【日本@世界1】ニューヨークを拠点に活動するピアニスト兼作曲家のSatokoさん

世界の中の「日本」と、日本の中の「世界」を紹介していくシリーズです。
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関根和弘/Kazuhiro SEKINE @usausa_sekine

日本@世界1)モスクワから札幌に来てもうすぐ2年。久しぶりに「ドメスティック」な取材が増えるだろう、と思いきや、外国の方を取材する機会に恵まれました。例えばニセコ。定住するオーストラリア人やアジアの人たちがたくさんいて、先日、ニセコのスキー場に行ったら客のほとんどが外国人でした。

2016-02-19 06:14:49
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日本@世界2)札幌にいても、常時外国からの観光客がたくさんやって来ます。ニセコに行くと、グローバリズムがまるで地方から始まっているような気さえします。もしかしたら、同じような現象が日本のあちこちで起きているのかもしれません。

2016-02-19 06:16:37
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日本@世界3)そんな実感から、日本にある「外国」と、外国にある「日本」を少しずつですが情報発信したいと思います。国内にいながらの「国際報道」です。今後、不定期ではありますが、このツイッターでお話をうかがえた方から順次報告していきます。題して「世界@日本」「日本@世界」。

2016-02-19 06:18:21
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日本@世界4)早速ですが、まずは「日本@世界」の方として、ニューヨークでピアニスト兼作曲家として活動しているSatokoさんを紹介したいと思います。 pic.twitter.com/iKF9hswSda

2016-02-19 06:22:27
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日本@世界5)彼女は主にクラシック音楽の分野の演奏家であり、作曲家です。念のためですが、クラシック音楽とは昔の西洋音楽のことだけを言うのではなく、そこに端を発したジャンルであり、今でも新曲は続々とつくられています。Satokoさんも新たなクラシック音楽を日々つくっています。

2016-02-19 06:24:33
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日本@世界6)そんな基本も私はわかっていない音楽素人なのですが、彼女から「作曲は数学的である」と聞いて大変興味を持ちました。彼女は言います。「クラシック音楽にはクラシック音楽たり得るルールがあります。数学的でもあります。例えばカノンという言葉はラテン語で法律という意味でした」

2016-02-19 06:27:57
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日本@世界7) 彼女は続けます。「音楽家には私を含め、『曲が下りてくる』ことがあります。でも、もし、クラシック音楽の『ルール』、すなわち数学の知識がなければその曲をクラシック音楽として世に出すことは出来ないのです」

2016-02-19 06:28:33
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日本@世界8)そんな話をSatokoさんに聞いたとき、思わず思い出したのが、学生の頃読みふけった1冊の本です。それは「ゲーデル、エッシャー、バッハ-あるいは不思議の環」です。

2016-02-19 06:29:37
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日本@世界9)ダグラス・ホフスタッターの名著。ゲーデルは不完全性定理を見つけた数学者、エッシャーはだまし絵で知られる芸術家。そしてバッハはバロックの有名な音楽家。一見、関係ないように見える、数学、絵画、音楽が密接に関係していることをユニークな視点で提供してくれた作品です。

2016-02-19 06:30:27
関根和弘/Kazuhiro SEKINE @usausa_sekine

日本@世界10)数学にしろ、絵画にしろ、音楽にしろ、「美しさ」の源になっているのは規則性、ルールかもしれません。Satokoさんは曲作りの際、しばしば夜浅い眠りのときに「音が下りてくる」のだと言います。

2016-02-19 06:31:09
関根和弘/Kazuhiro SEKINE @usausa_sekine

日本@世界11)音楽家が同じようなことを言うのを時々耳にします。でもSatokoさんによると「下りてくる」だけでは曲にはならないのだといいます。「作曲の知識があって初めて世の中に出すことが出来る曲になります。それはクラシックのルールであり、数学的なものです」とSatokoさん。

2016-02-19 06:33:51
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日本@世界12)Satokoさんは幼少の頃よりピアノをやっていたそうですが、20歳のころ、ピアノのコンクールを見に行ったことで作曲に関心を持つようになりました。

