- vorrrrrrrra_e
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やア皆様。ここまデオ付き合い頂キ本当にあリがトウ。それにしテも、素直にホイホイ付いてきちまっていイノか。いイのか。 次、始めてシマウぞ。 いいのか。 いいって言う人ハご起立願イマす。 …うん。ごメン着席。 約束と共に俺は彼女を託さレタといウとコロまでは理解して頂けただろうか。①
2016-01-09 09:03:16これから話すのはソレからの話と、その前の話。 彼女の話。 俺に少女を託した人ノ話。 託しタ人に、託しテいた人の話。 ソシて…俺の知らなカった俺の話だ。 前にもマして長くなってしまったら申し訳ない。少し尻を痛めるかもしレナいので、適度に立チ上がったり、貧乏ユスりをしたりシてくれ。②
2016-01-09 09:05:01そしテもしも他の誰カがそウシていても、皆様はお気になサラないヨうご協力をお願いしマス。 チナみに今回も例のゴとく、俺の「妄想」だ。決しテ「現実」で起キタ俺の話でハない。ダから「現実」の貴方にハ、残念ながら一切関係がナい。 ソの上で、皆さんに…チょットした頼みがあル。③
2016-01-09 09:06:35ついに始まった。さあ、俺たちの物語はこれからだ。 前と同じように俺のことから話して行こう。今は春。俺は三年生になった。当たって砕けて不連年は高二の秋のことだ。 俺は「横様」と皆から呼ばれている───が、本名は「横根 陽横」といいます。 よこね、ひよこ。 可愛いでしょー。フフフ。①
2016-01-09 09:10:02この名前自体は「不即不離共にある太陽のような存在に」という思いが込められているそうだが、お陰様で中学の頃はひどいいじめを受けていた。いや、正確には男の割に名前が可愛いからではなく、原因は恐らく別にある。 推測するに恐らく、多分だが。 きっと原因は俺の持つ、「瞬間記憶能力」だ。②
2016-01-09 09:11:40どうしていじめられていたのかは、今になってよくわかったことだ。皆とは全く違う異常な脳味噌を持っている俺は、きっと皆にとって、気持ち悪かったんだ。めちゃくちゃとんでもなく、気持ち悪かったんだろう。 そのいじめはかなり激しかったようで、今俺も命があるのが不思議なくらいのものだった。③
2016-01-09 09:13:23たとえば冬のプールに突き落とされたり、授業中教室の窓から飛び降りるよう言われ実際飛び降りたり、給食にゴミを混ぜられたり臭い運動靴を舐めさせられたり監禁されたり俺だけプリントが配られなかったり。 持ってきた鞄が無事だったこともなかったし。 着てきた制服が無事だったこともなかった。④
2016-01-09 09:15:00なので途中から俺は汚れてもいいスウェットなんかで手ぶらで学校に行くようになり、それを見た地域の人の通報でいじめが発覚した。 …らしい。 というのもこれらは全て、母親や医者のような人から聞いた話なのだ。 実は俺には中学時代の記憶がまるでない。鉄壁を誇る我が記憶野の、唯一の綻びだ。⑤
2016-01-09 09:17:05その記憶喪失の原因が、どうやら俺の父親が死んだ原因が俺にあって、そのショックで健忘症を引き起こしたとかなんとか。 どれもこれも聞いた話だ。 正直、中学の話も父親の話も信じてない。 だって中学は割と普通に卒業できたような気がするし、小学校の頃もうすでに父親はいなかった記憶がある。⑥
2016-01-09 09:19:01だけどそれがまるで真実のように、それが今に繋がっているかのように、過ごしてきた。 そしてその後何事もなかったように今の学校に進学し、中学の頃の壮絶な日々など嘘なように、青春を謳歌している。 今俺は、そんな全然知らない過去の話を思い返すたび、この上なく幸せだと叫びたくなるのだ。⑦
