「蜃気楼の船」感想

「蜃気楼の船」を見ました
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ivnin @ivnin

「蜃気楼の船」ホームレスの老人に家を提供し生活保護費を搾取する「囲い屋」の主人公は、失踪した父親に出会う。 「囲い屋」稼業の目新しさと、この手の映画が下層社会を通して描きたい何かに期待して渋谷アップリンクに観に行きました。 pic.twitter.com/EjAfvWwEww

2016-02-28 15:56:56
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ivnin @ivnin

「蜃気楼の船」の構造について得々と語るのは躊躇われるところがあります。作品の静的で硬質な世界観を、世俗的な言葉で語ることで壊しやしないかと。死に怯えていた頃に対する侮辱になりはしないかと。

2016-02-28 15:57:22
ivnin @ivnin

「蜃気楼の船」がどんな映画かというと、シャドウラン……なんですよ。喪失体験により覚醒した主人公が、流れ着いた「囲い屋」稼業に身をやつしながら、引き寄せられてくる同類と共鳴しあってその階梯を徐々に進んでいく…。

2016-02-28 15:57:39
ivnin @ivnin

「蜃気楼の船」は現実世界のパートと象徴世界のパートが交互に進んでいきます。「主人公」が醜い老人たちと半ヤクザの間で働いていると、断続的に森の中を進む男女のイメージが侵入してきます。見覚えもない人物も混ざっていたりして、雰囲気作りの一環かなと最初は思っていたのですが。

2016-02-28 15:57:56
ivnin @ivnin

物語が進むに連れて、「主人公」が家族や歴史、自分の名前すら失った寓話的存在であることが次第に明らかになって来ます。 モノクロームの白昼夢は、彼の魂が彷徨ってることを象徴的に描いているわけです。

2016-02-28 15:58:54
ivnin @ivnin

ただ、彼の存在はそれほど絵空事ではありません。一人暮らし。余所余所しい同僚。白いバン。プレハブ小屋。郊外の空き地での肉体労働。そうやって生きてると、人格性なんて雲散霧消してしまうものです。この映画の暗黒な部分は主人公の空虚を説得力のあるリアルにするためにあるんです。

2016-02-28 15:59:14
ivnin @ivnin

夢の森を進んで水辺に辿り着いた辺りで、現実世界では同僚が素性を明かした辺りで、この映画の核心が、ビジョンクエストの意味が見えてきます。「蜃気楼の船」とは何か。夢の中の女性は誰か。精神空間に同居する人々も同じ空虚を抱えていることも想像できるようになるのです。

2016-02-28 16:02:41
ivnin @ivnin

この映画はそれがわからないと難解なだけでしょう。ちょっと察しがついたことが誇らしい。

2016-02-28 16:03:00
ivnin @ivnin

そして、わかった人々にとっては、雪が積もる渺漠とした砂丘を超えて、蜃気楼の船を求めて駆け出すイメージが、何か大切な神秘的なものになる……それを分かち合ってもらうために、何かを書き出しているんです。

2016-02-28 16:03:56
ivnin @ivnin

物語が後半になるにつれて超現実と現実が逆転して、世界はいつの間にかモノクロームに沈んでいます。その時、「主人公」が別の立場に変わってしまったことを、同じ台詞、同じカットを効果的に配置することで示し、映画は終わるのです。

2016-02-28 16:07:12
ivnin @ivnin

抽象的な言葉が多くなってしまったのですが、精神的な救済(を求める彷徨)を描く抽象的な映画なので、ご寛恕あれ。

2016-02-28 16:07:28
ivnin @ivnin

青春時代、哲学や神話を読み漁った人たちに、ネットが現れる前の孤独を思い出してもらうために、観て欲しいナア。「蜃気楼の船」でした。 pic.twitter.com/lhAdXadOv5

2016-02-28 16:08:21
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