55:5113 よしよし子供をあやすように撫でてくれる手。 嬉しい。 もっとして欲しい。 でもそうじゃない。 本当は手のかかる子供なんかでいたくないのに。 ただの私のわがままなのに。 この感情を伝える術も持たず、ただ泣きじゃくるだけ。 『せんせ...』 「...ん?」
2016-02-14 17:56:0314 今度は優しく顔をあげて、そして涙をキスで拭ってくれる。 目尻から頬へ、それから首筋、胸元。 手は背中を撫でて、太腿に。 『ふっ、あ、...っ』 熱い息が漏れる。 優しく丁寧に肌を滑る先生の手。 宥めるためのその行為に狂いそうなほど熱く高められていく。
2016-02-14 17:56:1315 スカートの中からグチュグチュ響く水音。 長くて綺麗な指が私の一番奥まで入ってくる。 一本だけ沈められたその指に目の眩むほどの快感を与えられて声をあげる。 それを塞ぐように肩を押し付けられて、堪らずに噛み付いた。 いるかもしれない先生の彼女に見つかるかもしれない。
2016-02-14 17:56:2416 喧嘩になってしまえばいい。 むくりと湧き上がる黒い感情。 その衝動のまま、先生の体に私を刻み込む。 「っ、はっ...ぁ」 首筋に埋められた先生の唇から吐息が漏れる。 チクリとそこに痛みが走った気がした。 その瞬間、ゾクゾクと背筋を快感が駆け上がって爆発する。
2016-02-14 17:56:3517 『せんせっ...!』 叫んで、こねり回してかき回す指に腰を擦り付けて、夢中でまた噛み付いた。 ヒクッて喉が鳴る。 勝手に蠢くソコが先生の指を締め付けて痙攣してる。 震える中から抜いて、ぐったり弛緩する私の頬に触れる。 今度は快感で零れた涙を、またキスで拭ってくれた。
2016-02-14 17:56:4618 「...ごめんな」 その言葉は一体どういう意味? 呟いた先生の顔が泣きそうに見えて胸が締め付けられる。 『ごめんなさい...』 何もわからないけど、ただ同じ言葉を呟いた。
2016-02-14 17:56:5719 「送るから外で待っとき」 『いいよ、別に...』 「もうこんな時間やんか。それに今日めっちゃ寒いで」 『でも先生用事あるんじゃ...?』 「今更やんか、もう...」 押し切られるように先生の車の助手席に乗り込む。 特に何も無くシンプルな車内。
2016-02-14 17:57:0720 彼女のっぽいのとかはないけど...ここ、私座っていいの? 聞いたら、アイツそんなん気にせーへんとか答えが返ってきそうで口を噤む。 「...無口やな」 『え?』 「...何やったん、さっきの...?」 『...わかんない』 そう、言うしかないじゃない。
2016-02-14 17:57:1921 まだ...この関係を続けていたいから。 たとえ歪んだ関係でも。 あと少し...卒業まで...ギリギリまで。 「...そか」 先生はそれっきり何も聞かなかった。 それがホッとして...そして泣きたいくらい寂しい。 「こっちやった?」 『うん』 流れる沈黙。
2016-02-14 17:57:3122 『...せんせ?』 「ん?」 耐え切れずに口を開いた。 『何か欲しいものない?』 「...ん?」 『誕生日なんでしょ、今日?』 「...あぁ」 フッ...て笑って煙草に火をつけた。 小さく開けられた窓から風が入ってくる。 「あ、すまん。寒いな」 『んーん、大丈夫』
2016-02-14 17:57:4223 ふうって煙吐いて灰皿に押しつけた。 「欲しいもんなあ...」 チラッてこっち見てまた笑う。 「あるっちゃあるけど...」 『何?』 「...まあ無理やろ」 『高いの?』 「どうやろなあ...」 何か意味深。 『...手に入るかもしれないじゃん』 「ん?」
2016-02-14 17:57:5424 『先生、諦めたらそこで終わりっていっつも言うじゃん』 「...そうか?」 『...多分』 赤信号で止まって、じっと私を見て。 「...ほな、ちょっとだけ希望持っとくわ」 そう言って、少し寂しそうに笑った。 『...何か私があげれるものある?』 「何や急に?」
2016-02-14 17:58:0925 『迷惑かけちゃったし...』 「...熱でもあるんか?」 『ちがっ!約束ダメにさせたから...!』 「...まあそれは大丈夫やねんけど」 『...そうなの?』 「元々時間なん決めてへんかったしな」 『...』 「...」 『...』 「...ほな、おめでとう言ってや」
2016-02-14 17:58:20