【一応R18】提督と鈴谷のケッコン挨拶【SS】

あんま艦娘でやる必要はないけど、艦娘でやらない理由もない
32
白閃 @WhiteGlintNo9

「ねぇてーとくぅ!シャンとしてってば!」 鎮守府への帰り道、航空巡洋艦“鈴谷”は傍の提督を叱咤する。 「あぁ、すまん」 帰ってきたのは上の空の返事だ。鈴谷とのケッコンの為に実家に挨拶してからずっとこの調子、魂ここに在らずといった感じが続いている。

2016-02-22 19:04:28
白閃 @WhiteGlintNo9

鈴谷の家は母子家庭だった。父親は知らない。母は父親について一切言及しなかった。昔、“鈴谷”になる前に一度だけ尋ねた事があったけど「まぁ、色々あってね」としか答えてくれなかった。 そんな感じだからかなり苦労したに違いない。母親に口癖の様に言われた言葉がある。

2016-02-22 19:26:45
白閃 @WhiteGlintNo9

「あなたの人生だから好きに生きなさい。ただ“火遊び”だけはコレと決めた相手だけにしなさい。軽い気持ちで手を出すと苦労するよ」 実際に苦労している人間の言葉には説得力があった。そして暗に自分が“火遊び”の結果である事も理解したが、母はそれを「後悔する」と表現した事は一度も無かった。

2016-02-22 19:36:30
白閃 @WhiteGlintNo9

だから母親には、髪を染めた時もピアスの穴を開けた時も何も言われなかった。母親にあまり負担を掛けたくなくて、艦娘になると言った時は流石に心配はされたけど「よく考えて決めたことなら」と許してくれた。 そんな母親だったから今回のケッコンの挨拶もうまくいくと思っていた。

2016-02-22 20:22:37
白閃 @WhiteGlintNo9

鈴谷の相手は提督というエリート。鈴谷に堅実な生活を望んでいた母親の条件を十分すぎるほど満たしていた。 別に鈴谷は玉の輿を狙っていた訳ではない。むしろ他の艦娘が提督との距離を縮めようとアレコレしていた。しかし彼はそれらに一切見向きもしなかった。

2016-02-22 20:28:11
白閃 @WhiteGlintNo9

アラサーにもなって恋人を作ろうともせず艦娘にも見向きもしない彼は、鈴谷が来るまで「アッチ」の人間だと思われていたらしい。 そう、鈴谷が提督の前に現れるまでは。 あの日提督に告白され、付き合い、いくらか“火遊び”もして今に至る。 提督は鈴谷を愛しているし、鈴谷も提督を愛している

2016-02-22 20:33:55
白閃 @WhiteGlintNo9

「あっ!」 ケッコンの挨拶に実家に訪れた提督が、母の顔を見た瞬間に驚愕の声を上げた。 「あぁっ!」 固まる提督を見て、ワンテンポ遅れて母も目を丸くして硬直した。 「ど、どうも、お久しぶりです」 その姿に今度は鈴谷が驚いた。どんな作戦中でも冷静だった提督とは思えない。

2016-02-22 20:42:29
白閃 @WhiteGlintNo9

そこから先はもうグダグダだった。 話題が二転三転してなかなか本筋に入らない。 「娘をよろしくお願いします」 そして気が付けば終わっていた。 それから提督はずっと抜け殻みたいになっている。 「ねぇ、さっきは一体どうしたのさー。らしくなかったよ?」 あの反応が気になる。

2016-02-22 20:53:31
白閃 @WhiteGlintNo9

不意に提督は足を止めて鈴谷を見つめる。 「ちょっと、はずいって!そんなマジマジとみないで!」 しかしそこで鈴谷は提督の目がいつもと違う事に気がつく。 恋人を見つめる様な情熱的なソレというよりは、もっと優しい、どこかで見たことある様な視線。 「墓まで持って行こうと思ってたんだがな」

2016-02-22 21:03:24
白閃 @WhiteGlintNo9

唐突に提督が呟いた。 「オレは男兄弟の一番上でな?一人っ子の鈴谷には分からんと思うが弟達からは頼られて、親からはしっかりしろなんて言われてた。」 急に身の上話をし始める提督。しかし鈴谷はソレを遮る様なことをしなかった。 「よくある『お兄ちゃんなんだから!』ってヤツ?」

2016-02-22 21:07:07
白閃 @WhiteGlintNo9

何かを思い出す様に提督は眼を細める。 「あぁ、まさにそれだ。だからオレは甘えられる『お姉ちゃん』って存在に憧れてた。」 そこで提督は言葉を区切って黙り込む。迷っているのだ、あの提督が。 「いいよ。続けても」 いつになく鈴谷の目も真剣になる。 提督はその目を見て、一つ溜息を吐いた。

2016-02-22 21:20:14
白閃 @WhiteGlintNo9

「『聞きたくなかった』と思うかもしれないぞ?」 「ここまで聞かされてお預けされたら邪推するよ〜?将来の奥さんとの関係にヒビが入ってもいいのかな〜?」 ふっ、と表情を崩す提督。そして決心したのか再び口を開く。 「小6くらいの頃だったかな。オレにそんな『お姉ちゃん』ができたんだ」

