ヤンデル先生の「フラジャイル」第8話と「ヒヤリハット」「ミス」のお話し 20160304

病理医ヤンデル @Dr_yandel

そういえば先日のフラジャイルを見ていて思ったことがあるので少しだけつぶやきます

病理医ヤンデル @Dr_yandel

病院などのシステムでは「ヒヤリハット報告システム」があります。「人間はミスをするものだ」という前提に基づき、「一人一人の心がけだけでは絶対にミスは防げないので、システムとしてミスをリカバリーするために、ミスを詳しく分析するためのシステム」です

病理医ヤンデル @Dr_yandel

ミスが起こりやすいシチュエーションを調べ、あらかじめミスが起きづらいように環境を整備したり、ミスをすくい上げるチェック機構を用意したりする。これで、ミスを個人の責任にばかりせず、システム全体でミスが起こりづらいようにカバーしていくのです。

病理医ヤンデル @Dr_yandel

ただし、「ミスは起こしてもしかたがないんだ」と個人が開き直るというのは、ぼくはちょっと違う気がします。ミスが起こったら、（個人が責められるのは絶対に防ぐべきですが、その上で）今後ミスが起こらない環境作りに「当事者として情報を提供し、改善に努める」ことをしたほうがよいでしょう

病理医ヤンデル @Dr_yandel

先日のドラマフラジャイルでは、岸先生は一貫して「100％を出す」と言っていますが、「100％正しい診断を出す」と言っているのではないように思います。「100％、出したモノに責任をもつ」という姿勢の表れではないかと思いました。もちろん臨床医には罵声を浴びせられていますが。

病理医ヤンデル @Dr_yandel

岸先生は、病理でミスがあったかもしれない状況で「個人を責めず、かつ当事者に責任を持って謝罪し、その上で改善方策をとる」ことをしています。しかし、「病理がミスするなんて許せない！」と断罪され、病院全体のシステムではなく病理という部署を名指しで批判されていました

病理医ヤンデル @Dr_yandel

ところが、ミスの原因が病理以外にあったとなったとたんに、病理ではない部門の責任者は「彼を責めないでね」とだけ言い、「病理は責めたが身内は責めない」というダブスタをとります。これはものすごくよく経験されるシーンです（病理かどうかはともかく）。

病理医ヤンデル @Dr_yandel

「人間はミスをおかすから仕方が無い」というセリフは、「真実」ですが、ミスをおかした側の人間が簡単に使える言葉でもありません。「ミスをおかした場合には責任を持って、将来的にミスが減るようなシステム作りに参画しますよ」と言い、体現しない限り軽々しく使える言葉でもないと思っています

病理医ヤンデル @Dr_yandel

ここをはき違えて……というか、はなから「臨床を悪く書き、病理を持ち上げるのは許せない論」で語りたい方々が「人間が100％出せるわけないだろう　ミスは絶対にある」みたいな筋違いの文句を言ったりしていました……。言いたいことはわかりますけどね

病理医ヤンデル @Dr_yandel

「病理は10割出す」というセリフは、「もし間違っていたら10割責任をとる」ということでもあります。「人間は絶対間違うんだから10割なんて出ないよ」という人もいますが、「間違ったらどう責任をとるか」まで考えて最善のコメントを返すのがぼくらにとっての「10割出す」だと思います

病理医ヤンデル @Dr_yandel

ぼくはマンガフラジャイルが始まって以来、多くの研修医・病理医に「10割出してる？」と言われるようになりましたが、そのたびに「ぼくの言葉を『絶対信頼してもらう』ために、確定診断なら確定って断言しますし、疑いなら疑いと、わからないならわからないと書きますよ」と答えています。

病理医ヤンデル @Dr_yandel

人間ですからミスをすることもありますが、病理診断が間違えたらそのミスに対して責任を持つのは当然です。「すみません、でもミスはあるものなので、見逃してください」とは言いません。病理医がみんな最高1億円の賠償保険に入っているのは、病院に責任を投げず自分が払うという意思表示でもあります