ミスター珍が幻想入り

突如降って湧いたものをまとめただけのものです
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辻堂基信⚓ @m_tsujidou

--ある日、人里の一角に「ミスター珍」という名のラーメン屋ができた。 稗田阿求の手記は、このような出だしで始まっていた。

2016-02-25 20:43:36
辻堂基信⚓ @m_tsujidou

そのラーメン屋は、どうやら外界から幻想入りをして来たようで、かつては日本の趣都の胃袋を支えていたと、山の上の巫女が言っていた。

2016-02-25 20:43:48
辻堂基信⚓ @m_tsujidou

人気のある飲食店を「早い、美味い、安い」という三拍子の言葉で表現することがあるが、この「ミスター珍」というラーメン屋を表す場合「早い、早い、早い」となるとは、白黒の魔法使いの言である。

2016-02-25 20:43:57
辻堂基信⚓ @m_tsujidou

新しい物好きの彼女は、里でこのラーメン屋が話題になるやいなや、早速出掛けていったらしい。 「ブン屋の天狗に匹敵する早さだったぜ」と、謎の言葉を残し、彼女はまたミスター珍に向かっていった。 料理の出てくる「早さ」と、射命丸文の誇る「速さ」は、別次元のものではないのか?

2016-02-25 20:44:07
辻堂基信⚓ @m_tsujidou

このミスター珍というお店に興味を抱いた私は、すでにお店で食事をしたことがあるという友人を訪ね、鈴奈庵に足を運んだ。 「味はいうほど美味しくなかったわね。お値段も話題になるほど安くはなかったわ。ただ、早かった」

2016-02-25 20:44:15
辻堂基信⚓ @m_tsujidou

食事代をおごらされた貸本屋の常連の女性は、そのあんまりな感想を耳にして表情を歪めるが、「まあ、確かに早かったな」と、その早さに関しては認めているようだった。

2016-02-25 20:44:24
辻堂基信⚓ @m_tsujidou

俄然興味が湧いてきた。こうなれば自分の目で見て、自分の舌で味わい、この求聞持の力で記憶に刻み込むまでである。 能力の無駄遣いではない。多分。

2016-02-25 20:44:32
辻堂基信⚓ @m_tsujidou

店の前にある赤い看板の目印にミスター珍にたどり着き、店頭にある券売機の前に立つ。ここでは食券を買うシステムらしい。しばし逡巡するが、もっともオーソドックスなラーメンをチョイス。券売機の吐き出した食券を手に取り、いよいよミスター珍に戦いを挑むのだった。

2016-02-25 20:44:42
辻堂基信⚓ @m_tsujidou

店の中は、L字のカウンター席となっており丸椅子が七脚ほどテーブルに沿って並んでいた。私の他に客は二人。彼らを避けるように店の一番奥の席に着き、食券をカウンターテーブルに置いた。

2016-02-25 20:44:48
辻堂基信⚓ @m_tsujidou

「へい、ラーメンお待ちー!」 一瞬何が起こったのか分からなかった。食券を出した次の瞬間に、ラーメンがテーブルに置かれていたのだ。お待ちーって言われて気がしたけど、待ってない。

2016-02-25 20:44:54
辻堂基信⚓ @m_tsujidou

「はい、お冷やねー」 混乱の続く私の頭に追い討ちおかけるように、店主はお冷やをラーメンの脇に置いた。あれ? お冷やって、料理よりも後に出てくるんだっけ?

2016-02-25 20:45:00
辻堂基信⚓ @m_tsujidou

この逆転現象はどこかで見たことがある。そうアレだ。射命丸文がトップスピードで人里上空を通過したときに、彼女の姿が見えなくなってから風切り音が聞こえてくるあの現象だ。

2016-02-25 20:45:06
辻堂基信⚓ @m_tsujidou

麺は何時茹でた? どのタイミングでトッピングの投入をした? わからないことが多すぎる。魔理沙さんの言っていた、匹敵するという言葉を思い出しながら、動揺した頭でもくもくと箸を動かし麺をすする。麺を食べ終え、スープは申し訳ないが残して席を立つ。 「まいどー」

2016-02-25 20:45:12
辻堂基信⚓ @m_tsujidou

敗北である。完敗である。 後から魔理沙さんに聞いた話によれば、券売機の前に客が立った瞬間に鍋に麺を入れ始めるのだという。麺類以外のメニューが他にあるにも関わらずに、だ。 つまり、券売機の前に立った時点で戦いは始まっていた、否、勝負はついていたのだ。

2016-02-25 20:45:16
辻堂基信⚓ @m_tsujidou

山の上の巫女曰く、この「早さ」を武器に人気を得ていたラーメン屋ですら、時代の流れ、その移り変わりの早さには勝てなかったらしい。

2016-02-25 20:45:21
辻堂基信⚓ @m_tsujidou

幻想郷の外界とは、いったいどのような世界なのだろうか? 一度この目で見てみたくはあるものの、「好奇心は猫を殺す」という言葉を思い出し、この気持ちは胸の奥にしまうとともに筆を一旦おくこととする。

2016-02-25 20:45:26
辻堂基信⚓ @m_tsujidou

手記はここで終わっていた。 題名「ミスター珍が幻想入り」 著:稗田阿求

2016-02-25 20:45:30
辻堂基信⚓ @m_tsujidou

っていう話を思い付いたので、だれかください。

2016-02-25 20:46:03