2016-02-19 06:35:05
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日本@世界13)「同じ作曲家の曲をみんなが弾いていることに感動しました。しかも弾き手によって全然違う曲に聞こえるのです。作曲家が亡くなっても曲はこうやって後世に残ることが素晴らしいと思いました。自分も人の役に立ちたいと作曲を志すようになりました」とSatokoさん。

2016-02-19 06:35:41
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日本@世界14)それから一念発起したSatokoさんはニューヨーク州立大パーチェス校に入り、ピアノを専攻します。そこで日本とはまったく違う「文化」に遭遇します。

2016-02-19 06:36:15
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日本@世界15)Satokoさんは振り返ります。「教わったことを一生懸命やろうとすると怒られる。『あなた、先生の言うことを気にしてはダメ』と。人の言うことを聞いて怒られるならいっそのこと思い通りに弾いてやろうと思いました。すると逆に褒められた。個性を大切にする米国流を感じました」

2016-02-19 06:38:02
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日本@世界16)その後、マンハッタン音楽院にも入ります。ここでは「人間ドックに入ったよう」(Satokoさん)に徹底的にピアノの技術、音楽全体の知識レベルを確認されます。「『ピアノが出てくる前の音楽史や中世の音楽など、何も知らないのね』と言われました」とSatokoさん。

2016-02-19 06:38:45
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日本@世界17)音楽院では、今の活動領域であるクラシック音楽について学ぶかたわら、ジャズミュージシャンたちとの交流が作曲活動のヒントになったそうです。

2016-02-19 06:39:28
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日本@世界18)元々「音が下りてくる」タイプのSatokoさんでしたが、せっかく頭にメロディーなどが浮かんでも、それを曲にすることが難しかったそうです。そこでジャズミュージシャンたちに相談したところ、あっという間に編曲してくれる。

2016-02-19 06:39:51
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日本@世界19)Satokoさんは言います。「もちろん彼らは、クラシックのルールを学んでいるわけではないので、クラシック音楽にはならないのだけど、それでも即興で弾いていくことが求められるので、ある程度編曲の理論は学んでいるんです。彼らにやり方を教えてもらうこともありました」

2016-02-19 06:40:18
関根和弘/Kazuhiro SEKINE @usausa_sekine

日本@世界20)Satokoさんは音楽院卒業後、音楽教師として名高いフランスのナディア・ブーランジェ氏の方式による和声や対位法を、米ロの音楽大の教授から6年間みっちりたたき込まれたようです。

2016-02-19 06:40:44
関根和弘/Kazuhiro SEKINE @usausa_sekine

日本@世界21)3年ほど前、再び米国に拠点を移してさらに活動を深めています。「日本で活動することは考えなかったのですか?」。私は彼女に問いました。するとこんな答えが返ってきました。

2016-02-19 06:41:54
関根和弘/Kazuhiro SEKINE @usausa_sekine

日本@世界22)「日本は色んな面で便利ですが、創作活動には適していないと思いました。長時間労働に加えて飲み会などが多く、人から干渉されない、自分の時間が確保しづらいです。その点、米国は仕事やお店も早く終わります。創作にとって大事なひらめきや集中が可能な場所です」

2016-02-19 06:43:20
関根和弘/Kazuhiro SEKINE @usausa_sekine

日本@世界23)今、Satokoさんが熱心に取り組んでいる作曲はレクイエム(鎮魂歌)ということです。「音がしばしば『下りてくる』のですが、それはこの世ではないところ、異次元、あの世から来ている感じがするので、それでレクイエムにひかれるんです」とSatokoさん。

2016-02-19 06:44:11
関根和弘/Kazuhiro SEKINE @usausa_sekine

日本@世界24)レクイエムと言っても、悲しみを伝える曲調だけではないそうです。「亡くなることで、苦しみから解放される場合だってあります。そんなイメージを表現するため、例えば曲の出だしを明るい感じにすることがあります」とSatokoさん。

2016-02-19 06:44:43
関根和弘/Kazuhiro SEKINE @usausa_sekine

日本@世界25)幼い頃にも米国にいたことがあり、米国暮らしが長いSatokoさんですが、海外で暮らすこと、あるいは海外で活動することの不安やためらいはないのでしょうか。Satokoさんはこう言いました。

2016-02-19 06:45:36