2016-02-22 21:40:16
白閃 @WhiteGlintNo9

「近所に住んでる高校生だった…のか。その人の両親は共働きで、いない間によく家に上げてもらってたんだ。」 何故平日早い時間に家にいたかは知らないんだけど、と提督は付け加える。 「その『お姉ちゃん』は甘えさせてくれるから、オレはすぐ大好きになった」 それを聞いて鈴谷は頬を膨らませた

2016-02-22 21:48:39
白閃 @WhiteGlintNo9

「そーいう事、鈴谷の前で言う?」 過去の事とはいえ目の前で自分以外の女に大好きと言うのは面白くない。少し拗ねてみる。 「心配しなくても今は鈴谷が一番好きだ。それで許してくれないか」 またこの優しい視線だ。やはりいつもと様子が違う 「とにかくオレは彼女に甘えまくったんだ」

2016-02-23 00:10:34
白閃 @WhiteGlintNo9

再び歩みを進める提督。しかしその歩幅は身長に対していつもより小さく、その速度もゆっくりだった。 「ふふ〜ん。そんな甘えてナニしてたの〜?」 あんな事言ってきたんだ。少し茶々を入れてやる。だが、返ってきたリアクションは予想外だった。 「そりゃナニに決まってるだろう?」

2016-02-23 00:19:50
白閃 @WhiteGlintNo9

えっ、と固まる鈴谷に構う事なく提督は続ける。 「まぁ、まだその時のオレは、それがどういう行為か理解しちゃいなかったけどな?」 とててて、と少し離された距離を慌てて詰める鈴谷。 「て、てーとくはその時小学生だったんだよね!?」 「さっき言った通り、そうだよ」

2016-02-23 00:24:51
白閃 @WhiteGlintNo9

少しニヤけながら虚空を見つめる提督は語りだす。 「初めての手コキは30になりそうな今でも覚えているぞ。まだ精通前だったからな、擦られたら股の奥の方がキュゥッてなって…ドライってヤツだな…身体が電気走ったみたいに勝手に跳ね……」 性体験を事細かに話しだす提督。少し話が脱線していた。

2016-02-23 00:31:33
白閃 @WhiteGlintNo9

冷ややかな鈴谷の視線に気が付いた提督はゴホンと咳き込む。 「まぁ、要するにオレは知らない間に『お姉ちゃん』と“火遊び”をしてたんだよ」 「てーとくって中々に凄い体験してるんだね…」 今の混乱した鈴谷の頭ではそんな感想しか捻り出せない。

2016-02-23 00:38:59
白閃 @WhiteGlintNo9

だが、提督の告白はまだ続く。 「オレが『お姉ちゃん』を求めるたびに、『お姉ちゃん』はすごい嬉しそうにしてたんだ。オレはそんな嬉しそうな彼女が好きだったんだ。だからオレは更に彼女を求めた。もうズブズブさ」 色んな意味でな、と下品なジョークを付け加えたが笑う気にはなれない。

2016-02-23 00:43:54
白閃 @WhiteGlintNo9

「あの日も『お姉ちゃん』に甘えていた。裸になった『お姉ちゃん』の身体は…暖かくて…柔らかくて…気持ちよかった。ただ、いつもと違う事が一つあった。」 「違う事?」 アレ?と鈴谷は一つ首を傾げる。そもそもなんでこんな話になったんだっけ? あまり気が付きたくない気もする

2016-02-23 10:08:03
白閃 @WhiteGlintNo9

「『お姉ちゃん』の暖かさに溺れていたらな、なんか奥の方から込み上げてくるモノがあったんだ。サルみたいに夢中で腰を振っていたオレは、構わずソレを『お姉ちゃん』のナカにブチまけた。」 「ソレって…」 「あぁ、精通ってヤツだ。初めての射精が中出しだったんだな、これが。」

2016-02-23 14:03:11
白閃 @WhiteGlintNo9

鈴谷はなんとなく続きを察した。 「最初は病気だと思ったよ。『お姉ちゃん』まで慌ててたから尚更だ。ただパニクった理由は違かったろうけど。」 「それで…どうなったの…?」 いや、まさか、でも…そんな言葉が鈴谷の頭をぐるぐる回る。しかし答えは出ない。ソレを持っているのは提督だ

2016-02-23 14:08:22
白閃 @WhiteGlintNo9

「『お姉ちゃん』に甘えられるのはその日が最後になった。両親に“火遊び”がバレて彼女に近付けなくなった。向こうの両親にも抗議して彼方も大荒れしたようだ。何故“火遊び”がダメなのか、当時のオレには理解できなかった。」 少し早口になる提督。所々説明が飛ぶ。

2016-02-23 14:14:01
白閃 @WhiteGlintNo9

「数週間後、オレは『お姉ちゃん』にこっそり会いに行ったんだ」 「それでどうなったの?」 鈴谷はこれ以上聞くのが怖かった。でも聞かずにはいられなかった。禁断の果実の誘惑の様なものだ。 『ごめんね。この子の事は背負わせたりしないから』 「彼女はそう言ったんだ。」

2016-02-23 14:18:37
白閃 @WhiteGlintNo9

「『この子』って…まさか…」 「当時のオレには何を言ってるのかサッパリだった。セックスもただ気持ちいい事としてしか知らなかったしな。それが『お姉ちゃん』を見た最後になった。彼女の言葉を理解したのは少し後になってからだった」 何処かに引っ越していったよ。少し寂しげに提督は呟く。

2016-02-23 14:23:59