2016-01-09 09:20:40それというのもただ一つ。 この脳力…瞬間記憶能力をひた隠しにするだけで覚えのない因縁をつけられたり、知らない人から襲われることもないなら、ずっとこのままでもいいじゃないか。 想像でしか知らない中学の日々が今の俺に降りかかったらすごく怖いし。俺一人が我慢すればそれでいいのだから。⑧
2016-01-09 09:22:42ただ幸せに過ごすために、何気ない日々を送るためだけに、そのための努力をすればいい。俺一人が人知れず苦心して、枕を濡らして、それすら悟られないように頑張れば、 それでいい。 そう、思っていた。 「横様っ!!」 すると突然、誰かが部屋中に響く大きな声で俺を呼んだ。⑨
2016-01-09 09:24:01顔を上げると、同じ演劇部で俺の親友の丁字路三咲が、青い顔でこちらを見ていた。 丁字路はこの春ついに面倒くさがっていた散髪をしたらしく、すっかり前髪を整えた。 ここは演劇部の美術や小道具制作用のスペースだ。 この学校は演劇がさかんで三年間クラス替えせず三年で一つの演目を準備する。⑩
2016-01-09 09:25:33つまり3年になると皆秋にある「演劇祭」に向け、クラスごとに練習をするのだ。そのために各教室の扉は防音つきの両開きになっている。そして極めつけは、舞台セットや舞台装置を作るための巨大スペースが、本校舎に併設されていることだ。そのうちの三分の一を演劇部が使っていいことになっている。⑪
2016-01-09 09:27:32俺は丁字路の様子が異様だったのでどうかしたかと尋ねた。 「どうかしたかじゃねーよ!お前それ…!」 それ?もしかして採寸間違ったか? でも俺はこんな脳してるから定規なくても40cmがどれくらいかとか30°がどの程度の傾きかちゃんとわかるし、一度見聞きしたサイズと違ったこともない。⑫
2016-01-09 09:29:02しかし、ここ最近俺は、妙にボーっとすることが多い。 現に目の前の丁字路は剣呑としているし、また俺は何かやらかしたのかもしれない。 そう思い、俺は自分の手元の切っていたベニヤ板に目を向けた。 すると。 ⑬
2016-01-09 09:31:00俺は自分の手を切っていたことに気づかずのこぎりを動かしていたようで、俺の左手の甲の骨が見えるくらいぐちゃぐちゃになっていて、辺り一面血まみれになっていた。 俺はその一面の赤を見た直後、ショックでそのままぶっ倒れた。 ⑭
2016-01-09 09:32:37「長く見て全治二年だってさ!なあお前、根詰め過ぎなんじゃないの?最近ボーっとしてるしさ」 近所の病院にきていた。丁字路は俺が自力でここまでの深傷を作ったと説明しても首をひねられそうなので電ノコで切ったことにしたが、電ノコで手の甲を?と逆に訝られたと、目を覚ました俺に説明した。16
2016-01-09 09:34:29「もうお前怖えから、二度と一人ん時のこぎり持たせないかんな。釘も!俺全部やっから!」 「でも…お前演者だろ。裏方の仕事やってる暇なんて」 「時間ならいくらでも作るって!脚本は授業中に覚えりゃいーし」 「お前、今度のテストも赤点だったら役降ろすって言われたの忘れてるのか?」17
2016-01-09 09:36:10実は丁字路は勉強の方は極めて出来が悪い。これまでに行われた試験の点数を全て足してようやく100点を越えるくらいで、補習にいかなかったことがない。部活・学校・補習合わせてこの学校で一番学校に来ている生徒ということになる。さらに一時期バイトもしてたので、休みのない生活をしていた。18
2016-01-09 09:38:00ちなみに去年の休日は7日しかなかったらしい。どこのブラック企業だ。 即ちさっきの「時間ならいくらでも作るって!」は非常に説得力がないということだ。 「大丈夫だって!俺を信じろ」 これもいつも聞く言葉だ。 呆れる先生の気持ちもわかる。丁字路は胸を叩いたあと、眉を下げて俺を見た。19
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